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笹村 出-自給農業の記録-

アメリカ留学の減少

      2026/01/22

 

トランプはアメリカ留学を制限している。留学ビザの発給を制限している。その結果なのだろう。2025年は、学生ビザを持つ日本人の入国数が5月以降、目に見えて減少し、11月までの入国数は計2万6635人で、前年より2945人少なかったと、出ていた。

留学生が減ることをトランプは喜んでいる。留学生が減少すると言うことは、アメリカの未来が暗くなると言うことだ。世界から優秀な人材がアメリカに集まり、アメリカ社会が世界一活性化したものになり、アメリカは成長してきた。アメリカは移民で出来た新しい国だ。

留学生が減少することは、人口が減少して行くことと同じことだ。社会の活力が衰退して、先端学問のメッカアメリカが失われて行くだろう。アメリカが世界一になった理由は世界に国を開き、優秀な移民がアメリカを作ったのだ。トランプの先祖だってアメリカへの移民だ。

私もフランスの美術学校パリのボザールに学させて貰って感謝している。トランプの留学生を拒否する態度を見ると、複雑な気持ちになる。若い時代に海外で学ぶことは、人間形成に大きな影響がある。あのボザールの独特な空間で、世界中から集まって来た、絵を描く仲間と共に学ぶことが出来たことは、またとない体験になった。

ボザールの教育の環境がとても良かった。あの中庭の空間の魅力は忘れられない。素晴しいアトリエが並んでいた。そこを自由に使わせてもらえた。いつでも、夜でさえ裸婦デッサンが出来る環境があった。描きたいだけ描けたことほど有り難いことはなかった。

自由に先入観を捨てて、絵を描くことをフランスでさせて貰えたこと。絵画の基礎とは、型にはまった石膏デッサンなどではないといことを、学べたこと。感謝しきれないほどの喜びである。マチスとボナールから学んだことがすべてだ。またとない自分の絵を描く基礎力を教えてもらえた、フランスという国に感謝している。

ボザールには世界中から生徒が集まっていた。日本人も26人いると聞いた記憶がある。アトリエには5人の日本人留学生がいた。どうしたのだろうかとは思うが、全く交流はない。あの濃密な時間をもらえたことは、格別なものだった。今思い出せば夢のような時間だった。

学校の帰りにはルーブル美術館の中を通った。美術学校の学生は無料だった。入り口のおじさんとは知り合いになった。身術缶の中を通る道が、近道だったのだが、ルーブルで様々な作品を見ることが喜びだった。特に古代エジブトとの作品には圧倒されていた。

ルーブル美術館を出ると、チュルリ公園の中を歩き、オランジェリーでモネの睡蓮を見せてもらう。夕食はグランパレの地下にある学食で食べる。最高の留学生生活をさせてもらったことになる。数えてみれば50年にも成る。10年ほどして、再度ボザールを尋ねた。もう日本人留学生はいなくなっていた。

アルベルト・ザバロと言うスペイン人の先生のアトリエに所属させて貰った。魅力的な先生であった。日本でも高島屋で個展を開催されたことがある。色を汚して描く日本で染みついた悪い癖を払拭してくれた。一番美しい色がチュウブから出したままの色だ。混ぜるのではなく、必要な色の絵の具を買ってこいと言われた。

アトリエでは一週間に一枚の絵を仕上げる。中心に台座がありその上に裸婦のモデルが座る。そして絵になるように、花や布をセットする。セットするときには希望を言うことが出来る。月曜日の1日目はデッサンをする。そして、2日目以降は油彩画を描いて、土曜日にザバロ先生が見えて描いた絵を指導してくれる。

純色を塗るという基本は大切な教えだった。言われるとおり一番美しい色から始めることは大切なことだと今も感じている。濁りのある色で描く日本の癖は良くない。日本とは異なる絵画文化に遭遇して教えられた。マチスの絵の意味が少し理解できるようになったわけだ。

私がフランスに対して恩返しが出来ているかと言えば、まだ出来ていない。残念なことには私は大画家にはなれなかったわけだ。ボザールに留学したひとで、大画家になった日本人はいないのかもしれないが、フランスの芸術を大切にする文化を何より尊いと思う。

フランスで学んだものは私の中で、大切な自由な芸術という宝ものになっている。今の絵を描く私の材料である。私絵画に進んでいる理由でもある。文化というものが、生きる上で最も大切なものだと考えて生きている。私絵画は個人的なものだが、その個人的な文化が、人類の宝になると考えて居る。

拝金主義者のトランプにはお金にならない絵など、何の意味がないものに見えるのだろうが、この直接的には役にも立たない文化芸術こそが、人類の救済なのだ。人間の目指す方角なのだ。価値観の違いと言えばそれまでだが、トランプの競争主義は人類の滅びの道なのだ。

フランスの美術学校は授業料なしで、留学生を受け入れていた。唯一必要だった費用が健康保険料だった。時々画材の配給すらもらえた。すごいことだと思い、フランス人の生徒仲間にその理由を聞いた。すると、ダビンチがフランスに来てくれて、モナリザを残してくれた。

それだけで十分元が取れている。ダビンチになってモナリザをフランスに残してくれ、と冗談を交えて説明してくれた。確かにフランスで近代絵画は幕を開けた。世界中から画家が集まった。フランスは文化を大切にする国だ。エコールドパリがフランスの輝きに見える。

アメリカで唯一絵描きだと言えるロスコーも移民の人である。ベン・シャーン、やデ・クーニング,もアメリカに逃れた移民の人だ。つまりアメリカで画家と思う人はすべてが、移民の画家である。そうした移民の人たちがアメリカの文化を不毛の新しい土地に生み出してきた。

もちろんそれだけではない、学問の世界での移民の活躍はめざましいものがある。ノーベル賞受賞者を見れば、移民やアメリカで学んだ人の数が膨大に存在する。何しろアインシュタインも移民である。チャップリンはイギリス生まれで、「移民」という映画をアメリカで作っている。

アメリカに移民する人たちがいなければ、アメリカの繁栄は今ほどではないはずだ。優秀な人材がヨーロッパを逃れてアメリカの移民になり、アメリカに文化と学問の種を蒔いたとも言える。それを排斥しようというトランプの愚かさには驚くべきものがある。

今日本にも、沢山の留学生が来てくれている。今の日本で唯一希望を感じることかもしれない。東京芸大にも沢山の留学生が来てくれている。日本で学んで貰えることは必ず、人類のためになる。学問も芸術はそういうものだ。大切にしなければならない。

日本の問題は学問の実学尊重だ。学問は純粋学問でなければならない。芸術も純粋芸術を大学では教えるべきだ。学問は人類の幸福のためのものであれば良い。大学が産業に隷属していてはならない。大学を自由で人間の研究をするところにすべきだ。

留学生が来てくれることは,日本人全体で歓迎したいことだ。長い生来日本のためになることだ。世界のためになることだ。今日本は我慢して、将来に備える時代なのだろう。文明開化は御雇外国人が助けてくれた。きっと日本にもそういう時代が来るはずである。

 

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