天空の棚田
NHKのテレビ番組で、中国雲南省のハニ族の「天空の棚田」の放映をみた。万里の長城以上の人間の営み。夜9時からと言うことで、昨日一日体調がおかしかった。「紅河ハニ棚田」総面積5万4千ヘクタール。期待は大きかった。撮影隊は3か月も現地で暮らしながら撮影したと言うので、どれほどのものかと考えていた。やはり天空の棚田は想像を越えて素晴らしかった、といいたいのだが、物足りない通り一遍のものだった。NHKの制作意図が曖昧。これほどの素材を使って、残念なことだ。美しい場所としてイメージビデオのように写すなら、それに専念した方が良かった。歯がゆくて不満がたまってしまった。撮影の意図、主題が、掘り下げが浅い。自給自足の民と紹介しながら、どんな自給自足なのか、肝心な部分が見えてくない。1300年永続性のある暮らしと言いながら、暮らしの実際について、触れてもいない。森があり、集落があり、その下に田んぼがあることは分かったが、それがどう繋がっているかの本当のところが捉えられていない。循環する暮らしについて、思想のない人が作っている。だから、知りたい肝心なことが表面的で、イライラが募る、ああ残念だ。
3000段と言う棚田の維持の方法が見えない。稲刈り後すぐに、畔の修復をしている。春の田植えごろにはもう一度やるのだろうか。稲の根を漉きこんでいる。これだけで畔が維持されるということは、何らかの特徴のある土のはずだ。砂礫質と言うだけでは、何も見えない。急峻な400メートルの高度差があるとして、水回しはとても困難なはずだ。どんな工夫で作り上げられているのだろう。1300年の耕作で土壌がどう変わったのか。粘土分は見る所相当にある。耕作した結果なのか。最初からなのか。通年湛水方式である。田んぼで鯉の養殖を行う。その姿は触れない。その稚魚はどうしているのか。どう繁殖させてきたのか。緋鯉が混じっていたが、どういうことか。一年魚の大きさに限定されている。田んぼの水深はどのくらいなのか。他の田んぼに逃げない工夫はあるのか。ワシやタカなどに取られることは無いのか。大雨で、水がのっこすことは無いのか。通年通水で田んぼの耕作土が深くならない方法はどうしているのか。
稲刈り時期には水生雑草は見当たらないが、草取りの方法はどうしているのか。深水のような畔の姿だが、通年同じ深水なのか。それで草は少ないのではないか。ジャンボタニシが居たが、食害や雑草取りにはどうなのだろう。品種はジャポニカ種と言うが、日本でいう古代米のような姿である。収量は反収に換算してどのくらいか。稲刈りしをした稲を水のある田んぼにそのまま置いてすぐ脱穀するらしいが、小石は米に混ざらないのか。背丈は高い稲のようだが、何故倒れないのか。脱穀は田んぼでしなければ、上の集落までお米を運べない。それでは籾すりはどうしているのだろう。玄米で食べるのでなく。白米で食べていた。精米は水車を使うのか。400メートル標高差があるらしい。水温はどう変化して行くのか。上と下では耕作法は違うのか。水の性質は田んぼを通過しながら変化するのか。いちいちに知りたいことが出て来る。
水の管理責任者を選挙で選ぶらしい。その人が棚田全体の水の調整をしている。一人でやれる訳がない。どう調整するのか。その手法はどういう観点からなのか。何を大切にしているのか。大雨で棚田は崩れることはかつてなかったのか。棚田はどが古くてどこが新しいのか。テレビ番組に期待したことがおかしかった。少し詳しい研究を東北大学で行った資料がある。これは民族の事に触れている。内容が少し歪んでいる。状況がある程度分かる人民中国のもの。がある。この記事は良く書かれていて、今作られる棚田の作り方まで書かれている。棚田の所有形態はどうなっているのだろう。何家族くらいの人がこの棚田の維持に携わっているのだろう。息子さん達は都会に出稼ぎに行っていると言うが、学校などはどうしているのだろう。自給自足の経済はどうなっているのだろう。そして、この先ハニ族の暮らしは維持されるような方向なのだろうか。まあ、疑問を持てたと言う事だけでいいか。