中国覇権主義の疑問
最近国際情勢の不安定化が目立っているということを、政府は主張している。幼稚な言い草ではないか。常に国際的な不安情勢というものは存在してきた。どの時代にもその時代の軍事的な緊張は存在した。私には最近の日本を取り巻く世界情勢は、経済の関係が深まり、むしろ戦争ができなくなっている状況に見える。安全保障の問題と言えば、テロが深刻化しているのだろう。政府は安全保障法制を強調するあまり、中国脅威論を根拠なく盛り上げようとしている。中国の仮想敵国幻影は、冷戦時代の仮想敵国ソビエトの存在より現実味がない。何をおいても、日本が集団安全保障ということで軍事的に独立しようとしている。アメリカとの軍事同盟の名のもとに、アメリカの軍事力の配下として、積極的に活動しようとしている。これは中国の世界的な影響に対抗したいというアメリカと日本の思惑が一致したからである。アメリカはいつまでも世界を指導する国でいたいのだろう。アメリカが存在しなければ、世界は崩壊するぐらいに考えている。
確かにアメリカは強国である。国家として経済力も潜在的能力も群を抜いている。しかし、中国はその唯一の対抗する勢力が登場したとみられている。日本ではそうした見方は少ないが、世界では中国がアメリカを追い抜くという意見が強いらしい。中国がアメリカを超える前に、叩き潰したいのだろう。こうした考えは全くばかげている。ともに繁栄する方が良いに決まっている。ところがグローバル企業の競争では、相手をつぶすことが自分が成長できることになる。中国という国家資本主義国の登場で、グローバル企業は焦りを生じている。その結果、日米で手を結び、中国に対抗しなければならないという妄想の国際情勢の不安を作り上げているのだ。中国は元の切り下げを行った。背に腹は代えられなかったのだろう。中国人の日本での爆買いを考えれば、明らかに元は円に対して高値だったのだ。それを調整せざる得なくなったのが、今回の元の切り下げであろう。中国も経済成長が進めば、普通の国になってゆく。
中国自体がグローバル企業なのだから、今までの資本主義は対抗するのに戸惑っている。中国を覇権主義というが、それはグローバル企業の覇権主義と内容は同じだ。ただ国家資本主義だから始末が悪いのだろう。通貨や株価も自由に操作する国家だ。元を無理をして高く維持していた理由のほうが、重要である。国際的な影響力を重視したのだろう。中国がアフリカに影響力を持ちたい。経済的進出をしたい。こう考えた時には元が高い方が良い。資本を外国に投下するために、元を高値に維持をしてきた。バブルの円高時代の日本を思い出す。日本人の富豪が登場したり、海外の不動産を買いあさったりした。中国も結局のところ、経済の国際化が進めば普通の国になる可能性が高い。今は国内の経済に不安定要素も大きいから、普通の国からみれば、妙な覇権主義に見えているに過ぎない。中国は商人感覚の国だ。
日本も長い間、1ドル360円という固定レートで、経済成長をした。これが1ドル100円以下になれば、日本人の生活水準が4倍にも計算されることになる。1ドル360円なら農業も国際価格に並ぶ。こうしたことは実質経済とは少しも関係がない。元が5%切り下げられるということは、中国投資は損ということになる。日本では円安で株価が上る。しかし、これは日本人の輸入品に依存する消費生活はその分価値が下がっているということになる。すべてはグローバル経済という、取引の中で起きていることだ。中国は一企業であって、日本の仮想敵国というより、グローバル企業としての競争相手なのだ。その競争に勝ちたいがあまり、アメリカと組もうというのではないか。しかし、中国がくしゃみをして、日本が風邪をひくように、経済は密接化している。この国際情勢の変化こそ、戦争ができない状況になったということである。