習近平氏と中国の展望

   

胡錦濤・国家主席から党総書記のポストを引き継ぐ、習近平氏は元副首相を父に持つエリートである。文化大革命の混乱の中で成人した。文化大革命前に父は失脚し、習氏は下放し貧困にあえぐ農村部で数年間暮らした。その後復権し、精華大学を卒業し、エリートコースを上り詰める。相当にしたたかな人物と考え無ければならない。下放時代が強調される傾向がある。貧しい農村生活をしたので、貧困層への理解が深いというような見方は到底できない。むしろ、世の中の裏側を見る複雑な性格を有し、決して本心を明かさない人間と見ておいた方が良い。冷徹であり、感情に流されない。富裕層側に立つであろう。中国の未来はとても危うい。様々な難題が待っている。これを乗り越えるために、さらなる経済優先政策を貫くであろう。それは格差を広げる結果に成る。貧困層という安い労働力と、富裕層という資本の集中。これが世界経済で勝ち抜くための手段に成る。

世界のどこの国でも、格差社会が生まれている。これは資本主義経済の競争激化の結果である。世界での競争に勝つため、1番に成るため、という事には資本の集中と、安い労働力が不可欠である。これを一番実現していたのが、アメリカである。移民労働力と、格差の大きな社会。アメリカはオバマ大統領が再選され、さらなる格差社会を画策したロムニーが敗れた。当然であるが、ファンド会社を成功させたロムニーこそアメリカである。中国の場合、まだまだ資本力は弱いが、それでも安い労働力を大量に国内に持っている有利さで、世界での競争で追いついてきた。そして格差というひずみをどのように問題化させないかが、これからの競争と考えている。その為に出てきたのが習近平氏と考えられる。経済の減速、腐敗、無数の社会問題。貧困層は格差や腐敗、環境破壊、役人による土地収奪多分手に負えない事態が近づいている。

今後の展開で注目しなければならないのは、中国の富裕層が国を見放すかどうかである。日本の企業も日本を離れる離れると国民を脅かしながら、税制など有利に導こうとする。中国の富裕層が国家というものをどのくらい重視しているかである。中国人は日本人の比ではなく、拝金主義的である。これは伝統的な思想だ。汚職で国家全体が腐敗しがちな国である。儒教はそう言う背景に生まれたと思う。共産主義というものが、そうした伝統的な中国人気質を幾らかでも、修正できるかである。多分、富裕層の多くは海外脱出をすでに考えているだろう。しかし、そうでない人もいるのが中国である。私は残るそうした理想を持つ優れた人たちが、もう一度中国という国を立派にするのではないかと想像している。

習近平氏の10年は、中国の共産主義崩壊に伴う過激な国家戦略が、世界経済を混乱に陥れないように、日本とアメリカが協力して立ち向かう事に成るのではないか。それが最近一般語化してきた、チャイナリスクの本当の意味ではないだろうか。中国に進出して利益を上げようという企業が、暴動によって損害を受けるというような範囲は、企業の覚悟の上のリスクでああろう。尖閣問題をいち早く、世界の司法的判断による結論を求め、片づけておくことである。石原氏のような、来たら追い返せというようなことは、中国政府の狙いどうりである。必要なタイミングで、何か事が起こる。突然TPPを持ち出す野田政権と同じことだ。次なる問題を持ち出し、不満が自分に向かう事を避けようとする。経済だけを国是としていれば、日本も中国も、破局に向かうだろう。

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