ヨーロッパのアメリカ離れ
2025/04/24

ヨーロッパのアメリカ離れが始まったようだ。EUはトランプ関税に対して、報復処置をするとすぐに反応した。マクロン大統領はアメリカへの投資を辞めるように、企業に要請した。すでに報復関税をEU全体で対応すると言うことが表明された。
日本は抗議して、特別扱いをして貰おうという態度だ。この国の国民であることが恥ずかしくなってしまう。一方的に関税を上げるなど言われてたら、EUのように報復関税を考えることが国家の尊厳を守る態度だろう。アメリカへの投資を増やすなど、とんでもない日本の政府の方針である。
日本もEUのように考えなければならない時が来ている。アメリカは他国の面倒を見ることが不可能な国になった。自分のことだけで、精一杯になっている。これからアメリカ社会の不安定化がさらに起こるはずだ。豊かな国の格差が、病んだ巨大国家を作った。トランプがその病の象徴である。
ヨーロッパの国々の人は、どこかアメリカ人が嫌いだった。お金の力に任せた傍若無人な態度が嫌われていた。フランスに来て平気で英語をしゃべると言われていた。どことなく新興移民国に、伝統のある文化国家が経済で負けているのが悔しいという感じだった。戦争で助けられたという屈辱感もある気がした。
フランスの小話で、「8月のパリが一番良いねぇ、とアメリカ人の観光客がはしゃいでいた。何せフランス人がいない。」という話だ。フランス人はアメリカ人から嫌われている自覚があると言うことだろう。確かにパリの8月はバカンスで空気が変わる。
今回、ウクライナ抜きの和平問題で、ヨーロッパは一斉にウクライナ支持を表明した。そしてアメリカに変わって、今まで以上に軍事援助もすることになった。30日停戦が言われているが、一向に進まない。トランプには外交は無理だ。ロシアに関税をかけてやるなどと叫んでいるが、状況が判断できない。
問題はロシアの一方的な軍事侵攻にある。ウクライナが敗戦し、ロシアが占領するという形で終わることは、力による現状変更になる。しかし、アメリカが手を引けば、そういう結果になるだろう。トランプはアメリカの価値を見せつけるために、あえてそういうことすらやりかねない。
アメリカがロシアの国際法違反を認めてしまうことは、許されるのだろうか。確かに戦争状態の解消が最優先事項だろうが、この和平がヨーロッパとロシアの対立を深めることになることになるのは確かだ。どう言う形で、ウクライナを独立国として守れるのか、深刻な問題が残る。
範囲はロシアの主張通り南東部4地域がロシア帰属と言うことであれば、クリミアの時と一緒で、国際監視団の元での住民投票が必要であろう。ロシアの主張のように、ウクライナでも大統領選挙をやれば良い。公正な選挙でロシアへの帰属であれば、やむ得ないことだ。ウクライナ系の住民の移動なども、考えなくてはならないのだろう。
停戦が両国の和平につながらなくては、今回停戦が出来たとしても、より大きな戦争につながる可能性がある。アメリカは停戦監視についてはヨーロッパに任せるとしている。ナトウからも徐々に手を引くと言うことなのだろう。しかし、レアメタルや原子力発電所だけはアメリカのものにするというのは、どういうことなのだろうか。
戦争では武力が強いものが勝つが、勝ったからといって、問題が解決したわけではない。問題がより深刻化され、先送りされたに過ぎない。それが戦争である。人間は心の中まで力で押さえ込まれることはない。親族を、同胞を殺された恨みは永遠に残って行く。戦争によって問題は大きくなっただけなのだ。
世界はまた戦争の時代が見え始めている。しかし、世界は戦争が出来ない状況なのだ。あまりに武力が大きなものになり、次の世界大戦は人類が滅びるときだと覚悟しなければならない状況にある。あらゆる場面でどうすれば、戦争を回避できるのかを考えなければならない。
世界が独裁者を作り上げようとしている。資本主義の行き詰まりなのだろう。対立する相手が武力を増強するときに、対校して武力を増強して、均衡することで平和を保とうとすることには限界がある。結局の所、ロシアのように圧倒的な武力を持つ国の横暴が許されると言うことになり、国際法による処罰が機能しないことになる。
可能な世界平和は、武力の弱い国、持たない国が守られる為の、国際的な機能を国家間の相互協力で構築しなくてはならない。ウクライナよりも小さく弱い国であっても、強いロシアに対抗するだけのヨーロッパ諸国の総和がロシアの横暴を許さない、国家から離れた抑止力を持つ必要がある。こんな空論ではどうしようもないのだろう。
それはヨーロッパだけではなく、平和を望む世界の大半の国が協力して、ロシアのような横暴な国に対抗する、平和のための抑止的軍事力を備える必要がある。どれほど弱小な国であっても、独立と自由は保障されなければならない。国際平和抑止力連合を作る必要がある。
EUはまだまとまっているから、ロシアの横暴に対抗できる。イギリスがEUから抜けたことは自由主義陣営としては、痛手だ。イギリスはTPPへの加盟を望んでいる。日本もTPPの枠組みを推進しなければならないだろう。中国、韓国も希望している。まずは経済連携からの仲間作りだろう。
アメリカの核抑止力に依存することは、限界である。中国の抑止力に期待することも良くない。弱い国であるからこそ、弱いもの同士が、連帯して軍事大国を許さない世界を目指す必要がある。国の尊厳は、大きいとか、軍事力があるとか、経済力が強いとか。そういうことには関係しない世界を目指す必要がある。
アメリカの一国主義への後退を機会に、日本は弱い国平和連帯を探求して行く必要がある。加盟するすべての国が、暴力による現状変更を許さない連帯をして行く。世界は分断の時代に突入している。しかし、今こそ日本は平和憲法の国として、世界に武力ではない問題の解決を提案すべきであろう。
それしかないと思い続けてきたのだが、ますますその思いは強くなっている。力の強いものが横暴が許される社会は、何とか終わりにしなければならない。日本は日米安保で80年も平和が保たれたことは、ありがたいことではあった。軍事力の経費が少なかったので、高度成長も出来たのだろう。
ただもう日米安保同盟は終わりである。アメリカもその方向を見せている。日本が独立国になる良い機会ではないか。まずアメリカの軍事基地を引き上げて貰うことだ。アメリカの実質的占領を終わらせるときが来ているのだ。それはヨーロッパの覚悟と同じことである。
アメリカが世界の警察を止める。その代わりに、弱い国々で、世界の警察を作るほかない。アメリカに偏らない、民主主義国家の連隊を作る必要がある。それはヨーロッパ、アジア、アフリカと連帯して行くことだろう。国連は核保有国の拒否権で機能しなくなったのだから、核保有国を除いた平和連帯であろう。