石垣島での苗作り。

石垣島でイネの苗作りをしている。苗代は播種11日目というところである。何が起こるかと緊張して見てきた。ここからは苗床の土壌がうまく出来ているかどうかが鍵になる。十分な肥料が無ければ、ここで成長を止める。次なる緊張が強いられる。
なにしろ、直前まで慣行農法の水田であった場所だ。1ヶ月前に稲刈りをして藁を巻いて耕しただけの場所である。急遽ぼかし肥料を入れて苗代を作った。ぼかし肥料はビールかすと米ぬかと混ぜたもの。20メートルの苗代に60キロ入れて、よく攪拌した。
自分だけの田んぼであれば、ダメだったか。ダメでもいいじゃん。で済ませることも出来るが、みんなの田んぼである以上、なかなか責任は重い。失敗は出来ない。いまま確立した技術の試しどころである。小田原で確立したイネ作りの技術が、全く違う環境の石垣島でも通用する技術になっているかどうかである。
今回蒔いているのは、このたんぼで取れたばかりの「ひとめぼれ」である。初めて作る品種である。私のやり方の有機農業では難しい、穂の小さい品種である。分ゲツを多くとらなければならない。そもそも冷害に強い品種と言うことで出来たお米である。
以前から稲作の沖縄の平均収量が低いのは、ひとめぼれを作るからだと想像していた。暑さに強い品種で無ければ、うまく作れないのは当然ではないだろうか。たぶん収量は少なくとも、美味しい方が良いと言うことなのだろう。
ひとめぼれは休眠が強い品種らしい。発芽させるためには十分な浸種が必要とされる。水温のかなり高い川の水に、1週間浸けておいたのだが、鳩胸には至らなかった。ついこの間収穫されたお米は確かに、発芽するためにはもう少し時間が必要だったようだ。
適地等・ 東北中南部の平坦地、関東以南の早期栽培、および温暖地、暖地の高冷地帯に適する。 と農水省の説明である。どう考えても石垣島の熱帯気候には向いていない。しかも、酷暑の2期作でそれを作ろうというのである。
これは与えられた試練だと思っている。偉そうなことを口にするならやって見ろと言うことだと思っている。小田原で出来たって、石垣島で出来るわけが無いだろうと言うことだと思っている。確かに難しい。様々違いすぎる。何しろ田んぼの水温が35度ぐらいまで上がる。
1メートルに100グラムづつ、20区画にして2キロの種籾を蒔いた。これが70%発芽すれば、1反4畝の田んぼの苗になるという計算である。80数%ぐらいの発芽した。大分発芽にはばらつきが出来た。今発芽しているものもあれば、すでに2葉期を過ぎているものもある。
イネはこの暑さでも大丈夫なようだ。すごい作物だと改めて見直した。主食になる作物はやはりすごいものだ。水が来ないで苦労したが、やっとこのところ水は来ている。ギリギリしのいだ感じだ。あと一日水が来なければ危うかった。

次の問題はジャンボタニシである。タニシが20匹も苗床に入っていた。編み目が大きすぎたこともありそうだが、苗床で生まれたのかもしれない。編み目はもう少し小さいものにすべきだった。毎日それくらい見かけるようになってしまった。
これはかなり危うい。今も早く見に行って、ジャンボタニシ取りをしたくなる。編み目が粗すぎたことを後悔している。細かな網にすべきだった。今日言って、相変わらずジャンボタニシが集中していたら、細かな網を購入しに行くことにする。
中が見えないので困ると思って、あえて編み目は1センチにした。仕方がないので、この網を2重にした。これでダメなら、さらに対策をしなければならない。すべてジャンボタニシを取り去っても又集まってくる。やはり地中から現われるのか。
苗床にはヒエが出てきている。一段大きいのでこれは良く分かる。一度よく見て取り去ろうかと思う。その他の雑草もいくらか出てきている。ところが田んぼには全く草一本で無い。これはジャンボタニシが食べてしまうのだろう。
水を張って、3週間を越えたことになるが、草がまるで生えてこない。確かに代掻きは時々やるわけだが、それにしても全くないというのは不思議な感触である。ジャンボタニシが雑草を食べているということにはまちがいがない。確かに大苗を植えれば、草対策がいらないかもしれない。
田んぼの全体から見ると、そのジャンボタニシも急激に減ってきたように見える。探して欲しいと頼まれた。オカヤドカリの巣にしたいと言うことだ。それ以来探しているのだが、苗床周辺ではよく見るのだが、それ以外には見つからない。土の中に居て、夜になると出てくるのだと言割れる人も居るが、果たしてそうなのだろうか。
白鷺が五羽毎日きて餌を食べている。これが食べているのではないかと思われる。あの嫌なピンクの卵は畦草にときどきあるのだから、どこかにまだ居るはずである。ジャンボタニシは水に浮び移動するようだ。空気を溜めるのだろうか。水に流されて、草にとりつく。
11日目の状態でばらつきはあるが、すでに2葉期と言って良いだろう。小田原より早い成長なことはたしかだ。計算上この調子だと、3週間の育苗で4,5葉期ぐらいにはなるかもしれない。ここで田植えしても良いが、これだけジャンボタニシが居るのであれば、4週の育苗で5葉期を越えた方が良いだろう。葉が堅くなればタニシが食べることが出来ないと言うことだ。
4週間の育苗なら5、5葉期に成る計算である。5日で一枚葉が出るようだ。8月1日の4週間目がやはり田植えと考えて良いのだろう。日曜にしか田植えが出来ないと言うことだから、3週目ではまだ少し早い。
この5日で一枚という成長速度がつづくとすれば、15枚葉が出るまで75日11週ということになる。小田原よりも4週間も成長が早い。この早すぎる成長と言うことが、充分稲が実ることが出来ないと言うことになるのかもしれない。
気になるのはイネの葉の色がさえが無いと言うことがある。くすんでいて爽やかな色にならない。何故なのだろう。気のせいなら良いのだが、成長が早い割にはなんとなくたくましさがない。これがひとめぼれの姿なのだろうか。
ゆっくり成長させると言うことは出来ないのだろうから、早い成長に合わせた、イネ作りをしなければならない。補肥のタイミングも難しいものになりそうだ。