麻生発言と靖国参拝

   

麻生氏のナチスの手口発言は、ジョークというかリップサービスのつもりが、口が曲がったのだろうと感じる。すぐ調子に乗って、あることないことうっかり発言するタイプだから、大した意味はないというのが本当のところだと思う。しかし、発言に大した意味のない、副総理兼財務大臣というのでは、そっちの方がひどい話になる。この人の靖国参拝が、隣国を刺激して関係を悪くしたのも、外交の現実である。最近は日本の国防や憲法の問題にも、隣国が口を挟んでくる。韓国や、中国が、なぜ急にここまで発言するようになったのかがもう一つの問題である。この日本自身の問題と、中国韓国の分析は分けてした方がいい。連動はしているが、互いに相手のせいにしていれば自己分析が出来なくなる。3人の閣僚が8月15日を選んで、つまり、敗戦をした日を選んで参拝するという。そこに意味がある。

まずは麻生発言の本当のところをもう少し掘り下げてみるべきだと思う。冗談に現われた、本音の部分を探るべきだ。ワイマール憲法を持ちあげている。つまりこれは現行日本憲法の連想から出てきたのではないだろうか。憲法が理想主義に走りすぎるということは、独裁政権を生みかねないという気持ちがどこかにあるのではないか。変な言い回しであるが、冗談めかしているのだから、細かなことをあげつらっても始まらない。ワイマール憲法では第一次大戦敗戦後のドイツの経済恐慌はどうにもならないかった。さらに、ヒットラーの出てくる意味がわからないが、この人の冗談はとっ拍子もないから、ありえない連想ではない。ナチスが、ワイマール憲法を無効にした方法を静かな中で行われたというイメージは、96条改定から入れば、あまり騒ぎにならずに、憲法を変えられるということなのだと思う。要するに「桜井さんも憲法改定の同志なら、9条を声高に言わない方がいい。」ということかもしれない。

9条などあれこれ正面から議論すれば、大騒ぎになる。もう少し知恵を出して、96条だけ変えると言っておけば、国民は案外気づかないだろう。こうすれば、いつの間にかナチス政権だって出来あがったように憲法を変えて、自民党草案のような国づくりが出来る。という筋書きが、頭に浮かんだのではないか。靖国神社と自民党草案が結びつくかであるが。たぶん本音では、国民すべてが靖国を大切に思い、参拝をするような国にしたいのだろう。草案を読んでいるとそういう気になってくる。自民党の目指す日本国はどうも戦前の社会である。靖国神社の本質は、軍国主義である。国のため軍人(従軍看護婦なども含む)として死んだ人を、祭ってある神社だ。確かに、日本人であれば日本のためを思い、命を落とした人に、思い至る必要はある。しかし、それは百姓をして死んだとしても同じであるというのが、私の考えである。国家観の問題である。軍人は直接的であるだけだ。

隣国からあれこれ言われてしまうのは、日本に国家観がないからである。国家観がないから、あれこれ言えば、揺らぐだろうと見られている。従軍慰安婦像や、南京大虐殺を蒸し返せば、日本国は動揺するだろうと日本がみられているということである。それは日本が健全であるということだろう。原爆を日本は投下された。その被爆者がアメリカを恨むというより、核廃絶に向かっていることに、アメリカ人のオリバーストーン監督は深く打たれたと感想を述べていた。南京大虐殺から、軍事力の廃絶に思い至る中国人であってほしい。従軍慰安婦問題から、売春廃絶に思い至る韓国人であってほしい。ここが日本の庶民の特性だと思う。麻生氏や櫻井氏は戦前の日本にあこがれる特殊な一部の日本人だと思いたい。経済においても、世界の見る右傾化不安は、マイナスになり始めている。こんな事態でもまだ3人の閣僚が8月15日に靖国参拝が我慢できないなど、本当に日本のことを考えていると言えるのだろうか。靖国に祭り上げている人の本当の気持ちを考えてみるべきだ。

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