フォルクスワーゲン社の排ガス規制逃れ
世界一の自動車会社がジーゼルの排ガス規制逃れをしていた。企業というものの醜悪な性格をよく表している。利益を出すためには何でもやる。消費者の裏切りさえする。資本主義の根底にある、拝金主義がこれからの社会の一番の問題だろう。フォルクスワーゲン社はこのような裏切り行為を始めてから、ぐんぐん成長して世界一の自動車販売を達成した。消費者はこの裏切りを気づくことはなかった。なかには規制値の100倍もの排ガスを出していたものもあったというのだから、気づいても良さそうに思うが、騙されてもわからないという複雑な社会の中に生きているということだろう。だから、フォルクスワーゲン社ならまさか騙されないだろうという信頼が企業ブランド。さらに驚いたことに、これだけの消費者に対する詐欺行為があっても、さして販売が落ちていないということらしい。どういうことなのだろう。私ならもう買わないだろうが。買えないのか。ずいぶん消費者心理がおかしなものである。
日本では東芝がやはり詐欺行為を行った。売り上げのごまかしである。迷惑をかけたのは株主ぐらいだから、みんなで文句言う必要はないという人がいたが、日本全体の信用を傷つけた深刻な反社会的行為だと思う。大企業が犯罪を犯すという、社会への悪影響は相当にあると考えるべきだ。その始末がいまだ誰れも逮捕されないという反社会的な結末。まともな社会とはいいがたい。大企業の精神風土はどうなっているのだろうか。税金の安いところに本社を移動させる行為が、合法的であるとしても反社会的であるという認識はないのだろうか。日本の法人税が高いがためというようなことを理由にするが、国の事情も、税の体系も違う。そもそも法人税を下げることで税逃れ企業を誘致する国と対抗できるものではない。問題は企業は何のために活動をしているのかということになる。企業は企業の利益が第一なのだということを確認する必要がある。
そのうえで、国家と企業の関係を考え直す必要がある。それは、このまま企業依存で行けば、日本の社会の格差が増大するということである。企業が成長しなければ日本社会が衰退するということが、アベノミックスの基本図式のようだ。この世界での競争は普通にしか推移しない。日本が独り勝ちするようなことは誇大妄想だ。世界中が競争に躍起なのだから、日本企業が競争に勝つとばかりは言えない。オリンピックの金メダルと同じだ。安倍氏がセールスにまで出かけた、インドネシアの高速鉄道だって、中国企業に敗れた。そういうことを当たり前として受け入れなければならない。世界経済の全体の動きを考えれば、日本が独り勝ちできた時代は過ぎたのだ。普通にできればそれで十分と考えるべきだ。その中で日本という国の在り方を見直すべきだ。それが美しい日本というものではないか。日本がアメリカと組んで、中国と対抗するという図式がおかしくないだろうか。大東亜共栄圏構想は、やり方はともかく、考え方としては、日米軍事同盟よりはましだ。
TPP交渉はまとまったようだ。国会決議の農業5品目は守るという約束は、簡単に破られた。とくに、米は聖域だと言われていたにもかかわらず、無関税で輸入する枠を新設し、13年目以降に計7万8400トンに広げる。結局企業優先で農業に見切りをつけたということなのだろう。国際競争力とか、地方創生とか、きれいごとを並べながら、農業と地方を切り捨てたという結果である。農業における具体的な政策を示すべきだ。地方の活性化の具体的な政策を示すべきだ。中山間地の田んぼをどのように守るのかの方法を示すべきだ。このままでは茅葺き屋根の家がなくなってしまったように、里地里山は日本から消え去ることだろう。それでいいと考えていながら、美しい日本を口にするところが汚い。せめて里地里山の景色を描き残しておこうと思う。