おほうとうを打つ

   


私にとって「おほうとう」は一番のご馳走である。特にカボチャのほうとうである。子供の頃お婆さんから教わったおほうとう。味は染み込んできた物で、何にも変えがたいものである。おととい、そらやさんから小麦粉が分けてもらえたのだ。待望である。杉崎さんの小麦粉を以前分けてもらったのだが、急にそらやさんの宅配先から、小麦粉のどうしてもの注文があり、私の大事に保存してあった小麦粉を、緊急に回した。その時の条件が、そらやさんの小麦粉が挽けたら、分けてもらえると言う約束だった。何故、そんなにこだわるかと言えば、他に変えがたい美味しさだからだ。杉崎さんの小麦粉も確かに美味しい。そらやさんの小麦粉も又別の美味しさがある。味で言えば、そらやさんのほうが、野生味がある。杉崎さんの粉はととのった良さがある。小麦粉も実に様々な味で。お米と同じくらい味が違う。一番美味しかったのは、甲州赤小麦で、これは記憶の中の究極の味である。

昨日は田んぼの相談があったので、5人分のほうとうを作った。粉は600グラム水は250CC。塩が20グラム。と言ってもおおよそ。料理はその場その場で違う。計るようでは美味しくない。昔は先ずは粉をふるったが、そんなことはしなくても大丈夫。粉を鉢にあけて、塩ぬるま湯を半分混ぜる。振り上げるように混ぜる。粒状になったら、残りの水を固さを見ながら加える。腕に自信があれば、水は控え目。そのほうがほうとうの特徴が出る。さらにすき挙げるように混ぜてゆく。段々に固まってきたら、軽く固めて、ビニール袋に入れる。3時間寝かす。その後は踏み延ばす。繰り返す。又寝かす。踏み延ばす。良い延び加減になったら、菊練りで空気を抜きながら丸める。丸めたらビニールに戻して、1時間。さらに踏み延ばす。このとき良い形に出来れば四角く踏んでゆく。足で延ばせる限界まで来たら、今度は棒に巻き付けて、打つ。本当にトントンと打つ。繰り返し延ばして、もう切れるというところまで延ばす。そして切る。包丁が下手なので機械を使う。

この間汁を煮ておく。先ず5人分なら、どんぶり6杯の水を沸かしながら、煮干を加える。煮干は極上品がいい。結構味に影響する。里芋、人参、カボチャ。これを煮トロケル手前まで煮る。薄口醤油、酒、味醂を1対1対1のあわせ醤油で、ちょうどより少し薄味に整える。味噌は入れない。ほうとうと言えば味噌仕立てとなるが、甲州でもそれは地域と家で違う。菜花を別に用意しておく。切った生のうどん生地をそのまま入れる。ここがほうとうのとろみの出る特徴。10分から15分だが、好きな硬さまで確かめながら煮る。うどんがほぼ煮えた頃、菜花を加える。汁が多めにどんぶりに分けたなら、「玄米卵を落す。」これは絶対に必要。昨日も1個落すのが夢だったと言う、卵談義になった。薬味のネギ、七色とうがらし。

全ておばあさんから教わった。おばあーさんは塩を捏鉢に塗り付けて、調整していた。塩を入れると固くても練りやすくなる。鶏の世話、草摘み、山菜取り、きのことり、おばあさんに随分教わった。ありがたいことである。メインのカボチャは半分の量入れた。結構美味しかった。半年取っておいた立春カボチャも充分おいしい。まだいくつか温存してある。おばあさんも冬のかぼちゃのほうとうの為に、カボチャを保存していた。菜花の苦味となかなか合う。彩りもいい。この料理の費用は農の会購入したとして一人前、166円だ。粉600グラムで390円。カボチャ150円。菜花100円。人参50円。煮干30円。あわせ醤油50円。玄米卵55円。塩など5円。最高の贅沢がこの価格である。そらやさんの小麦は、運がよければ、まだ分けてもらえるかもしれない。

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