石垣島名蔵鳥類保全区域指定に

   



 名蔵周辺には絵を描いている場所が16カ所もある。農耕地と自然環境との調和の取れたすばらしい場所である。石垣でも景観の美しさでは傑出した場所であることは間違いが無い。竹富島、黒島、小浜島、西表島、鳩間島と沖合の島々もすばらしい。

 アカショウビンやカンムリワシはよく見かける。様々な水鳥も飛来する。小田原の桑原にも来ていた、タゲリも来ているようだ。正確には確認できなかったが、そうではないかと思えた鳥は見た。名前はわからないのだが、鶴と思われる鳥も来ている。問題の鳥では、カラス、孔雀、高麗キジが居る。

 このすばらしい地域を形成しているのは、名蔵アンパルと言う日本で最初にラムサール条約に加盟した湿地を中心にした、田んぼである。田んぼの中に、マングローブの手つかずの自然が存在すると言うことだろう。於茂登岳から流れてくる豊富な水量がこのアンパルを形成している。

 ただ、問題は二つある。1,深刻な赤土流出の問題がある。このまま進行すればアンパルは遠からず失われると言う状況に見える。名蔵湾全体が強い雨の後には赤茶色に濁る。この赤土が海岸を埋め尽くし、海岸が赤土の浜になっている。たぶん珊瑚礁もダメだろう。

 残念ながら、斜面に存在する農耕地が汚染の原因になっていることは確実なことだ。パイナップル、サトウキビ、牧草地である。十分な沈殿池が作られていない。

 どうやって赤土が海に流れないように出来るか。沈殿池などをどの当たりに作るのか、このあたりにしっかりとした対応策を作らない限り、アンパルそのものが赤土で遠からず埋まってしまう。名蔵湾の珊瑚や貝類。そして豊富な魚も失われてしまうことだろう。

 2,水の確保が危うくなってきている。名蔵アンパルは3方を山に取り囲まれて、名蔵湾に面している。主峰が於茂登岳である。名蔵ダム、真栄里ダムと水は農業用水、飲料水と使われている。このことで、名蔵アンパルへの流入水は昔とは比べものにならないほど減少しているそうだ。
 
 この水は、しらみずと言うブランドで飲料用自然水として販売もされている。加えて周辺の山はあたらに牧草地となり、山林資源は減少してきている。さらに、ゴルフ場が予定されていて、山林はさらに減少する。今後流入水の減少がアンパルの湿原にどのような影響が起こるか危惧される。

 減少して行く水資源をどのよに確保とアンパルの湿地環境を保護して行く事ができるのか。今計画を立てる必要がある。田んぼと湿地との調和であろう。田んぼが鳥類を守る重要度を増して行くに違いない。特に通年水が張られている田んぼが重要だ。今年は冬の雨が多いためなのか、名蔵の田んぼはどこも水が張られたような状態である。

 水の張られた田んぼが明らかに鳥類の保護に役立っている。赤土の流出も制限しているように見える。水鳥だけではない、カンムリワシもこの田んぼで捕食をしている。水の張られた田んぼでは生き物の多様性が維持される。このことで、鳥類の保護にも役立っている。もちろんすべての生き物の保護にも役立つ。

 今年名蔵の北側では耕地整理が行われた。そのことで田んぼの耕作も活性化したことはすばらしいのだが、まだまだ耕作放棄されている田んぼがある。湿地化しているのであれば良いのだが、乾いた草原として放棄されているところがかなりある。こうした田んぼも、せめて代掻きをして水を張れないものだろうか。

 そうすれば水面が増え、名蔵アンパルの役割もいっそう価値が高まるのではないだろうか。放棄している農家の立場に立てば、様々な要因があるのだろうが、結局の所利益が出ないから耕作できないと言うことなのだろう。

 アンパルの水資源が減少して行くことは、島が開発されて行くと言うことで避けられないことであろう。それを補う意味で水田を十二分に活用する必要がある。問題は稲作が経済的に継続が難しくなり、続けにくくなっていると言うことだ。

 田んぼの耕作に自然保護という付加価値を付ける必要がある。名蔵アンパル米として、鳥類の保護米として、付加価値を付けた販売をする必要がある。アンパルで鳥類の保護が行われている意味と田んぼの自然保護の意味を明確にする必要があるのだろう。

 宮城県内陸の北部に位置する、伊豆沼と内沼。日本最大の渡り鳥の飛来地である。ここでは冬期湛水が行われ、自然保護と稲作がうまく融合されている。豊岡のコウノトリ米や、佐渡島のトキの保護も田んぼを餌場とするものである。神奈川平塚ではタゲリ米、小田原ではメダカ米である。

 全国に、水田を環境運動と結びつけ、耕作を維持して行く活動がある。これには行政が先頭に立ち、保護活動が付加価値に繋がる仕組みを作らなければ、農家が取り組むことは出来ない。農家が取り組むことにならない限り永続性が無い。

 もう一つは害獣としての、カラス、高麗キジ、孔雀の駆除である。すでに許容範囲を超えた増加である。このままでは保護すべき鳥が害鳥によって増加できないだろう。カラスにアカショウビンがやられているのを助けたことがある。何十羽のカラスが突き回していた。カラスの増えている一番の原因は牛の飼料だろう。すでに畜産被害も出ているはずだ。

 カラスの誘導檻を作り捕まえて数を減らす必要がある。畜産農家で明けでは限界がある。行政も共に取り組まなければ出来ないことだ。これも先行事例が全国にあるわけだから、早急に取り組む必要がある。これ以上カラスが増えれば、畜産の被害も大変なものになるはずだ。

 ゴルフ場が出来ることは樹林地が失われることと、農地が失われることになる。それは名蔵アンパルの豊かさを損なうことになることは間違いが無い。しかし、石垣の観光業のためにどうしても必要というのであれば、ドウ名蔵アンパルの自然と調和できるのか具体的な政策が必要だろう。現在の環境影響調査では影響はほぼ無いとされているが、影響が無いはずがない。樹林地が芝生になるだけで、保水力は減少する。

 石垣島の未来のためには、確かに観光も必要であろう。同時に名蔵アンパルの自然の豊かさも観光に必要である。それには名蔵で行われている農業をできる限り水田中心のものにして行く。パインやサトウキビの栽培地も田んぼに出来るところは田んぼにして行く必要があるのだろう。

 現在の流出防止のセギの大きさでは、大雨の際は一気に流れ下ることになっている。下流域に土砂が貯まる沈殿池を計画する必要があるのではないだろうか。これはゴルフ場下流域にも必要になるだろう。海際にある田んぼをうまく活用することが出来るのではないだろうか。
 

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