日本と韓国の関係

   


 日韓関係はどこまでも解決できない問題と考えておく必要がある。秀吉の朝鮮出兵すらいまだ問題になる。隣国とのわだかまりは多分永遠に消えることはない。まして植民地支配時代があった。
 逆の立場を想像するればすぐにわかる。日本が韓国の植民地になる歴史があれば、日本人はその痛みに耐えかねることだろう。支配被支配の関係を押し付けられた恨みは深いに違いない。
 韓国の人たちは、極めて困難な状況から、努力を重ねて国力を向上させた。日本を追い越すような経済発展をしている。二つに引き裂かれた状況を考えれば、すごいことである。それだけの能力のある国民なのだ。
 急速な経済成長による様々な問題点はある。分断国家という事情もある。その中を素晴らしい努力で切り抜けてきた。日本は韓国から学ばなければならないことが多いと思っている。美術に関しても、韓国はレベルが極めて高い。
 ところが日本には朝鮮を植民地にした覚えはない。頼まれて保護したまでだと主張する人たちまで登場してきている。そして韓国を見下そうとする。こうした反朝鮮の日本人の感情は、衰退してきた日本国の焦りである。見苦しいばかりである。韓国に追い抜かれる、追い抜かれたという反映である。

 日本は江戸時代鎖国をして自立した国づくりをしていた。独立した経済体制を持ったという事、地方分権という独特の方法で成功したのだろう。江戸時代の日本には西欧列強に簡単には支配されない国力があった。国家として高い統治の状態があった。東洋の果てにある日本を占領して支配するようなことは、帝国主義の列強にも無理であった。これを明治政府の力量とするのは、半分の見方に過ぎない。

 日本までの距離と、当時の海軍力を考えれば、国家として確立している日本を植民地にすることは不可能で、通商条約を結ぶことが選択されたのだろう。明治政府が偉いのではなく、江戸時代の蓄積の結果の方が大きな意味がある。
 国の安全保障の基本は、国力を高め国内が充実していることが一番である。そして他国を攻撃しない。攻撃できない。こうした国づくりが重要なのだろう。

 朝鮮は歴史的に中国、ロシアという巨大国家に地続きで隣接して存在した。文化的にも先進中国の強い影響下に置かれた。この置かれた状況は朝鮮の国柄に当然大きな影響を与えたのだろう。

 朝鮮は記号の様な新たな文字を作った。中国の漢字文化の影響を抜け出たいという思いを感じる。日本はかな文字という漢字を変容させた文字を作り出した。中国文化を活用しようとしている。中国文化に取り込まれにくい距離感が、日本を独自性の強い国にした。

 日本は朝鮮半島を通して、多くの文化を受容した。ある意味、朝鮮がかみ砕いてくれた文化を分かりやすく受け入れた。朝鮮は緩衝地帯となって、日本はずいぶんと楽をして、日本独自の文化を構築することができた。海を隔てていたという事で事情が違ったのだろう。

 朝鮮は長いこと日本にたいして、先進国としての優越意識を持っていた。日本に指導をしたという意識である。一方で中国に対してすべてを学んだという引け目も抱えていたのだろう。中国の圧迫が、日本を軽んずる心に繋がっていたとも思える。

 それが明治新興日本は、兄貴分であるはずの朝鮮を併合してしまったのだ。これによって朝鮮人の誇りはズタズタにされた。まさか指導してあげた国の植民地になるとは、という気持ちには耐えがたいものがあったはずだ。この屈辱感が今に続いている。

 よく台湾との違いが言われるが、台湾は日本に対して、優越意識がなかった。植民地化されても、文化的経済的恩恵の方が大きなものとして歓迎された側面がある。台湾にも日本排斥の民族運動はあったわけだが、朝鮮で起きた反日独立運動とは規模も違う。

 そして蒋介石中国の台湾で行った政治はひどいものであった。その為に、より日本時代の方が良かったという気持ちになったのだと思う。朝鮮には日本に対する深い恨みがあって当然なのだ。
 
 日本は徴用工賠償に対して、確かに国際裁判所に提訴すると主張していながら行わない。提訴すれば負ける可能性がある。世界は日本の軍国主義には極めて厳しい判断を下すはずだ。両者とも結論を出そうとせず、喧嘩腰だけである。領土問題も同じである。つまり、結論を出すより問題のままであることを両国が選択しているのだ。
 この対立を対立のままの残しておくことが、都合が良いという政治的判断がある。サクラチル・・・アベ政権の支持率の維持である。国民感情というものは、どうにもならない。

 ホワイト国除外を持ち出したタイミングが、徴用工問題の報復に見えた。関連はまったくないと日本政府は主張するが、別問題であるなら、もう少しやりようはあったはずだ。子猫の喧嘩腰のちょっかいが、つい本番になってしまったような感じだ。

 全体の流れは、文政権の様々な場面における対応が、最近の韓国の政権とは違ったためにこじれていったのだろう。文政権は鳩山政権と似ている。正しいのではあるが、政治の実力がない。南北統一は正しい道であるが、それに至るには正しいだけでは難しいという事が文政権には見えてきたことだろう。

 日本から輸出された材料が、韓国で軍事転用されている疑いがある。その点が明白ならないのであれば、輸出する軍事転用可能な材料には審査してからしか輸出できないというのが日本の主張であり、実施したことだ。ホワイト国除外というらしい。

 軍事転用をしていないという事を韓国は証明しようとはしない。この理由がわからない。まず、この通り転用していないと示せば終わる話しだ。北朝鮮との関係でアメリカは何か掴んでいるのだろうか。日本の方もこういう証拠があるとまではまだ示さない。示した時は韓国が反アメリカになる可能性がある。

 WTOへの提訴も取り下げたという。この展開だけを見ると韓国に弱みがあるようだ。軍事転用していない証拠があるのならば、提訴して明確にすればいいだろうにと思う。取り下げるという事は軍事転用していたという事があるのかもしれない。その点が調査されることになるのをさけたのだろうか。
 いずれにしても、韓国と日本は良く似ている国だ。植民地支配という反省しなければならない歴史がある。そして、在日朝鮮人という問題もある。日本は何度でも謝らなければという事を思い出す必要がある。

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