双葉町長 井戸川克隆 氏

   

政治家の責任という意味で、この人の身の処し方はおかしいではないか。原発があることを歓迎し、推進してきた町長である。電源立地地域対策交付金を恩恵と受けとめ町長をやってきた人だ。その判断が間違っていたという自覚がないようだ。「原発が作る明るい未来」はなかったのである。その反省が見えないのはどうしたことなのだろう。双葉町が原発を受け入れていたことが、取り返しのつかない、被害をもたらした。その当事者責任の、重要な位置にいるのが、双葉町町長である。被害者ではなく、加害者側の人間である。放射能被害者の一人として、双葉町長井戸川氏を批判する。まるで他人事のように、この事態に対して発言している。確かに、事故後の処理法を、国に押し付けられているという、被害者意識はあるだろうが、立場を十分に考えてもらいたい。加害者の一人として、この事故に向かう必要がある。

町民の中に、故郷に戻りたいとする意見があるのは当然である。チェルノブイリでもアレクセイエフの泉のように、避難地域内でそのまま暮らしている人が居る。戻りたいとする人に、戻れない事を説明することが町長の役割ではないか。どう考えても、戻らない方がいい。戻れないとするなら、その上で双葉町町民の未来をどうするかをがんがえるしかない。双葉町の人たちの場合は、原発を容認し、対策費をもらって町の運営をしてきた。今さら、戻りたいという町民の意思を大切にして、などという状況ではない。そんな態度であれば、何も解決できないまま、事態はさらに悪い方向に進む。町長として、双葉長の現状を冷静に分析してもらいたい。「戻らない方がいい。」そう説得するのが、失敗をしてしまった町長の唯一取れる策だ。今後、何十年と原発事故収束の戦いは続く。50年立っても収束できるのかどうか。今故郷だと感じている10歳の人も、60歳を越えている。わたしの生まれた境川との時間距離である。

町民の未来を切り開くためには、双葉町を離れ、新しい地域に町を作る以外ない。そのことを国と交渉するのが、町長の今の役割ではないか。戻る可能性に捉われている間は、未来を見ることが出来ない。政治家が何をすべきか。まず情報を広く集め、充分に学び、冷静に正確な状況判断をしなくてはならない。一人でも多くの専門家から聞くべきだ。チェルノブイリにも行ってきたらどうだ。戻ることなど出来ないことが分かるはずだ。町長が感情にとらわれていては、良い解決は見えてこない。原発を良いものとして考え、明るい未来に繋がるものと考えていた町長だから、この事態の解決は出来ない可能性が高い。それならば、責任を取って辞任すること。未来の見える人に変わらなくてはならない。その周辺の町の立場を良く考える必要がある。

双葉町のように、原発依存で長く暮らしている町は、生活も原発依存になる。仕事もそうであろう。農業をやっているとしても、原発関係者とは深いつながりが生じているはずだ。新しい生活を考えることも、どこの街より難しいはずだ。東電の洗脳教育も行われていたようだ。国は率先して、この事態を招いた責任を感じ、双葉町町民が生活再建できる案を提案することだ。その上で、放射能汚染地区として、どう管理して行けばいいのかを考えるべきだろう。死の町だと発言した政治家や、もう戻れないと発言した政治家に対し、強い批判が起きた。無神経に被害者を苦しめてはならないが、いかにも戻れるごとき発言をして、期待をさせることはさらに良くない。国は次の方策を打つ能力がないから、戻れるごとき、曖昧な態度を続けているだけだ。国等当てにしていたのでは、いよいよ生活再建が出来ない。町長は未来志向で、住民の暮らしの本当の再建を考えて欲しい。

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