中国の一帯一路はどうなっているのか

   



 先日中国で、一帯一路の10年経過の記念総会のようなものが開かれた。日本の報道は私が見た範囲ではすべて、一帯一路は失敗したというような報道だった。何がどう失敗したのかの説明は、印象論に止まるものばかりで、説明がなかった。仮想敵国中国がやることに因縁を付けたいというのでは、まさに大本営報道である。
 そもそも一帯一路がどういうものか、報道はあえて分からないふりをしている。習近平が主席になり、2013年打ち出されたユーラシア大陸全体の経済圏構想である。しかし、この経済圏構想はEUのような、構想の目的とか、通貨統一のような、縛りがあるようなものがある訳でもない。交易路の構築が具体的に行われることのようだ。シルクロードの現代版と言われている。

 経済の基本である、通貨とか、関税とかから全体構想に入らないところが中国らしい深慮遠謀。道路を作ってあげます。鉄道を作ってあげます。パイプラインも送電線も作ります。何で作ってくれるのかと言えば、その使用権を99年中国にくれれば、無償で作りますよ。さすが商売人の国だと思う。まるで、再開発業者の空中権のようなものだ。

 その発想の根本には中国は国内のインフラ整備を進め、目覚ましい経済成長をした。そのインフラ整備が一定進み終わってきた。今度はそのインフラ整備をユーラシア大陸全体に広げることで、中国の経済成長を促進できると考えている。インフラ整備の仕事が欲しいという事も含んでいる。常に事業者は新しい仕事を欲している。

 陸上では道路や鉄道がどんどん作られ、海上では各国の港湾の整備が進められている。中国からヨーロッパとを結ぶインフラの整備が目的である。その結果交易は10年で10倍以上に膨らんでいる。これは成功と考えて良いではないだろうか。
 教育で言えば、中国への給費留学生を一帯一路沿線国から2017年には38、700人を受け入れている。中国に留学し、奨学金で高等教育を受け、国に戻り国づくりを行う事になるのだろう。中国は沿線国と時間をかけて中国との親密な良い関係を作ろうとしているのだろう。

 最近の日本政府は、はっきりと一体一路構想に反対をしている。その理由はアメリカが反対しているからである。そして中国が良くなることが、嫌だからだ。アメリカの中国政策は世界一を奪われてはならないという事で、経済戦争にまで進んでしまった。表面的には経済制裁を互いに行い、裏では様々な情報戦争が起きている。
 日本の国益を考えたら、一帯一路に入らない手はない。中国を通して、ヨッロッパとも交易が出来るのだ。実際にそうした物流もすでに起きている。日本の経済にとって、中国が良くなり何か悪いことがあるとは思えない。むしろ、日本が東アジアの一国として積極的に加わり、中国が暴走しないような役割をすればいい。まあ、日本政府にはその自信はないだろう。

 アメリカの深刻な状況を反映して、属国として従った方がいいというだけだろう。日本が中国と密接になることが反アメリカ的な行為、とアメリカに決めつけられているわけだ。各報道の一帯一路の失敗報道一色の原因は、成功されたら困る、という気持ちがにじみ出ているわけだ。

 しかし、中国の提唱する一帯一路が悪いことのはずがない。もし日本がアメリカと関係が悪い国であるとすれば、この中国計画に乗せてもらい、日本経済も恩恵を受けようという事になるはずだ。中国が同盟国であれば、海上航路の確保は有難いことだろう。

 中国の経済が良くなることは、経済の原理から言えば、日本にとっては良いことのはずだ。世界一の競争をしているアメリカとは立ち位置が違う。経済というものは、自分だけ良くなるなどという事はない。経済競争は確かにあるが、中国の生活水準が上がることで、日本にも観光に来て大きな需要を生んでいる。

 もちろんそれだけではなく、日本から様々な製品の輸出も増加する。日本が中国経済が良くなって悪いことなどほとんどないと言えるぐらいである。中国は日本の13倍もある国だ。日本経済を考えれば、一帯一路の何処が問題だというのかと思う。

 ただ、中国は独裁国家なので習近平の思惑で、たちまちに日本企業への対応が変わるから、中国への経済進出はなかなか困難が伴うという事だろう。その一番の原因は日本がアメリカの手先として、仮想敵国扱いをしているという事が、すべての元凶だ。独裁者と言っても、プーチンとは違う。
 
 中国へ進出した日本企業の撤退の報道が目立つが、その裏ではどうやって中国市場に食い込むかと考えている日本企業も多いはずだ。中国が勝る製品もあれば、日本の方が良い製品もある。同じスマホでも、それぞれの使い勝手の好みで買う訳だ。日本なりに頑張ればいいわけで、製品は多様である方が望ましい。

 中国の考える海のシルクロードでは港湾の建設を中国が費用を貸したり、提供したりしている。その代わりに港湾の使用権を取得するという方法で、港湾の整備を進めている。スリランカでは中国からお金を借りて港湾を整備した。ところがその港の利用があまり伸びず、返済が滞った。

 借金を帳消しにしてもらう代わりに、その港湾の使用権を中国に99年間提供することになった。運営権もその上りも中国がとるが、その間も当事国が港湾は利用はできるから、中国に港をとられたというような悪い話ばかりではない。しかし、そのことが債権の罠として、日本では盛んに言われる。私にはただの商売のように見えるが。

 スリランカの港湾を中国が自由に利用できるという事は、中国がインド洋を軍事的に抑えるという側面もある。これをアメリカは非常に問題視している。しかし、これはアメリカが日本の港湾を自由に利用している現実と何ら変わらないことだ。それは八重山諸島の港湾整備が提案されていることと、同様のことが起きただけのことだ。

 それぞれの港の場所が軍事的拠点である。例えば、契約を取り消すかどうかで最近問題になっているオーストラリアの港は、中国が99年間の運営権を取得している。ここには傍にアメリカ海兵隊が駐留している。アメリカと中国の経済対立の衝突という事になる。

 一帯一路が経済圏構想という事もあるが、実は軍事的な側面もある構想でもある。問題はオーストラリアが中国に港湾を作ってもらう代わりに、中国に自由に使う権利を与えるという、国家の自立にかかわる問題を、売り渡したという事にあるのだろう。中国よりもオーストリアが浅はかなのではないか。

 これは、何か日本政府を見るかのようではないか。アメリカにすべてを売り渡している日本のあさはかさ。石垣島の住民を守るために、自衛隊基地を作ると説明をしているが、実際にはアメリカを守るために、日本本土を守るために、石垣島に犠牲になってもらおうという話だろう。それを推進している石垣市長の浅はかさ。

 一帯一路では、石油や天然ガスのパイプライン整備も行われている。また、電力の送電線網や5G通信網なども整備することになっている。中国は中国方式の5G通信網をアフリカまで浸透させようとしている。このことは中国製品が優位になるというので、これもアメリカは怖れている。しかしこれも商売がらみのことだ。

 一帯一路の沿線国は、いまやアジア、アフリカ、ヨーロッパのおよそ140か国に拡大。沿線国だけで世界人口の6割、GDPは3割を占める、まさに巨大経済圏構想。 中国政府の発表では、2013年から2020年までの中国企業の直接の投資額は1398億5千万ドル、日本円にして16兆円余りとなっているという。

 こうしてみてくると、中国の経済成長に伴いアジアヨーロッパにその影響力を広げてきたという事なのだろう。そのことがあまりに急激に進んでいるので、アメリカが慌てて中国は債権の罠で発展途上国を支配しようとしていると言いだしたという事だろう。アメリカがさんざんやってきたことを、中国がやるのが許せないという事なのだろう。

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