明治日本の産業革命遺産
安倍首相が「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録をめぐる日韓対立に直面していた6月、登録の可否を審査する世界遺産委員会での対応に関し、韓国に一定程度歩み寄った上で、全会一致での決定を目指すよう外務省に指示していたことが分かった。採決になれば韓国の思惑通りに否決される恐れがあると判断した。複数の日本政府関係者が19日、明らかにした。(東京新聞)
安倍氏自身が韓国の主張が、一定世界から支持されると判断していたのだ。この場合、安倍氏が本当に強制労働がなかったと考えるなら、世界遺産登録を降りればいいのだ。何故、世界遺産登録にこだわったのか、3つ考えられる。まさかとは思うが、松下村塾を入れたかったということとかもしれない。これもまさかとは思うが、強制労働があったという安倍氏自身の認識と判断である。そして、たぶん本音のところは経済効果である。たいていのことはアベノミックスではないか。何故、日本の右翼の方々がこの安倍氏を支持しているのか不思議でならない。安倍氏は右翼も利用する、金権主義者という行動が目立つ。今、アメリカに従う軍事同盟強化も、経済が主眼だともいえる。台頭する中国経済圏に対抗するために、TPPで対抗したいという考えである。お金のためには、過去の歴史認識などどうでもいい人にも見える。私は、強制的に労働をさせられたと考えている。
それは、すべての日本人もそうだったのだ。私の母は名古屋の繊維工場で働いた。父は徴兵され、7年間最前線で軍務についた。結局お国のためということで、自分の人生を曲げられたのである。これは朝鮮の人たちも同じことだったのだ。兵役に就いた人もいるし、輜重輸倅とかいう、今日本の自衛隊が担おうという、後方支援には朝鮮の人が多かったと聞いたことがある。朝鮮人も日本人であったから、嫌でもそういうことになった。日本人であればお国のため、戦争に勝つために喜んで働くという人が多かったのだろう。しかし、恨み重なる支配民族のために、働かされるということであれば、この強制労働は耐え難いものがある。日本人の中には、植民地支配などなかったと歴史認識の人もいるが、世界の目は日本帝国主義に厳しい判断を下しているのだ。勝利した連合国の正義においては、韓国の説明のほうが理解しやすいと考えなければならない。
明治の産業遺産は、負の側面を多く抱えている。富国強兵の政策のために、日本の文化はゆがめられ、消滅させられたものが山ほどある。産業革命を否定するものではないが、産業遺産を保全する必要と同時に、消えていった日本の文化を見直す必要がある。それでなければ、日本人が日本という水土の中で育て上げた資質を見失うことになる。日本が何故、明治期に一気に産業革命ができたのかは、江戸時代の日本人が育て上げたものが、大きく深い文化であったからだ。産業革命を受け入れ育て上げる資質を江戸時代に培っていたからだ。そのことを含めて、明治の文明開化とはどういうものであったかを記録しておくことはとても大切である。強制労働の事実もきちっと記録しておく必要がある。それにしても、安倍氏の行為を何故右翼が批判しないのかが不思議でならない。たぶん日本の右翼の仮面の下にあるものは、お上に物申すなどとんでもない連中だという、感覚の人たちなのだろう。
人間が生きる上で最も大切なことは、強制されないということだ。自由に生きるということだ。私が自給自足で生きたいと思い、それに挑戦できることが一番の幸せである。絵を描きたいと考え、それが実践できることが最高である。何かを強制されることを最も嫌う。国から何かをしてもらおうとは考えないが、国に何かを強制的にさせられるのもまっぴらである。それは性格から来ている側面もあるのかもしれないが、国家が個人の自由に生きることを、ゆがめることはあってはならないと思っている。自由であるためにはむしろ自分の奥底に何があるのかを、考える必要がある。日本人であることを誇りに考え、日本の文化を継承しなければならないとも考えている。自分が自分らしくある根本に、日本人であるという文化があると考えている。自分を掘り下げてきて、日本の水土に行きあたったのである。その大切なものが稲作文化である。これこそ世界文化遺産ではなかろうか。