株価の下落
中国で株価が急落した。日本ではそれ見たことかと中国崩壊説を吹聴する人が続出した。中国が崩壊すれば日本がどうなるかまでは考えていない。世界経済はつながっているのだから、世界第二位の経済規模の国が混乱するということは、世界経済が混乱することになる。日本でも銀行が倒産するのを、政府が介入して救済した。でたらめ経営で自沈するのだから、資本主義の原則で言えば救済どころではない。しかし、影響が大きすぎるとなれば簡単に原則が変えられる。現に、東芝の粉飾決算の処罰が進まない。大きいことは安全だ、神話。「しんがり」という山一證券の倒産の話を今読んでいるが、このことはまた改めて。中国がどんな状態なのかは先日書いたが。株価と中国経済の実態とは別だ。今起きている株価の急落は中国が発端であって、大半の国でほぼ同様の下落が起きた。株価で世界経済を見ることは止した方が良い。投機的に株価は作られるものだ。
それは通貨のレートも同じことである。アベノミクスでは円安誘導。株価の高値誘導。これだけである。実体経済とは無縁と考えるしかない。流通という意味では影響は大きいが、日本の産業構造がアベノミクスで変わったというようなことではない。日本の競争力が通貨レートで影響を受けるということはあるが、日本の生産性が高く、作る製品がレベルが高ければ、結局のところ受け入れられることになる。要するに日本の生産するものが、世界で見てどのようなレベルであるかだろう。それは工業製品だけでなく。農業製品でも同じことだ。例えば豚肉がなぜ日本で生産すると、高くなるのか。それは世界の生産レベルに比べて、後れを取っているからである。後れを取っている一番の要因は飼料生産であろう。しかし、同じような畜産品の鶏卵には競争力がある。牛の場合は、また飼育の環境が日本の環境では不利要因となる。お米ではどうか。日本で作れば、競争力は低い。それは環境的な条件の制約が大きい。熱帯で太陽光発電をやるのと、北極でやるのでは、効率が違うというようなことと同じだ。
日本に必要なものは、第3の矢である。株価とか通貨のレートは、投機的な思惑で動いている。特に最近の傾向では、世界の巨大な資金が、思惑買いで動く。だから日本政府が円安、株価を上げる方向で動けば、それに便乗して儲けようという資金がなだれ込む。確かにそれによって、日本のグローバル企業は一定の利益を上げている。しかし結局のところトヨタ自動車がよい車を作れるかどうかが一番の問題なのだ。利益が出た時に思い切って次のことを考えられるのか。松坂牛が高くても食べたいという人がいるように、それだけの高機能の製品を作れるかどうかに戻ってくる。第3の矢はすでに放たれていると、安倍政権は言っていたが、今現在どこにもその矢の姿は見えない。失速してすでに落ちたのか。
新エネルギーが第三の矢のはずだが、相変わらず原子力依存を主張している。つまり口では新産業の創設というが、安倍政権は既得権益依存政権というほかない。株価は結局元に戻る。戻るからと言って経済が戻ったというようなことではない。投機マネーは行き場を探しているに過ぎない。この投機マネーが世界の経済を混乱させているに過ぎない。私は株のことなどよくわからないし、購入したことなどないが、お金がお金を生み出すようなことは、博打であり、健全なものではない。資本主義というものの悪い側面が目立ってきたということだろう。昔テニスのスエーデンのボルグ選手が、国籍をモナコに変えた。法人税も同じである。税が高いから、安い国に本社を移す。アメリカ企業はアイルランドに本社があるらしい。そういうことを素早くできる企業が、生き残るようでは倫理のない世界が増長してゆく。