円安の時は絵の具が買いにくい

   



 水彩絵の具をそろそろ買おうかと思っている。まだ無くなるわけではないが、使い切れないほど無いと絵の具も紙も安心できない。昔、ファブリアーノの水彩紙を大量に買った。買ったあと紙の質が変わった。買っておいて良かったとつくづく思った。

 画材はどんどん変わる。これぞと思うものはできる限りかっておいたほうが良い。例えばカドミニュームレモンは無くなっている。しかし探すと古いものが売られている。それでももう少し円が高くならないかと、ためらっている。時々換算レートを見るが、せめて110円ぐらいにはならないものか。

 ためらっていたら、なんとオミクロン株がカナダからの通販を介して中国で感染があったということがニュースであった。あるかもしれない。まさにこれは生物テロの予兆のような恐ろしさである。これでは、しばらくは海外からの通販は止しておいた方が良いと言うことのようだ。

 大抵の画材はebayという通販で購入する。今日も見てみたが以前よりも日本円価格は高くなっている。もう少し円高になって欲しい。今の円安はさすがに極端だと思う。日本がこんなにも安くなってしまったのかと思うとどこかがっくりくる。

 あるいは、日銀の輸出企業支援の政策金利のためなのか。それで輸出が好調なのだろうか。そうでもないようだが。しばらく前は今より一割くらい安く買えたのだ。新聞によると、現在の円の価値は1972年並の水準と言うことだ。

 金沢の旧生協の二階のアトリエで絵を描いていた頃と同じと言うことになる。あの頃は自活していたので、画材を買うのはかなりの生活負担だった。それでもアルバイトをしては画材を買った。絵の具を買いたいから働きに行くという感じだった。

 学生課というところで、学生のアルバイトの紹介をしてくれていた。学生課の方は大学の教員よりも、一番親しい人だっただろう。何かと親切にして貰えた。課長が絵を描く人で、わたしが芸交祭という絵画展に出品した絵をわざわざ、知り合いの画家に見せてくれたくらいだ。私がフランスに行くときも大いに励ましてくれた。

 なにしろ、旧軍隊の馬小屋に暮らすことになったのは、学生課の方が美術部のアトリエとして使って良いと、言ってくれたからだ。もちろん寝泊まりしていたのは今だから書けることだが。50年すれば時効だろう。その場所は昔は金沢城の庭園だったというところだ。今は素晴らしい日本庭園が再現されている。そんなところ寝泊まりして大学に通う幸運な学生がいるだろうか。

 話がそれてしまった。日銀は円安は経済成長率を押し上げると主張するが、実質実効レートの低下は円安と物価低迷。日本経済の低下によって円の対外的な購買力が、かなり下がっている。円安は消費者の負担は増すことにならざるえない。ガソリンがこれ以上上がれば、乗り控えが起こるのだろう。円安で喜んでいるのは輸出企業だけだ。

 円の実質実効レートは円相場が初めて1ドル=70円台に突入した95年の150台が最高で、当時から50%強、低下した。このことは今の半額で絵の具が買えたと言うことになる。アメリカで購入するから良くないので、ヨーロッパの絵の具や紙なのだから、ヨーロッパで買えば良いのだが、情けないかなヨーロッパの通販というものがよく分からない。

 Winsor&Newton Professional Water Color Paint37mlチューブビリジアン
真新しい4,061円1月22日17:26即購入通関サービスと国際追跡が提供されます+1,519円の送料見積もりとある。5600円ぐらいの絵の具と言うことになる。以前は5000円以下だった気がする。

 絵の具は英国がほとんどなのだから、英国の通販から買う方法が分かれば良いのかもしれないが、英国のポンドで購入してもどうも一度ドルレートになって居るようにも見える。この辺のシステムが理解できない。それでも、日本国内の画材屋さんにはない37mlの水彩絵の具である。このサイズで無いと、毎日は絵は描けないだろう。

 円の相対的価値が下がっているのは物価上昇率の内外格差を為替レートの変動で調整できないためだ。本来、物価が上がると購買力は下がるため通貨の価値は低下する。逆に物価が安定していれば通貨の価値は保たれる。だから為替レートは時間が経てば、ものの価格で調整される。

 ところが、95年からの日本の消費者物価指数の伸びは4%なのだ。30年近い間ほぼ上昇が無かったということらしい。この間の米国の上昇率はなんと84%にも達した。物価が上がらない日本の円の価値は上がり、それが名目の円相場に反映されるはずだが、1ドル114円台と1年前より、10円安い水準になっている。これでは絵の具が高くなるわけだ。

 物価の格差はビッグマックは日本では390円だが米国では650円。アメリカで買う絵の具は日本の倍近いという意味だ。本来なら1ドル70円まで上昇しないと価格差を埋められない。円が上がるどころか、さらに下がっている。この辺りが実感と実体に開きがある。

 円相場は実体経済よりも円安に振れているため、ビッグマック指数で測る円の価値は主要通貨で最も安い。日本のラーメン店チェーン「一風堂」が提供するラーメンも、国内で食べると800円程度だが米国では2300円という驚くべき価格だそうだ。気楽には食べる気になれな
い。そういえばラーメンというものはもう何年も食べていない。

 世界がインフレになっている中、日本だけが2%目標に、何年経っても達しない低インフレ。経済力の低下に従う円安で購買力の低下は、海外からモノを輸入する際のコスト増に直結する。日銀の輸入物価指数によると、牛肉は10年前に比べ2.4倍に急騰。それでも国内の牛肉よりは大分やすい。小麦は66%上昇したというが、国内小麦の生産費から見れば、極めて安値である。

 問題はこの辺にあるが、農産物の場合以上に工業製品の生産コストも日本は極端に低いらしい。どういうことなのだろう。日本人の労働生産性が悪いらしい。見本人は勤勉な方だと思う。労働者の問題よりも、組織や工業製品の生産現場そのものの問題か。農業で言えば、気候や耕作地の条件が違うのだろう。

 原油先物価格が2022年に1バレル平均90ドルで推移すると為替相場が横ばいでも家計負担はトータルで21年に比べ3万円以上増えることになるそうだ。87ドル台前後まで上昇している。日本人の生活がだんだん苦しくなってきていることが分かる。

 2021年後半から欧米諸国はインフレに対処するために金融緩和縮小、貸出金利の引き上げにカジ取りを切り変え始めた。金融政策の差から円は売られやすく、今後も引き続き日本の物価上昇は欧米諸国と比べれば小さいだろう。円の価値の低下傾向がさらに続いてゆくのだろう。

 絵の具はあきらめてそろそろ買うしかないと言うことだろうが、オミクロン蔓延状態では買えない。待っていればさらに絵の具が高くなるばかりだ。いよいよEBEYで買うよりは英国で買う方法を研究すべきなのだろうか。英国の画材屋さんからの購入方法の調査が必要になる。

 フランスに居た頃、英国に行きあちこち画材屋さんも巡り歩いた。珍しい紙が色々あり、購入した。顔料で着色した紙があり購入した。今でもいくらか残っている。この紙は絵の具に紙を着色する染料の影響が出ないのだ。今は水彩画を描くのに着色紙の方を使わなくなった。

 おもしろい画材を売っているお店があった。もう少し研究をしてみる必要があるようだ。

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