高病原性鳥インフルエンザ
茨城県を中心とした弱毒タイプの高病原性鳥インフルエンザについて
ア 今回の発生における処理羽数は合計約578万羽で、そのうち、家畜伝染病予防法に基づく殺処分羽数は約336万羽(38農場。農場監視プログラム下の抗体陽性農場5農場を含む)、農場監視プログラム下の抗体陽性鶏の処理羽数は約242万羽(8農場)であった。
イ 感染経路究明については、10月下旬以降、茨城県下で確認された32~41例目の検査結果、疫学調査結果等について検討を行った。その結果、一部の農場では、抗体とウイルスの検出結果に不自然な面がみられた。また、分離されたウイルスを用いた鳥類への接種試験の結果、本ウイルスの感染性は鶏で高く、アイガモに対してはないこと、本ウイルスは鶏に対する抗体誘導能力が高く、かつ、抗体持続期間が比較的長いこと等が明らかになった。今後はさらに、これまでに収集した情報の分析・検討、本ウイルスの性状分析、発生農場にみられる特徴的な要因の分析(ケースコントロールスタディ)などについて、引き続き進める必要があるとされた。
以上の2点が農水省から出された。このことが事実であるなら、不正ワクチン使用が、明確である事が、読み取れる。私が知る事を補足すると、野生のウイルスは鶏への感染力を持たない。それが、弱った感染しやすい鶏などに、たまたま感染し、感染の繰り返しが起こると、10代ぐらいの連鎖で、鶏から鶏への感染力を獲得する事になる。
今回の事件では、当初より、感染力が極めて高く、人への感染すら、90人に及んでいる。(このことは改めてまとめたい)これは、野生のウイルスでは考えられない事で、なぜこういうことが起きたのか。不思議な事だ。そこで、不正ワクチン説が浮上した。
ワクチンを使いたいと言う話は、養鶏業界から、繰り返し要望が出されている。しかし、これは禁じられている。何故か。2つ推測される。メキシコのように、10年間もワクチンを使っている国がある。こういう国を、日本は汚染国として、輸入を禁じている。日本でワクチンを使えば、この論理が通用しなくなり、鶏肉の輸入によって、日本が汚染される恐れがあると、考えている。肉や卵からの感染は無い、と一方で言いながら変ではあるが、輸入禁止している。
もう一つは、ワクチンというものの安定性に問題がある。今回、不正ワクチン使用が、発端であったとしても、なぜ、ウイルスの検出が、10以上の養鶏場で起きているか。これは、ワクチンを使ったために発病した、と言う事を意味する。こんな事はありえないとしていながら、現実には起きている。発病はしたが、病状は現れていないのは、弱毒タイプのウイルスであるためだ。これが、もし、強毒タイプのウイルス株であったら、眼も当てられない事態に進展していただろう。
ワクチンは抗病性を高めるため、ウイルスを不活性化し、対象の家畜に感染させ、抗体を作る方法だ。自然界の動物では、野外毒から、感染し、発病せずこうびょせいを獲得する。自然界で起きていることを、人為的に起こそうと言う事だ。家畜を飼うということが、どんどん野外毒から遮断する方法に変わる中で、家畜その物の持つ強健性が必要なくなり、産卵性や飼料有効性などばかりが着目される。
その結果、自然界ではありえない人類にとって危険な状況が作り出された。極めてウイルスに弱い、生き物が、100万と言う単位でまとまって存在する。ここにもし、ウイルスが混入すれば、感染の連鎖が始まり、ウイルスは変異し、人への感染まで可能性が出てくる。こうして訳の分からない、恐ろしい病気を、畜産業は生み出すことになる。
私はこのことを恐れて、自然養鶏の本を書いた、鳥インフルエンザ問題が起こる前、ワクチンで病気に対応する畜産の危険を指摘していたが、今だこのことが理解されていない。確かにワクチンの有効性はある。しかし、家畜が野外と遮断しなければ生きられないほど弱くなっている中で、ワクチンで対応する方法がエスカレートして行くとしたら、最終的にはどんな事が起こるか、人類が滅亡するような手に負えない、危険な病原菌の出現に繋がるのだ。
ワクチンを一切使用しない養鶏は可能だ。私は20年間それを証明するため自然養鶏をやっている。家畜は小さく、自然に飼育できる範囲で飼うしかない。
不正ワクチンの使用問題だ。これは相当に包囲網は狭まってきた。ここで終わっていいと思う。問題は犯人探しではなく。ワクチン万能と考える事の危険が今回の事件で、充分身に沁みたはずだ。身に沁みてないか。
今回これほどの感染力を見せたウイルスが、自然養鶏を行う、放し飼いをしている養鶏場には、感染しなかった。
このことに着目して、その理由を検討する事が、次の対策であるはずだ。