石垣市で自治基本条例の廃止が委員会の結論。

   

白花ナリヤラン
 石垣市には自治基本条例がある。その内容には矛盾や問題点がたしかにある。自衛隊配備の署名において、住民の4割の人が配備の是非の住民投票を行えと要求した。にもかかわらず、市長は条例に基づく住民投票を拒否した。それはおかしいというので、現在住民投票を求める会が、裁判によって条例の解釈の是非を問うている。

 こうした状況の中で、石垣市議会の特別委員会は自治基本条例を廃止すべきという結論を出した。要するに住民投票をすれば、自衛隊基地に反対する人が多いからである。これでは完全に民主主義の崩壊である。

 なぜそれほどまでに自衛隊基地を誘致したいのであろうか。ここが私には理解できないところだ。理解できないがもしそれほどに中国を脅威に感じているのであれば、何故そのこと自体を問題にしないのか。問題であればどういう努力をしたというのであろうか。努力もしないで、自衛隊誘致と叫ぶのは理解しがたい闇を感じる。

 日本国憲法では、国際問題が起きた時には平和的に解決すると書かれている。石垣市は中国の武力攻撃があると市長が考えるのならば、それに対して平和的努力はしたのだろうか。努力しないまま、武力で対抗することを考えるとすれば、憲法違反である。

 石垣市はアジアからの観光で経済好調である。農業も、漁業も、もちろん観光業も盛況である。人口も増加している。すべてがうまく回り始めている。日本全体で見ても、好循環の事例ではないだろうか。これを壊してしまっては元も子もない。

 アジアの交流拠点の構想は石垣市民の過半数の願いと言っても良いのではないだろうか。何故、平和の努力もせずに、波風を立てようとするのか、それは石垣島よ防人になれ。という日本会議の指示があるからなのだろう。先日は盾の会の人を呼んで、講演会をしていた。

 私は防人にはなりたくない。何故、アベ政権の思惑に乗らなければならないのか。沖縄を犠牲にして平気なこんな政策に何故率先して乗ろうというのか。本土の人間がそういうことを言うのであれば、分からないではないが、石垣市長が何故住民を犠牲にしかねない考えに同調するのか。

 あり得ないことではあるが、中国が尖閣諸島を奪いに来るとすれば、石垣島のミサイル基地は真っ先に攻撃対象になる。このくらいは、自衛隊誘致派の人も覚悟のことだろう。当然石垣島からも600人と言われる自衛隊員が抗戦する。その為の基地である。

 宮古島からも360名の自衛隊員が反撃をするのだろう。その程度で中国に勝てるわけもない。中国は当然、2つの島のミサイル基地をせん滅してから、尖閣に上陸占領するだろう。それを防ぐだけの能力はこの2つの基地にはない。そのくらいは自衛隊も、アベ政権も、石垣市長も、議会の誘致派も承知に違いない。

 だから、あくまで当面の自衛隊配備であり、将来的には石垣島を基地の島に変えて行かなければ防衛が出来ないということになる。軍事的対抗はそうならなければ安心がない。必ず大規模な自衛隊基地を作り、そこに米軍も共用することになると考えねばならない。

 果たしてそれが正しい方向であるかどうかを、今の段階で議論すべきである。市長や誘致を希望する市会議員はそういう議論を市議会でしているのだろうか。もし議会でそうした議論までして、その結論として、自衛隊基地の誘致が決められたのであれば、まだいい。

 私の知る所では自衛隊の誘致自体が議論の対象になっていない。国の専権事項に石垣市は口をはさめないと、議論を避けているのが、市長と誘致議員である。議論をしたところで接点がないと考えている。住民投票をすれば、反対が多いに決まっていると言っていた。

 それなら、一切民主主義的手続きを無視して、強行してしまえというのが、今の誘致派のやり方である。それでも、石垣市民が防人の島になることを選択するのであれば、致し方ない。住民の意思など無視して、無理強情に防人の島にしてしまおうというのでは、さすがにこれは許されないことだろう。

 自治基本条例の不備があれば、まず問題点を検討し、改訂すればいいだけのことだ。自衛隊基地誘致の邪魔になるから、基本条例そのものを廃止しようと考えることは民主主義社会とは思えない暴挙である。

 住民自治の精神は民主主義の基本である。住民の義務と権利を明記し、一人一人が政治の主人公であるという当たり前の考え方である。市民が作り上げる、市民憲法である。これからの社会には不可欠なことだ。

 石垣市でも市役所の移転については住民投票が行われた。そして移転が決まった。不満がある人も当然いるだろうが、多数の意見に従うという民主主義的な決定が行われたのだろう。自衛隊基地であれば、なおさらのことだ。住民の未来に市役所の場所以上に重要なことになる。

 韓国との関係悪化で韓国からの観光客は激減した。石垣島の経済を回している観光産業は平和産業である。基地の島になれば、観光に影響するだろう。そうなれば、石垣島の暮らし向きまで影響してくる。この選択を住民がどう考えるかを、投票で判断するのは当然ではないか。
 
 自治基本条例では、情報共有、市民参加、協働、多様性尊重の原則を掲げ、市政運営の公正の確保と透明性の向上のため市民への説明に努めるよう市に求めている。これが議会も市長も嫌なのだろう。民主主義では自分と考えの違う人の権利を尊重するものである。

 自治基本条例を廃止するということは、民主主義を止めるという事になる。確かに軍国主義国家では民主主義は邪魔なものだろう。市長が何度も発言する、「国の安全保障は国の専権事項」という考えになる。そこに暮らす住民は無視した方がやりやすい。

 条例には住民投票に関する規定がある。有権者の4分の1以上の連署で市長に住民投票の実施を請求できるとする。請求があったとき、市長は「所定の手続を経て、住民投票を実施しなければならない」と明記している。
 
 この規定が邪魔なのだ。だから、自治基本条例を廃止したいだけなのだ。現在の市長と議会のやり方は許されるものではない。余りに一方的でずさんなやり方だ。それこそ、廃止するのであれば、住民投票が必要である。これは国の専権事項ではないだろう。最後の手段としては、市長のリコールであろう。


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