北朝鮮サッカーのラフプレー

中国で行われたアジア大会で、男子サッカーの準々決勝で日本対北朝鮮戦が行われた。北朝鮮の国際試合出場は久しぶりのことだ。日本チームは2対1でかろうじて勝利した。この試合をテレビ観戦した。同点で迎えた最終盤北朝鮮ゴール前での北朝鮮の微妙な反則で、PKをもらった日本が得点を入れて逃げ切った。
確かにこのPK判定は何とも言えないものだった。よく分からなかったが、ビデオ判定が行われているように見えたので、判定は覆されるものではないだろう。アジア大会は審判のレベルが低かったように見えた。判定がおかしいと思える場面が多かった。これはレッドカードではないかというような反則が見逃されたりした。
それでもスポーツは審判によって一度下された判定は、受け入れると言うことが前提で出来ている。どうしてもおかしいと考えた場合は、スポーツ仲裁裁判所に申し出るほかない。それでもたいていの場合は納得の行く結果は出ない事の方が多い。
北朝鮮は試合が終わってから、審判に抗議して詰め寄った。気持ちは分かる。分かるが暴力行為寸前と言う抗議だった。抗議をするのであれば、監督火キャプテンができるだけ冷静に行うべきだ。みんなで押しかけて脅かすような行為はスポーツではない。
試合全体で見ると、どちらが勝利してもおかしくない試合だと見えた。どうも日本チームはナショナルチームと言うのではなかったらしい。U-22と年齢的にも選手の選択でも、負けても仕方がない範囲で選ばれているように見えた。U-24と言うのがアジア大会の既定だ。
日本のサッカー協会は、むしろこの後にある、ワールドカップ2次予選を重視していると言われている。予選の前に対戦して相手を知ることが重要である。まず相手の戦力を知り、対策を練る。しかも、日本選手の手の内は見せないで置いた方が良いという判断だったのだろう。
大学選手に国際試合を経験させ、成長させるという考えもある。やはり大きな国際大会に出場することは選手の成長には重要なことだ。アジア大会に出た選手が、成長して次には日本代表に選ばれる選手になる可能性は高い。全体にパス回しが上手い選手が多い点で感心した。回していてもなかなか球を捕られない技術がある。
サッカーワールドカップの今度二次予選で北朝鮮とホームとアウエーで二試合戦う。ワールドカップはサッカーで最も重要な大会である。何しろオリンピックにサッカーがなかなか入らなかったのは、ワールドカップを尊重していたからだ。その頃日本は到底ワールドカップに出るどころではなかった。
サッカー好きの友人が、生きている間にワールドカップに出場した日本のチームをみるのが夢だ、と言っていたほどなのだ。勝利することを願うどころか、出ること自体が夢のようだったのだ。1998年のフランス大会 でついに初出場がかなうことになった。
フランス大会の次の2002年の日韓同時開催が決まっていたので、どうしても出場しなければ、同時開催であるし面目がない。韓国は出たこともない日本が開催というのはおかしいというので、同時開催を申し出てほぼ日本単独開催が決まっていたところで、覆した。
出たこともない日本が開催というおかしなことにならない、ギリギリの所での、ついにワールドカップ出場を達成したことだった。出たこともない国が開催国というのではどうにも格好がつかないという所だった。韓国のサッカーは昔から強くて、ワールドカップの常連だったのだ。
アジア大会はワールドカップを想定しての若手選手起用に見える。その結果日本チームは次の試合の韓国との準決勝で負けたのだから、日本チームがそれほどは強くなかったのも事実だろう。スポーツは勝ったり負けたりするのが当たり前だ。
この試合の北朝鮮の選手があまりに乱暴だったというので、日本はFIFAに提訴した。一ヶ月経過して、今のところ北朝鮮へ罰則はない。つまりあの程度の乱暴は許容範囲と言うことになる。日本のいちゃもんがおかしいというのが、世界のサッカーの判断だったのだ。
日本が提訴した理由は、ワールドカップ予選に北朝鮮の選手が出場停止になったり、北朝鮮でのホーム試合が中止にされたりすることが狙いだったのだろう。だとすると、それは上手くゆかなかったと言うことになる。確かに微妙な判定が原因である。許容範囲と言うこともあり得る。
提訴の時にはあれほど騒いだ日本サッカー界であるのだ。提訴が退けられたとしたら、提訴がゆきすぎであったという反省はないのだろうか。何しろアジア大会をそれほど重要視していなかった日本である。そのアジア大会を利用しようというのでは、見苦しい感じもある。
あのとき韓国も女子サッカーでおかしな判定があったとして、北朝鮮のサッカーが乱暴だと批判していると盛んに言われていたが、韓国は提訴はしなかった。朝鮮の南北は停戦状態なのだ。スポーツの試合が国際問題に発展しかねない。
ワールドカップ日本代表はB組でシリア、北朝鮮、ミャンマーと対戦する。どの対戦国も国内の情勢が不安定なため、日本のアウェー戦の開催地が問題になる。11月21日のアウェー・シリア戦が中立地のサウジアラビアで行われることが明らかになった。
何故か、二次予選では三つの軍事政権国家が対戦相手だ。そして、試合は通常ホームアンドアウエーで2試合行われる。不安定な危険のある独裁国家に行かなければならない。シリアにはイスラエルの空爆がある。北朝鮮で行われる日本戦は安心できる環境で行われるか不安が大きい。
以前開催国食事が怪しくて、選手が試合当日下痢をいたという国もあった。だから選手団は食料をすべて持ち込み、日本から行った料理人が作るらしい。アウエーの試合はあらゆる注意が必要なのだ。確かブラジルではチームが負けたというので2人が自殺して、2人が失神して死んでしまうと言うことすらあった。
それほど熱狂的なサッカー国ブラジルが過去最高の五回優勝である。ヨーロッパが12回。南米が10回と優勝を分け合っている。アジア大会の審判のレベルが低いの致し方ないのかも知れない。アジア全体が、サッカーの審判をそこまで深刻にはとらえていない。世界では誤信が問題になり殺される事件は複数ある。
結局の所文化の違いなのだろう。そもそも昔は北朝鮮はサッカーが強く、日本の植民地時代には、高校選手権のような試合で北朝鮮の高校が優勝している。全日本選手権でも何度も朝鮮のチームが優勝をしている。朝鮮はサッカーに向いている文化だろう。