トランプ関税、自由貿易の失敗

   



 日本は自由貿易の恩恵を受けて、経済成長をしてきた。自由主義陣営の国は自由という言葉の連想で、自由貿易を自由主義陣営のもので、自由主義陣営を強くするものだと考えていた。所が自由貿易の中に、中国を代表とする、国家資本主義と言える形の経済政策の国が割り込んで登場した。

 WTOが掲げた国際的な自由貿易の規則を、巧みにすり抜け、抜け駆けするようになった。その結果国家が戦略として、輸出のために様々な方法を駆使して格安製品を輸出する経済後進国の中から登場した。ことを、自由貿易の今までの枠組みでは押しとどめることが出来なくなった。

 建前としては自由貿易であるから、許されるのではあるが、このままでは国家資本主義国が経済の勝利者になることが見えてきた。それは、中国のような巨大国家だけでなく、シンガポールや韓国や台湾も国家の方針として特定企業に経済を集約して、世界との競争に勝利するということになっている。

 自由貿易という正義の前に、一切の制限がない競争をすることは、特定のと言うか、特別のと言うか、特殊な国が競争に勝利して行く結果になる。互いに国家の利益を秤にかけて、交渉で決めてきた関係だけでは限界に達したのだろう。

 日本は高度成長期に、欧米の競争国から働き過ぎと言われた。欧米人の倍も働いて、競争をしてくるから、不当な競争になっていると批判された。働き過ぎで経済競争に勝利する国が出てきたのでは、まともな暮らしをしている国が経済で追い詰められると批判された。

 国家の方針が、経済競争に特化していて、海外の企業と競争をする国が勝利者になり始めた。日本はこの点で遅れ始めたのだろう。アメリカのような豊かで、巨大な経済の先進国と言われてきた国が、格差社会が大きくなり、貧困層が登場し社会不安が進んだ。貿易赤字を抱えて、追い詰め始めている。

 先進国では自由貿易と自由主義とが不可分のものとして連動していたが、国家資本主義国の考える自由貿易は、実は統制経済のような自由のないものなのだ。貿易のルールの抜け道を通ることで、急速な経済成長を遂げた。それは、中国やインドやアフリカの国々も競争に参加している。

 こうした世界経済の変化の中で、自由貿易を一番に提唱し、その恩恵を受けてきたはずのアメリカが、20年前ぐらいから、WTO批判を始めた。自由貿易のルールが先進国と後進国とは扱いが違い、中国のように後進国扱いを受けながら、国家資本主義で競争に勝ち抜く国が有利だという主張。

 アメリカは確かに自由貿易を続けてきた結果、社会のひずみが拡大した。それは自由貿易の問題というよりも、資本主義がいち早く終末期を迎え社会が階級化をした結果でもあるのだろう。極端な富裕層と、極端な貧困層が混在することで、社会が不安定化し、様々なところで破綻を見せ始めている。

 そこにいよいよ、中国に経済的に追い抜かれるだろう、という現実が突きつけられた。アメリカは植民地から新興国家として出来た歴史の浅い国として、経済と軍事力だけが国の尊厳である。どこか不安定なところがある。中国に追い抜かれるという恐怖が、アメリカを深刻に追い詰めているのだろう。

 そこで、トランプ関税である。トランプ氏は日本が平均で課している関税障壁を46%とみなすとして、そのおよそ半分の24%を相互関税として課税すると説明している。46%はどう考えてもおかしな数字だ。本来ならばWTOが介在して交渉して判断すべき数字だろう。このほか、中国には34%、EUには20%の関税を課すということだ。

 アメリカの力を見せつけてやる。アメリカをもっと評価し、弱小国家はへりくだれと叫んでいる。アメリカの世界に与えてきた恩恵がどれだけのものか、思い知れと言うことだろう。国力を無視して、相手国の状況を無視して考えれば、トランプの主張は正しいことになる。

 トランプ関税はアメリカの一国主義の表れであり、トランプの国家資本主義の姿なのだ。追い詰められたアメリカの遠吠えなのだ。確かに日本はアメリカの属国として、宗主国アメリカの恩恵にすがって存在した。日本は、日本人は目を覚ますときなのだ。敗戦し占領された日本国から、独立国日本として独立するときが来た。

 アメリカから見れば、日本は東アジアのアメリカの捨て駒の一国になったのだ。アメリカの、言いなりの同盟国であるから、手先として、防人として中国の最前線に立って軍事的に戦え、と言うことになる。日本がウクライナになれば良いとしか考えいない。

 しかし、アメリカが一国主義になり、24%もの関税をかけるという以上、いつまでもアメリカの使い走りでいなければならない理由はなくなった。日本は独立した国なのだ。いつまでもアメリカの言いなりで良いはずもない。アメリカから離れる良い機会だろう。アメリカから離れる国々で連帯することだ。

 日本が中国と戦い、両国が疲弊すれば、アメリカが得をすると考えているのだ。日本はむしろ中国と利害が近くなっている。日中ともにアメリカの被害者になりつつあるのだ。アメリカが日本に24%もの相互関税をかける。自動車には25%の関税をかけるというならば、日米同盟の見直しである。

 アメリカと距離をとり、中国との経済関係を見直す。中国は覇権主義の国ではあるが、商人の国である。日本が中国の利益になる国であるならば、日本を支配しようなどとは考えるはずがない。互いに得になる道を探ることは出来るはずだ。中国も今経済的にそうした土壇場にある。

 しかし、中国経済があと10年もすれば、アメリカを凌駕することは見えている。日本も中国との関係を見直した方が、経済的な展望が出てくるはずだ。中国が恐ろしい国だということは、現状確かに習近平政権の独裁には不安があるのも事実だが、アメリカよりはましに見えてきた。

 中国はトランプのような脅しを日本に仕掛けているわけではない。中国との関係は、対等な経済関係を模索すべきだ。中国が国家資本主義国であるという前提で、互いに利益になる関係を探して行く。すでに日本は経済的にはアメリカよりも中国との関係の方が深くなっている。

 中国人は優秀である。体験として何度もそうした経験をした。人間的に尊敬できる人がいる。自然養鶏のことで、農村部を回ったことがあるが素晴らしい人たちに出会うことが出来た。もう一度中国人を刮目してみてみるべきだ。過去日本人は中国人を蔑視した時代がある。

 侵略戦争をしたことを深く反省をして、中国と友好関係を結ぶことが出来れば、日本の新しい経済の状況も展望できるはずだ。確かに中国共産党は反日教育をしている。それは日本政府の仮想敵国政策の反映だ。アメリカの圧力で日本は対中国へのミサイル攻撃まで準備させられているのだ。

 自由貿易は行き過ぎてしまい、世界経済の競争主義を先鋭化させた。そして経済格差を世界中に生んでしまった。その結果、世界は不安定化し、戦争が勃発し、停戦できないような歪んだ状況が続いているのだろう。今はアメリカから距離を持つことが、最良の政策である。

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