自給の条件

   

食糧自給をやろうと考えた時、幾つかの条件がある。先ずは、どんな地域なら可能か。暖かいに越したことはない。体験した場所は、山梨の藤岱は標高400メートル。山北の家が標高350メートル。問題は冬である。どちらも雪が大量に降ったときは1メートル積もる。寒さでいえば、マイナス10度を越える事もある。この辺りの条件なら何とか自給できる。緯度的に言えば、福島県辺りまでか。岩手県には兄が居るので、何度も行っている。出来ない訳ではないが、条件が相当に変わるはずだ。出稼ぎを組み合わせた先人はさすがである。佐渡の大工職人とか、新潟の杜氏職人。冬場の山仕事と言うのもあるので、日本で出来ないところはない。江戸時代は北海道以外では、やっていたことだ。しかし、たのしい自給となると、暖かい所が、出来れば冬でも作物の作れる、雪の少ない所を選びたい。山北と小田原では必要面積が半分になる。労働時間も半分になった。

日照の条件。山北、藤岱、共に日陰の北斜面であった。これも出来れば避けたい。南向きが一番に決まっている。次は西向き。夕日が当るほうが、土地は一般にいい。同じ南向きでも陽だまりがいい。屏風と言うそうだ。北側から、あるいは地域によっては、西側からも吹き抜けないと土地。暖かさが貯まって行く土地。自然に則した方法でやりたいとすると、日当たりは大きい。鶏の産卵は20%は違う。当然、畑の生産量も20%以上違ってくる。贅沢を言えば、ゆるい南傾斜地。平ら地は水でも大気でも停滞する。後ろに山を背負っていること。山からの地圧、水圧がある土地。山の頂上のような土地はいけない。こんなことまで揃う土地は少ないが、湧き水がある場所なら、最高である。

その場所に茂っている樹木の姿を良く観察する。100年の木があるか。30年の木があるか。いずれにしろ。良く観察するとその土地の性格を反映している。枝振りを見れば、風の強い所か判る。木の生えている根際の姿を見れば、土地の安定性がわかる。地すべり的な場所なら、木は傾きJのような形になる。土の性格も大切である。近くに火山があるような所は火山灰の堆積がある。そうした所は多い。掘って良い山土なら大丈夫。石の多いい所も良くない。動かせないような石がある所はどうにもならないが、小さな小石混ざりも作物にはいけない。客土されたような土地は、よほどの注意が要る。以前池を埋めた土地に住んでいる友人が居た。その家の下には大きな金属の塊があるようで、実に具合が悪かった。今は産廃や残土によって谷間に埋められ、表面だけきれいに客土した土地、と言うのがある。運動公園などになっていたりするが、概観は適地であることがあるので要注意。

そして人情。自分の気質に合う所。私は小田原の舟原気質がドンピシャだった。海気質。山気質。結構日本人も多様だ。閉鎖された狭い地域では、自分が溶け込めるかどうか。大きな要素に成る。何度も足繁く通って見る事。自給だから他人は関係ない。そう言う事は全くない。自給をしようとすれば、助けてもらわなければ、不可能である。自然に暮すと言う事は、1人で暮すという訳ではない。地域の中で暮すと言う事で、むしろ、全てをやらせていただく。そんな気持ち出なければ、自給はできない。これは、大げさでも、自分だけ偉そうに言うのでない。自給をするという意味が、曲がっているととてもおかしなことになる。社会に反した自給では、労多くして、得る物が少ない。人間の力は、自分ひとりでは半分ぐらいしかでない。自給生活においては、できる限り自分の為だけでないという事を心掛けないと、力が出ないものである。

 - Peace Cafe