堆肥材料・農水省の考え

   

有機農業を続けて行くには、土壌を良くして行くことが大切なことになる。様々な方法があるだろうが、堆肥を作り継続的に入れて行くことが基本のやり方であることは、東洋4000年の永続農業の姿である。現在、小田原有機の里づくり協議会で、堆肥の実証圃場を進めている。堆肥と言うものがどういうものか見極めてみたいという考えがある。本来糞尿を堆肥化して利用する手法が、何千年の循環農業の基本であった。人間の暮らしを考えれば、とても合理的なやり方である。糞尿を使うということは、現代社会では今すぐの課題には出来ないが、生ごみの堆肥化は重要な課題だと考えてきた。しかし、基礎データーがない。農家は一般に堆肥を使わなくなっている。そこで5年かけてやってみようと言うのが、今回の試みである。所が放射能問題が起きた。藁や落ち葉の利用が出来ない。これは有機農業にとっては、大きな障害である。この点を農水省に問い合わせてきたが、まともな返答がもらえないでいる。

電話で確かめた。農水省の肥料の担当の水谷さんと言う方が出られた。蚊の鳴くような声と言うのだろうか。ほとんど聞き取れないので間違いはあるかもしれない。「玄米が放射能不検出の場合。その米ぬかや藁を堆肥に利用して構わないですか。」このように伺った。検討して答えるので、と言う返答である。何と夜遅く返答があった。「米ぬかを測定して下さい。」こう小さな声で、何度も繰り返し答えるのみ。「玄米が不検出でも、米ぬかにはあるかもしれません。」やっとこう付けくわえた。それ以上の解答はない。「何かデーターや根拠があるのですか。」このように聞いても、「分かりませんが、使う人自身がやることです。」それ以上聞きたいなら、今度は上司と変わると言われる。田村さんと言う多分上司の方に伺った。「何故、玄米と米ぬかの放射能の移行の割合を農水省では計らないのですか。」と聞いた。「現在検討中です。」では6月収穫の「小麦ではどういうデーターがあるのですか。」なんと「それはやっているかどうか、よく分かりません。」

こんな状態が農水省の現状である。ああ日本の農業の未来はどうなるのか。メールでの問い合わせには、回答もない。今が稲刈りである。その藁や米ぬかをどうするかの指示を、農水省は稲刈り前に出さなければいけないはずだ。しかし、その放射能の移行の状態を調べてもいない現状。「そう言うことは農水の仕事ではなく、当事者がやることでしょう。」とまで言われた。非常事態における農水の担当が、こんなことを平然と答えるような状態では末期的である。どうでもいいと言わんばかりの投げやりな態度である。「私は肥料の担当で、食糧の担当ではないので、聞きたいのならそちらに聞いて下さい。」たらい回しの最終的な答えである。稲藁が牛の餌に成り、とんでもない結果になった。畜産担当の職員は「想定外であった。」と答え、大いに批判された。あれ以来、「羹に懲りて、なますを吹く。」放射能には、科学的対応が必要である。農水省自身が測定をすることを避けていて、どうする。

玄米と藁の移行の違いを調べた学者がいて、報道された。このことも農水の担当である水谷氏も田村氏も、「どのくらいの数やったのでしょうねぇー。」こういう見方である。農水自身が自分で放射能測定をやれと言いたい。農水なら、優先して測定してもらえるはずだ。「お米はまだ今が収穫ですから。」などと言うから、小麦はどうしたのかを聞いたのだ。聞いている内にどんどん絶望的になってしまった。こんな状態では、日本の有機農業は駄目になりそうだ。すでに、東北は稲刈りが進んでいる。藁はどう処理するように指示があるのだろうか。どこまでは藁を田んぼに戻していいのかが分からないようでは、一度刻んで撒き散らした藁を回収するなど出来ないことである。確かに農水の職員にしてみれば、東電が悪いのだ。何で自分が責められなければならない。この程度の意識のようだ。日本の官僚が優秀とはいったいいつの時代のことだろう。すべての分野での人的レベルの低下はすざましい。

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