田んぼのとろとろ層とは何か

   

田圃でも土壌が良くならなければ、良い耕作ができないのは当然のことだろう。田んぼの土壌で良い状態とは、表土にとろとろ層が厚くあるということになると考えている。それは田んぼは水を生かす場だから、水が生かされる層が厚くあることが大切だからだと考えている。田んぼの土は田んぼによってずいぶんと異なる。田んぼの場合、100年、200年同じ場所で田んぼを続けられたところが多い。つまり、長年の田んぼの耕作でどんな土になったのかということを判断しなければならない。2か所で、全く山を開墾して、田んぼを作ったことがある。この場合どういう土壌になるかと言えば、ざらざらの粘りのない土壌である。関東ローム層は代掻きをすればそのまま田んぼになる。そこでも畝取りをした。だから土に合わせた最善の管理をすれば、田んぼは割合と融通がきくものだ。粘土分が多いということが良い土壌ということではないようだ。問題は田圃でも腐食がどれだけあるかということになる。腐食がとろとろ層を作り出す。

水中で煙のように、ほこりのように舞い立つものがとろとろ層だ。とろとろ層の厚さをはかる器具というものあるようだが、そうではなく、手で触り感触で知るべきものだ。ここ数10年の間に、植物がどれほど入っているかである。腐食が多くあって、水はけが良いというような状態が、やはりイネの根には良い。減水深が少なく、水持ちがいいということが良い土壌ということはない。減水深の大きい不耕起栽培のほうが稲にとって良いということも、何度か体験した。話が複線化してしまうが、何故、冬季湛水や不耕起栽培をしないかということである。水漏れなどが起きる棚田の田んぼでは無理だった。棚田では、しっかりとした水漏れ防止をすることが、管理を可能にすることである。田んぼを何度か崩壊させて分かったことである。代掻きを厚くする、丁寧な代掻きをするということが、田んぼを維持するための物理的条件になる。一方平地での田んぼであるなら、水温は高い、日照は十分にある、水漏れもしにくい、ということになるから、冬季湛水も、不耕起栽培も可能になる。

物理的にとろとろ層的なものを作るのであれば、トラックターで深く、丁寧に代掻きをすると、表土に細かな土が浮き上がり、とろとろ層ができる。この人工的なとろとろ層でも実は、抑草効果はある。たいていの場合、深いシロカキは表土に雑草の種を浮き上がらせることになり、まずは雑草に覆われることになりがちである。それは田んぼの歴史による。深いシロカキを5年続ければ、草は減ると思われる。除草剤を使わない人でそんな大変な実験をしてみる人が、実は何人かいて、12俵とかいう収量の人を知っている。MOA農法の人だ。その大変な草取りに相当回手伝いに行ったので、よくわかることだ。深いシロカキは、大型トラックターがなければできないから、自給には向かない。とろとろ層は微生物が植物を食べて分解してゆく過程でできる。腐植質を入れ続ける必要がある。冬季湛水も効果が高い。冬の緑肥以上の水中での植物質の生産量がある。

ここでは浅いシロカキ、あるいシロカキなしでも、煙のようなとろとろ層を作る方法である。徹底して堆肥を入れることだ。できれば植物性の堆肥がいい。畔の草を田んぼに入れてはいけないという人がいるが、トンデモナイことで外に捨てたらもったいないことだ。とろとろ層は腐食を微生物が食べることでできる。その条件を整えることが重要。それは一年1ミリというようなささやかなものだろう。しかし、100年続ければ、10センチになる。5年やれば、5ミリになり、やっと抑草効果が出てくる。微生物を田んぼで増やす。私はソバカス抑草である。一年を通して入れ続ける。もちろん入れすぎれば、稲が倒れたり、過繁茂になるだろうから、手加減をしながら入れる。入れられる限界を見極める。冬は緑肥を栽培する。緑肥にもソバカスを与える。藁を田んぼで腐食させる。これにもソバカスを加える。すべてがととろとろ層の形成につながる。あくまで抑草効果であり、除草効果ではない。米ぬか除草から、ソバカス抑草へ。それにしても、とろとろ層の実態は、全く表現できていない。

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