中国の新しい方角

中国政府が示している新しい施策がある。一つは巨大な世界企業が国家に従うようにすること。もう一つは次の世代が社会主義者になる為の教育の強化すること。もし今回の方向が成功すれば、中国は覇権主義国家では無くなるはずである。期待したいものだ。
日本の報道は中国に対しては色眼鏡で見ている。すべて仮想敵国で行われる覇権主義の一環とみている。習近平を崇拝させるための教育とばかり報道している。国のための企業とはどのようなものであるべきかは、日本も真剣に考えなければならない問題だろう。
中国には国有企業と私企業がある。私企業の方が生産性が高い。にもかかわらず、国有企業が様々優遇されている。このことは一向に改善されないのは、郵政や鉄道を民営化させた日本と同じ問題なのだろう。もちろん民営化したからと行って、上手くはゆかなかったことはある。
そもそも社会主義国家に於いて、資本主義的民間企業が活動していることが矛盾がある。しかし、その民間企業が中国の経済成長の柱になっている。だから、民間企業の活動が推奨されてきたのだろう。そうした中国の国家資本主義の結果、アメリカの経済に迫ろうという所まできた。
経済の貧困からの脱出は中国の一番の課題だった。中国の農村部は貧しかった。日本の山村の貧しい村で生まれた。日本も今から考えれば、信じられないほど貧しかった。その日本の貧しさよりも、30年前の中国には貧しい農村が存在した。
この貧困を克服すると言うことは中国共産党の第一の目的であったに違いない。いまそれが実現されつつある。その方法が国家資本主義を取り入れたものだった。矛盾しながらも、豊になるという目的は達成されつつある。それに伴い、社会主義の本来の目標を考え始めているのでは無いだろうか。
民間企業が国家の利益とは違う方向に進めば、社会主義国家としての中国としては不都合なことになる。例えば、資産を海外に移すようなことが進めば、国家としてはまずい。中国企業が海外に生産拠点を持つというようなことは起こりうるのだろうか。
現在中国は世界の工場と言われている。海外から資本が中国に導入された。そして安かった労働力を求めて中国に工場が作られた。それが中国の生産力を高める事にも成った。しかしいまでは日本の海外工場はASEAN地域に移動している。
中国の富裕層の海外での資産運用や、不動産投資が盛んに言われている。中国の労働力を求めて、世界から工場が集まると言うことは終わる。次は中国の海外進出が始まろうとしている。中国はそれを避けるのでは無いだろうか。
様々な形での中国脱出準備のような事が起きるのでは、国家資本主義は尻抜けになり成立しないことになる。そこで富裕層のコントロールに取り掛かるようだ。それが「共同富裕」政策である。大企業が国家に貢献するように仕向けている。国家資本主義である以上当然なことかもしれない。
企業が税金とは別に、国の貧困層撲滅に貢献する寄付を行うらしい。中国は日本以上の格差社会である。そもそも格差社会の社会主義国家があることじたいがおかしいだろう。寄付をしないような企業があれば、政府が圧力を加えて行くと言うことらしい。
中国の場合、その圧力とは企業経営者を罪をでっち上げて逮捕してしまうような事もあるから、企業は自ら寄付を申し出ているようだ。この寄付を元手にして、誰もが裕福になれる仕組みを構築するらしい。格差社会を温存することは、国の破綻に繋がる。
本当に出来るのだろうかとは思うが。もし私企業の独善の是正が出来れば、中国は良い国になる。なぜそれを法人税率の引き上げで行わないのだろうか。寄付でと言う方法は、何か賄賂を思い起こさせる手法に見える。すでに裏の寄付が存在していて、それを表に直すというような気がする。
教育に関しては社会主義思想を徹底すると言うことらしい。日本では習近平氏の個人崇拝の教育の徹底化と一面的に偏向してとらえているが、それほど単純では無いと思われる。豊になるにつれて、社会のために働く人材が減少してきているのだろう。
格差社会を容認した社会主義はそもそも矛盾している。矛盾はしているが、全体の経済成長が際だったものであるから、そうした格差の矛盾は飲み込まれていた。その極端な経済成長が鈍化してくれば、貧困層が反政府的になることは当然のことだろう。
そもそも中国人は商人的個人主義の傾向が強い。自分の利益を社会よりも優先する傾向が強い。それではみんなが豊かなると言うことは難しい。故人よりも国を優先し、よりよい中国を作り上げるという方向が出てきたのだろう。
いままでの中国の教育が、反米、反日てきなものが強かった。それは競争に勝つためには敵を作ることが都合が良かったのだろう。しかし、中国は敵を作るという時代から、自らが目標を持つ時代に変わってきたのだから、良い方向が出てきたとも言える。
中国では「寝そべり族」という自堕落な若者の登場が問題になっている。ゲームを一日中していて勤労意欲が無い若者である。そこで、ゲームに制限がかけられた。インターネットゲーム会社は1時間以上出来ないようにすると言うことのようだが、どのようなシステムで、賭博性のあるようなゲームなのかはわからない。
働かないで、株式投資で利益を上げるというようなことも、寝そべり族のようなものだろう。不労所得というようなことは制限されないのだろうか。社会主義社会に於いて、株式投資はいかにも矛盾している。こうした矛盾が豊かな社会になればなるほど、表面化してくる。
そして経済成長が鈍化すれば、それが反政府的な動きに繋がるだろう。中国政府はいまその転換期に突入したのだろう。確かに中国の覇権主義的な動向ははた迷惑なことだ。日本に軍国主義的勢力が登場する一番の要因である。
中国が本当の社会主義国になることを願っている。