石垣島の田植えが迫ってきた。

   

 

 苗取りが終わった。10人で朝9時から12時半までだった。取った苗はそばにある川の中に置いた。川は何故か水がほとんど流れていない。以前はかなり流れていたのに、不思議なことなのだが、水位が大きく変わるのだ。

 名蔵ダムからの水の調整で、水量が変化するらしい。その調整については正確なところが分からない。今も水は止まっている。田植えでは水が無ければ本当に困る。今日もう一度川の上流を掃除しても、水が来ないようであれば、何とかしなければ大変なことになる。

 苗の状態は大きさは40センチもある。5.5葉期なのだが、分ゲツが余り出ていない。割合堅い苗でその点は良い。分ゲツがあまりないのは、ひとめぼれのためなのか、苗作りで何かかけていたことがあるかも分からない。

  苗床の土壌作りが促成のものであり、苗が充分に育たなかった可能性がある。1ヶ月前まで、慣行栽培の圃場であった場所で、急遽苗床を作った。有機の苗作りにとって、充分に育つだけの土壌では無かったと言うことになる。これは想定していたことではあるが、もう少しやってみなければ分からない。

 四週間の育苗である。3週間目の分ゲツが出始めた頃に風速30メートルの台風が来た。随分株が揺すられた。そして、土が苗床に寄せられ、波に乗って流れてくる細かな土で2センチぐらい埋まった。そして海岸に近いと言うこともあり、潮風にも大分さらされた。苗床周囲の株は塩害で下葉がある程度枯れた。

 田植え二日前に苗取りをしたのは、たんぼのみずが引く時間がまだ分からなかったからだ。土壌の様子から、全日の苗取りでは不安だった。やってみれば案外大丈夫だったのだが、用心のために二日前にした。次は全日にしても大丈夫だろう。

 3週間目のタイミングの台風と言うことで、分ゲツが抑えられたと言うことがあるかもしれない。田植えをすればそれならば回復するはずである。根が余り伸びていない。これも株の葉の様子からすると意外なことだった。だから簡単に苗を抜き取ることが出来た。

 根が少ないことについて言えば、土壌の影響のような気がする。気温が高すぎると言うことも考えられないことも無い。根が少ないという割には、葉の状態はそれほど悪くない。この辺がまだ十分には理解できていないところである。


 写真は畦際に置いた泥のまだついたままの苗である。急に水が来なくなり、根が洗えなくなった。もうドロドロになるので、急遽この分は畦際に水を堀り、そこに泥付きのまま寄せておいた。今日乾いているようなら水やりをするつもりだ。

 この分を田植えしなければならなくなると、少し面倒なことになる。この畦際に寄せた苗の量は全体の20%ぐらいである。出来ればこれはすべて補植用ということになれば、悪くないのだがこの点は植えてみなければ、分からない点だ。

 今のところ驚いたことは、病虫害が全くないと言うことだ。5,5葉期になっても葉先が枯れることが無い。小田原の苗作りでは5葉期を越えると、葉先が茶色く枯れてくることがよくある。暑い地域であるから、もう少し病虫害の影響を受けるのではないかと考えていた。

 ジャンボタニシは確かにすごい数居る。だから田んぼに水を入れたとしても草は生えない。これは驚くべきほどのものだ。水を一ヶ月入れておいて、まるで草の無い田んぼを想像できるだろうか。これが植えた苗も食べるというのだ。大苗なら大丈夫だと昔から考えてきた。

 今のところ苗床の苗は少しも食べられていない。そして、実験的に田んぼの中に2本の苗を植えたのだが、それも今のところ、完全には食べられていない。田植えをして、すぐには水を深くは出来ないと言うことらしい。すこしづつ水を入れようと思っている。

 大苗であればジャンボタニシに食べられないことが、はっきりすれば、石垣島での伝統農法の除草はジャンボタニシにお任せして問題が無い。害虫を敵としないことが、有機農業の姿だ。ジャンボタニシを駆除することなど不可能な状態なのだから、うまく共存する方法を見付けるほか無い。

 現在の所、昔から予測していたたようにジャンボタニシは私たちの大苗栽培では、食害は無いとなりそうだ。小田原でも田んぼの観察では大苗栽培では被害が無いとみてきた。稚苗田植えの機械苗では確かに影響が出る。

 ジャンボタニシ対策で大苗栽培が復活するとすれば、それはそれで悪い事ばかりでもない。イナバ方式のセルトレー苗作りであれば、大苗田植えになる。大規模農家でも取り入れることの出来る技術が確立している。イナバ方式が広がれば、一気にイネ作りが有機農業化して行く。

 これから石垣島で、有機農業のイネ作りをやるとすれば、一期作だけが良いと思う。今回の2期作目をやらして貰えることは、ずいぶんの勉強には成るが、やはり苗作りをしていても変則的な感じが否めない。暑すぎるし、土作りをする間が無い。


 有機農業で行う場合、二期作は土作りを行う間が無いから、苗作りがよほど難しいことになる。有機農業のイネ作りは一期作だけにして、二期作目に土作りを行う方が良いのではないかと思う。1月に苗作りを行い。2月に田植え。そして6月に稲刈り。7月から12月までは土作りの期間とする。


 いよいよ、8月1日が田植えである。石垣島でやる初めての田植えである。亜熱帯の真夏の炎天下、田植えをする。イネにも人間にも過酷なことである。7月30日、苗取りを行い、5,5葉期の苗である。大きさとしては良いのだが、分ゲツ不足の弱い苗である。

 これから田植えをして、次々に新しい事象に直面することだろう。ともかく観察である。イネから学ぶほか無い。熱帯での有機農業でのイネ作り技術を確立するためには10年必要である。身体が元気で10年イネ作りを続けることが許されるのであれば、取り組んでみたいものだ。

 田んぼが借りられるかどうか。この後起こるすべてのことを受け入れるほか無い。どういうことが待っているのかは分からないが、ともかく運命に従おうと思う。


 

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