日本人の内なる昭恵さん信仰

   

 

 アベ内閣がやっと終わるが、残念ながら日本人の昭恵さん信仰は終わらないことだろう。昭恵さんをあんな人に育てたのは、取り巻きのすべての人だと思う。権力におもねる精神が露呈した。いつの間にか昭恵さんの中の昭恵さんが手に負えなくなったのだ。

 内なる昭恵さんを反省として自らの昭恵さん信仰を終わりにしたいものだ。そのためにも昭恵さんと間接的に関わった体験を書いておく。この事件は週刊誌などでも取り上げられたので、書いても差し障りはもう無いと思う。

 昭恵さんが悪いのではない。昭恵さんを頼りにしようとする側の方の祭り上げ方に責任が大きい。昭恵さんは実に不思議な立場の人だ、たぶんアベ氏には総理大臣に導いてくれた女神様のような有り難い人なのだろう。離婚できるならとっくに離婚していると言う作り話は、どう考えてもまるで逆である。
 
 ある事件に内側で関わった一人として、私なりに書いておきたい。犬猫の福島からの救出に関わることで起きたことだ。京都にアメリカンピットブルを深く愛する犬舎があった。タッズさんと私は呼んでいた。タッズケンネルは名犬タッズの犬舎である。アメリカンピットブルの不幸な歴史を覆そうとした人である。飼っていた雷田はそこから分けていただいたピットブルであった。

 ピットブルは名前の通り、闘犬の歴史から生まれた世界最強の犬と言われる犬種である。アメリカではギャングが飼う犬とされているそうだ。ヨーロッパでは飼育が禁止されている獰猛な犬種となっている。ブルドックがやはり、ブルバイティングから始まり現在は極めておとなしい愛玩犬になったことと同じである。

 アメリカンピットブルのタッズと言う名犬を、山口組の組長が飼ったことからこの話は始まる。組長はこの勇ましい犬を、自分の勇ましさに相応しいとして飼い始めたのだろう。ところが、名犬タッズはその誠実さと自己犠牲的な態度でこの組長をやくざから足を洗わせたのだ。

 あるとき、タッズと散歩していると小さな犬が恐ろしさの余り、逆上してタッズに飛びかかってしまったそうだ。ところがタッズはその犬に噛まれて血を流しながらも、全く動ぜず反撃をしなかったそうだ。そして何事もなかったように、早く散歩を続けようと催促したそうだ。

 ピットブルは飼育法さえ間違えなければ、実に穏やかで忠実な犬だ。私はそのタッズさんから、犬を譲って貰ったことが縁で関わりを持った。私の飼っていたピットブルの雷田もとても優しい犬だった。

 タッズさんはまず京都まで犬はもらいに来ること。そして、落ち着いたら自分が小田原にまで見に行くと言うことが、分けていただける条件であった。問題があれば、返して貰うというのだ。タッズさんはこの不幸な誤解をされたピットブルという犬種を、すばらしい犬種であることを世界に伝えたいという一心で活動をされていたのだ。

 福島原発事故のときのことである。私の所に地震直後に電話があった。原発事故があって、双葉町に取り残されたピットブルを助け出したいので協力して欲しいというのだ。その時に平塚に中継所を作る協力をすることになる。
 平塚で福島からの犬猫の受け入れ活動が始まる。福島生き物救出には様々な団体が関わり、補助金詐欺のようなおかしな団体も多数存在した。現在、広島で活動を続けている団体と、タッズさんの福岡での活動が継続されている。こう言うときに人間の本性が出るものだと思わざるえなかった。

 平塚に救出されたピットブルに始まり、何百頭もの犬猫を福島から救出した。タッズさんは京都のタッズケンネルや全財産を平塚の活動で使ってしまった。継続には様々なボランティアが協力してくれたのだ。

 その平塚の救出場所に対して、行政から立ち退きの要請が来る。平塚郊外の迷惑がかかるような場所ではなかったのだが、毎日散歩をするのだから、やはり近隣からの苦情はあった。犬舎を作り大勢が出入りする。活動が長くなる中で行き詰まっていった。場所を探し続けた。

 この活動は大場久美子さんが支援してくれて、各地で募金活動や犬の譲渡会などを支えてくれた。学生時代のアイドルがこんな形で支援をしてくれることになるとは夢にも思わなかったが、なかなか配慮の行き届いた支援の仕方で、今でも感謝している。

 そんな苦境が昭恵さんに伝わることになる。急に話が大きくなり、なんとかなりそうだという怪しい話が次々に舞い込む。どれもこれも私には危なすぎて止めた方が良いとタッズさんを引き留めるばかりだった。しかし、苦境のタッズさんはその怪しげな話に乗って、結局福岡に行く決断をすることになる。

 福岡側の支援者という人は、実は参議院選挙に昭恵さんの紹介で出ることになる。最初は美談として取り上げられ、有力候補となる。ところが、いよいよ選挙が近づくと、様々な悪い情報が出てきて、その一つとして暴力団が関与しているという話になってしまう。タッズさんはそういうことを隠して活動するような人ではない。その自分の生涯を本にして出している。私が問題なら降りましょうと離れる。

 タッズさんにはたまらない話であったろう。その候補者は結局立候補を取り下げいなくなる。福岡の話だけは大分最初とは違う話で残り、タッズさん個人がまたまた大きな苦労をしながら、新しい保護施設を福岡に立ち上げることになる。この話でどれほど苦労をしたことだろうかと思う。

 この事件の中で昭恵さんに頼めばなんとかしてくれる。もう昭恵さんがきてくれたのだから、大丈夫だということが何度かあった。私はアベ嫌いであるから、油断なら無いという目で見ていたわけだが、昭恵さんが噛んでいるとなれば、どこの市長もすぐ会ってくれ、相談にも乗ってくれた。たぶん平塚の施設がすぐに閉じないですんだ原因もその当たりにあったのだろう。忖度である。有り難いが良くない流れである。

 タッズさんは善意の方である上に、すごい行動力と、実践能力が高い人である。その人の背景に昭恵さんが居るとなると、すべてが変わる。悲しいことだが、あの元山口組のレッテルさえ出てこなければ、状況は違っただろう。何故選挙の話が絡んだのかが分からない。政治という物はそういう物なのかもしれない。最初からタッズさんは看板として利用されていたような気がする。

 内なる昭恵さんは、水戸黄門の印籠である。すべてにこう言う解決法がまかり通ることは良くないことだ。それが、犬猫の救済であれ、原発反対運動でも同じことである。政治家ならまだ良いが、昭恵さん信仰は危ない。

 一方で大場久美子さんの関わり方は良かったと思う。大場さんらしいボランティアとして毎回譲渡会の看板役などの関わりをしてくれた。この節度が大事なのだろう。支援グループ全体が大いに助けられたし、励まされたことである。

 サクラの会の招待も内なる昭恵さんである。著名人と一緒に新宿御苑に招待を受ける。その招待状を、トレードマークとしてパンフレットに印刷したくなる。それが、名誉校長を引き受けてくれたとなれば大きな効果が上がる。まさかインチキ小学校とは誰も思わないだろう。

 こうした、それぞれの内なる昭恵さんが日本の社会を形成している。これは封建時代から続く一番悪い日本人の性根である。お上のご威光でことを通す。長かったアベ時代は日本人の昭恵化時代だったのだ。これが私には一番耐えがたいことだった。

 

 - Peace Cafe