沖縄の在り方
沖縄には惹きつけられる理由がある。柔軟に一応は受け入れる文化がある。そして筋通し譲らない強さが同居している。翁長知事にその有り方がよく表れていた。自民党県連の幹事長をされていた方が、沖縄の気持ちに寄り添うと言われて自民党をやめて選挙に出た。最初は信じられない思いがあった。沖縄を裏切った仲井眞前知事に対抗して知事選に出るしかないと主張したのだ。オール沖縄という、他にはない形を成り立たせた。沖縄とは何か、沖縄のアイデンティテーという事が問われた。こういう知事選はかつてなかった。沖縄にはヤマトから虐げられた長い歴史がある。沖縄は日本人のルーツともいえる地域である。日本列島で一番古い日本人の人骨が発掘されている地域である。日本が敗戦し、沖縄は激しい地上戦で焦土と化した。そしてアメリカの占領地になった地域である。長い間占領下に置かれた地域である。沖縄が日本に返還されたのは、1972年になってのことだ。あの時共産党は沖縄が返還されると、日本が沖縄化するので反対だと訳の分からない主張をした。結果はどうであったか。本土の沖縄化どころか、本土の米軍基地は縮小され、沖縄にはさらに米軍基地が集中していったのだ。ここに沖縄の置かれた立場が表現されている。
アベ政権は辺野古米軍基地拡張以外に普天間基地の危険は除去できないという主張から一歩も出ることができないでいる。本土の危険が除去される分だけ、沖縄の危険が増したのだ。沖縄に犠牲を強いることで、日本の安全保障が守られれば構わないと考える。沖縄防人論である。世界情勢は急速に変化している。米軍は韓国から撤退する可能性が出てきた。同時にトランプアメリカは日本に対しては、思いやり予算を増額しない限り米軍を撤退すると主張している。アベ政権は捨てるというトランプに縋りついている。見捨てないで。何でもするから捨てないで。これがアベ政権の自嘲自主外交である。確かにアメリカの態度には辺野古移設以外に選択肢がないように見えた時代はあった。アメリカの外交変化によって状況が変わっている。米中関係は大きくこの先変化をきたすに違いない。その変化の結果を見てから判断することが、いま日本の正しい判断である。辺野古に米軍基地を作るとか、南西諸島に自衛隊ミサイル基地を作るという選択は、無駄になる可能性が高い。仮想敵国中国の妄想から抜け出ないと、日本の外交がとんちんかんなことになる。
こうしたときに沖縄を思う。翁長知事の気骨を思う。本来政治家がどういう存在であるべきかを示している。目先の利害ではなく、沖縄の長い将来を見据えた展望である。日本の有利はどこにあるかである。もう誰にでもわかり始めているのが、アメリカのオンリーさんをやめて、中国と良い関係を見つけるという事である。アメリカと中国の中間に位置する。中国人は極めて有能である。私が接した感触では中国の責任ある立場の人は日本人よりも様々に優れている。ただ、個人個人が利己的で国という意識が日本人より少ないのだと思う。このことが中国の政権が独裁的になる理由と思われる。汚職撲滅も孔子の時代からの中国人の歴史である。儒教精神が裏と表で行き渡っている。こうした国民性が国家という枠組みを強めざる得ない理由なのだと思う。あの巨大な多民族国家を上手く運営することが困難すぎるのだ。しかし、中国は変わらざる得ないと見ている。これからの日本はアメリカより中国にかかわる方がいい。
中国との関係のこれからを考えてくると沖縄の意味が見えてくる。琉球国の立ち位置である。日本と中国の間を武力ではなく、文化力を持って、自立と国家の尊厳を保った姿である。武力を持摘ことが許されないがゆえに、空手が生まれた。空手に先手無しという武道である。攻撃ではない、最後の自分を守るための武術である。国として大国の間をどうやって尊厳を守るかである。クウスではないかと思う。古酒だ。泡盛を100年を超えてつぎ足しながら、味わいを増してゆく。時間という他に代えがたい価値を酒に込める。それが国の文化力なのではない。クウスでもてなし、尊厳を保つ。これほどの美酒を作る人間であるという価値。音楽また卓越した。八重山民謡は世界最高水準の音楽だと思う。音楽を他と比べて上下はおかしいことであるが、琉球の音楽に託されたものの深さが、際立っていると思う。武力では対抗できなくとも、文化力で国力を示し、その立場を維持した。これからの日本は沖縄から学ぶところが大きいのだと思う。