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笹村 出-自給農業の記録-

中国、ロシアの共同威嚇

      2025/12/15

 

中国とロシアの爆撃機が東京に向かう共同訓練を行った。高市発言に対する威嚇行動だろう。これで、高市発言の意図がますます明らかになって来た。日本の軍備を増強したいのだ。そのためには日本の世論を軍備強化に仕向ける必要がある。思惑通りの経過をたどっている。

世論はますます、高市支持である。特に若い人たちが、反中国の強硬意見に傾いていることが、危険な気がする。中国の脅威を日本国民に実感させたいというのが、右翼政権高市氏の狙いである。狙い通りの経過。アメリカは日本に軍事費の倍増を要求している。

軍事費倍増は中国を刺激しなければ、世論を動かせないと言うのが、日米首脳会談の打ち合わせのはずだ。何故そういう推測が広がらないのかも怖い。隆一がうっかり発言したなど報道している新聞社の愚かさ。読みの浅さ。大本営の後押し報道になっている。

民主主義国家は政権の方針が選挙で支持されなければならない。そのためには、政府が世論操作を行うことが、常に行っていることと考えるべきだ。日本の軍事費倍増を世論が望むためには、中国が恐ろしいというイメージを作らなければならない。今までも、明日にでも台湾侵攻があると主張して来たのが自民党である。

高市発言が、配慮なく行われたとか、うっかり発言したとか、アメリカとの内あわえなく行われたとか、日本の報道や、野党や、政治評論家、中国研究学者は分析しているが、そんなはずがない。今の日本の世論の動きは、日米で共同で作り上げているものだ。

石垣島にミサイル基地を作らなければ、東京が危ない。こういう世論を作ろうとしているのだ。石垣島に暮らすものとしては、どうぞ東京にミサイル基地を作って下さいと言う以外に無い。東京の人たちには、ミサイル基地に暮らすことが分かるか。ミサイル基地がある場所が一番危険な場所になる。沖縄を防人の島にする、「醜い日本人」。

一番驚くことは、沖縄の最近の市長の多くが、ミサイル基地がある方が、自分の町が安全になると発言していることだ。どうしてそんな馬鹿げたことが言えるのかと思う。論理的におかしいではないか。石垣島に自衛隊基地がなければ、無視をされるだけのことだ。戦争をするなら、まず、東京のミサイル基地を攻撃する。

「日本に攻撃的武器がなければ、中国が軍事攻撃することもない。」このことを考えてみたい。中国習近平政権は台湾侵攻がないとは言えないと、脅しを行う。それは独裁政権の国内事情が言わせていることだ。経済が順調なときには、それだけで国民を引っ張って進めた。

ところが、経済が良くない。と言っても日本ほどひどい状況ではない。高度成長期が終わり、調整に入っている。安くて、優秀な労働力が大量に存在するという状態が終わろうとしていると言うことだろう。しかし、中国の潜在能力は世界一なのだから、日本のような停滞にはならないと見て良い。

日本では中国経済の悪い側面だけが強調される。それは30年という長い低迷が続く、日本の経済状況への絶望が背景にある。周りを悪く言わないと、自分の国の経済運営の失敗を認めることになるからだ。無責任政治家は経済は中国だって悪いのだから、仕方がないと言いたいのだろう。

しかし、中国の経済成長鈍化と、日本の30年の低迷、生産性の低下とは、その内容はまるで違う。日本は戦後80年が経過した。最近の30年間の日本は方向を失い、どこに向かうのか、どう頑張るのかが見えない。新しい産業は産まれない。生産性は年々低下する。それはあらゆる裾の分野にまで広がっている。

日本の問題は一般論では語れないような、日本人の停滞と見なければならない。昭和が終わる頃から日本人が変わったのだ。今の日本人はかつての日本人とはかなり違った。違う人種になったと言っても良いくらいだと思っている。良くも成ったし、劣化もした。高市の口車に乗せられる程度の人種になった。

