経済格差の拡大

   

東伊豆海岸 10号 小川和紙 

アベノミックスによって、と言うか安倍政権の経済政策によって、経済格差は拡大している。最低賃金が上がり、業績の良い企業は賃上げを行う。一方で物価は上昇する。消費税が上がって、苦しくなっている人がいる。自営業である百姓の暮らしはさらに苦しくなる。復興需要のある現状はまだ仕事はある。このままでは数年先にはさらに苦しくなる。消費税の値上げ後、消費の落ち込みは想定内であると政府や日銀は発表した。確かに、デパートや一部の高級店は消費税の影響を受けにくい。つまり経済格差が広がり、金持ちにとっては、給与も上がり、株価も上がり、購買意欲は下がっていないのだろう。しかし、農家は苦しくなっている。これからさらに苦しくなるだろうという実感があるから、消費はさらに抑えられて行くことになる。深刻な格差社会の入り口まで来ている。

日本が韓国の後追いをしていれば、必ずこういう経過を経るだろうと考えてきた。国家が基本とすべき一次産業を軽視すれば、国の危うさが高まってゆく。国が成り立つために重視しなければならないことは、食料の生産である。それは食べ物があるという安定基盤だけでなく、日本と言う国土に安定して暮らしてゆく姿を、それぞれの立ち位置で確認できるということではないだろうか。どこで作られたか分らないようなものを食べている人間に、安定した心が育たないのではないだろうか。TTP経済協定では、自然環境や国土条件の違う、農業を他の産業と同列に扱っている。その意味で過去のGATTのような経済協定とは、その主旨が大きく異なっている。日本国から見れば、農業を他の国に譲り、工業製品の輸出国になるという考えである。工業製品の販売こそ、企業中心に考える安倍政権としては、重視するのは当然のことだろう。韓国同様に、大企業だけが頑張ってくれれば、国の経済全体も上手く行くという考え方だ。

企業の先行きと、国家の国益が一致している間はまだよいにしても、いつかはそれが相反してくる可能性がある。資本は資本の意志を持ち始める。日本人が日本の企業と考えていたトヨタが、日本の利益を捨てても、企業利益を優先するのは、資本の性格からいって当然のことなのだ。そのことを考えると、企業にだけに軸足を置く安倍政権のリスクは、極めて高いと言わざる得ない。安倍政権は地方創生と言う不思議な言葉を作り出した。地方に土木工事を導こうとしているのではないかと疑っている。大規模公共投資を地元に誘導するのが、保守系議員の使命の様なものだ。あの橋は何先生が持ってきたものだ。あの飛行場は何先生が総理大臣をやったおかげだ。こういうことは普通に言われていることだ。自民党はこうして地元の利権と結び付いて、安定政権を作ってきたのだろう。

日本が高度成長期の頃はまだよかった。拡大再生産して行ける余地が日本の経済環境にあった。世界との競争に苦しんでいる現状で、日本の財政危機は深刻どころか、ほぼ絶望的な状況に見える。にもかかわらず、大型の公共事業を地方創生でばらまく可能性がある。この点で、官僚と政治家は利害を一致させている。確かにやらなければならないことはない訳ではない。しかし、お金に限界がある以上、何を優先に行うかだ。一番は自然エネルギーの研究開発だ。これが第3の矢だったのではないか。すでに放たれたとすれば、まだまだ、効果が無いということだろう。世界の趨勢から見れば、この分野では遅れを取っている。一番じゃなければ意味が無いとは言わないが、自然エネルギー分野に、集中的に財政的投資を行うべきだ。そして、土木工事は緊急的なものに、限定すべきだ。

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