獣医学部の必要性

   

獣医学部の新設に基本的に賛成なのは、鳥インフルエンザで遭遇した、つらい経験がある。このブログを熱心に書き出したきっかけの一つも、鳥インフルエンザの流行にあった。この流行には疑問が生じたままだ。そして、鳥インフルエンザに対する対応がまるででたらめであったことは何度も書いてきた。鳥インフルエンザが見つかると、発症した県の家畜保健所はその対策の先頭に立つ。しかし、感染が広がり始まると、とても担当部署だけでは済まなくなり、その県の他の部署からも応援が出ることになる。それでも足りなくなると、近隣県の家畜保健所などから応援職員が派遣されることになる。しかし、それでも対応しきれない為に自衛隊の出動が要請され、その地域の感染拡大の阻止のために活動する。そして、一方でその県の警察も動くことになる。私の場合、家畜保健所から呼び出された。注意喚起のために養鶏関係者を集めて注意をするというのだ。そして警察が、養鶏場に物々しく何か事があったかのように現れた。

行政や警察の対応自体が、感染症に対する基本がまったく出来ていない。まず、鳥インフルエンザの流行が始まった地域で養鶏業者を集めるようなことは、最もやってはいけないことだ。私はすぐにもやめろと抗議したが、聞く耳を持たなかった。行政は努力を形で表したいだけなのだ。感染が広がれば養鶏場同士の接触が混乱を深めることになる。それに加えて鳥インフルエンザに関して無知な警察官が、養鶏場を次々に回り始めた。私は警官に基本事項を質問したが、何も答えられなかった。鶏の死亡など何か隠していないかを調べようとしたのだろう。こうして警察官が感染を広げた可能性もある。しかも、警察が出動しなければならない緊急事態という事を住民に告げることになり、養鶏場に対する差別が始まった。地域の住民から、養鶏業は危険だからやめてほしいという声すら出た。今でも、小学校で鶏の飼育は出来ない状況が続いている。こうして、日本の天然記念物でもある鶏の文化は途絶えようとしている。鳥インフルエンザの騒動においては、報道機関も病気について理解できないまま、でたらめ情報を垂れ流した。何でも大げさに取り上げるのを得意とするテレビ報道は、明日にでも人に感染するかのような騒ぎにエスカレートさせた。海外で起きた特殊な詳細不明の事例が、あたかも明日には日本のことになるかのような、無知な対応が続いた。この騒動を悪用し、巨額の利益を上げた製薬会社やWHOはその後収賄罪で逮捕者が出た。人間のインフルエンザ問題でのタミフルの備蓄という、製薬会社の陰謀に鳥インフルエンザが利用されたということだ。

この問題の根底にあったことは、科学的な情報の不足である。今でもまだ鳥インフルエンザの世界的流行の科学的な理解はできたとは言えない。獣医学が学問として遅れているという事がある。人間の医療との連携が取れていないという事もある。そして、感染症専門の獣医師が不足している。つまり、街のペット病院の数は増えても、行政の職員としての獣医師は十分とは言えない。例えば、ことが起きた時に、国の感染症対策の獣医専門職が県の家畜保健所と協力して行動するような体制がない。その為に、知識のない行政職員や、警察官、自衛官が動員され、感染を広げかねない結果になった。茨城県では、現場に行かなかった職員から抗体反応が出て、人ひと感染が疑われた。あれはその後なかったことになった。いずれにしても、ヒアリではないが、これからの世界は海外から、感染症が家畜由来で蔓延する可能性は日に日に拡大している。家畜の飼料は大半が輸入なのだ。感染予防のためには、日本においては水際作戦の強化以外にない。専門知識のある職員を、輸入業務の部署に数多く配置する必要がある。

狂犬病などでも、現在、ワクチン接種が義務付けられているが、これは対策が間違っている。犬に予防注射を打つのではなく、日本に狂犬病の疑いのある犬を入れないようにすることだ。つまり、もし日本国内に狂犬病の動物が持ち込まれたとすれば、怖いのは犬ではなく、外来種のあらいぐまだ。ここに感染が広がれば、もう防げないことになる。犬にワクチン接種している愚かさを認識しなければならない。これは野鳥にはワクチンが打てないのにもかかわらず、養鶏場の鶏にだけワクチンを義務化している愚かさと同じだ。そんなところに費用をかけるより、海外から絶対に国内に入れない、防疫体制を強化しなければならない。国の職員として、相当数の獣医師が必要である。またその獣医師の感染症に関する、海外の新しい状況に敏感に反応している人材である必要がある。鳥インフルエンザに関しても、学問的研究が全く不十分で、ただすべてを淘汰するという原始的な方法だけで対応している。鳥インフルエンザに関しての学問的水準を上げるという意味でも、専門の学部は必要になる。鳥インフルエンザの元凶は大規模養鶏にある。大規模畜産を継続すれば、さらなる新しい感染症が出現する可能性が高い。つまり、100万羽が一か所に飼われているという事は、そこで、ウイルスが変異する可能性が高いと思われる。それは人類の新たな危機にもつながる。獣医学の進歩の為にも新しい大学ができることは悪いことではない。

 

 

 

 

 - 自然養鶏