新日本人が日本の実際的活動を行っている人たちになった。古い日本人もまだ活動をしているから、うまく社会が機能していない。稲作で言えば、農協の中枢は相変わらず古い世代の日本人で、農業企業の人たちは、新しい日本人が活動を始めている。鈴木農水大臣など、新日本人でありながら、前日本人の意図をくんで動く人だ。

こうした軋轢が、日本の稲作の基盤を分裂させている。利害が異なると言うこともあるし、新しい動きが生まれにくいと言うこともある。米の値段が高いというのは、農家や農協には有り難いことなのだ。どうやって高値を維持するかを考えるのは、当たり前のことだ。

ただし、補助金が沢山でている農業だから、国民の支持がなければ補助金はなくなる。そこで、口先では米の値段を下げるとか一応は言う。しかし、裏では何とか誤魔化して高値を維持しようと、様々な動きをして誤魔化してしまおうと考えて居る。

こういう動きはまさに前日本人のやり方である。所が、新日本人は政治的な団結がない。政治に興味がないというか、諦めているというか。ともかく政治に対して実際行動をすることがない。若い世代が何万人のデモを行うなど想像も出来ない。

政治家の中心にいる前日本人が、若い人を誘導しているのが、今の日本の政治状況なのだろう。これでは社会はまとまらない。分裂した方向に動いているから、生産性が低下して行く。農業の生産性の低さは、人間が変わったと言うことが、一番の要因とみていい。

流行語大賞の「働いて働いて」はまさに前日本人の叫びである。未だに働けば解決できると思っている。未だに勤労の美学の世代である。だから、前日本人の心には響いた。そして新日本人には、古くさい叫びに聞こえたはずだ。あまりの時代錯誤感で印象に残った。

話は本題に戻るが、新日本人の心に響いているのが、軍国主義なのだ。何故こんなことになったのかと言えば、日本の平和教育が間違ったからだ。ドイツの平和教育は、戦争加害の記憶の継承である。日本の平和教育は、戦争被害の記憶の継承である。日本人が1000万人と言われるアジアの人々を殺してしまった歴史を忘れては成らない。

この大きな違いが、例えば何故中国人が高市発言に怒り心頭になったかである。戦争被害者である中国の意識に対しての、加害の記憶が全くない日本人は怒っている。中国に養鶏指導で行ったときに、何故養鶏指導に今回来たのかの理由を説明した。

父は中国戦線で7年間従軍した。そのことを心から謝罪した。そのときの中国の方々の反応は忘れられない。10人ぐらいいた、中国、鎮江市側の受け入れ組織の方が、なんとも言えない反応をして、中国語での緊張した反応になった。そしてひそひそ話を繰り返した。その後の私に対する態度が変わった。

どれほど大きなわだかまりがあったのかと思った。それは反日教育と言うより、実際に親族に被害者がいる人たちという印象だった。しかし、その後からは、中国の養鶏の実態を見せてくれるようになった。小田原にも来てくれた。再度、中国に伺うことも出来た。

戦争被害の継承もしても良いが、戦争加害の継承がほとんどないのが日本の実態だろう。加害の記憶は辛く、厳しいものになる。思い出したくもない記憶だ。しかし、なかったことには出来ないことなのだ。この立場の違いを十分に考えないで、中国と付き合うことは出来ない。

中国とロシアの爆撃機の共同飛行は、かなり大きな意味を持つと考える。またこれが、高市氏とアメリカの予測していた筋書きと言うことになる。筋書き通り、軍事費が倍増し、日本の経済は厳しさを増すことだろう。それでも、新日本人はそれを望むはずだ。

前日本人としては、この最悪の展開に対して、心に響かないだろう警鐘を鳴らし続けるほかない。黙っていることは、賛成することになる。その基本にあるものは、堅固な自由である。聡明な民主主義である。正しく語り合うほかない。「戦争によって解決できることなどない。」ということを。

 

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