ひこばえ農法と自給農業

   


 高刈りした株からはすぐに小さな穂が出てきた。普通に刈った株からもすぐに穂が出てくる。これではひこばえ農法にはならない。野鳥の餌になるという意味では良いのだろうが、農業という意味ではきちっと苗を出させて、そろって成長させなければならない。

 ひこばえ農法はスマトラでは2年で7回の収穫になるらしい。つまり、どんどんずれて行くようだ。石垣島では成功すれば、2年6回の収穫になる。4つの田んぼがあれば、毎月どこかの田んぼで稲刈りと言うことになる。これはずいぶんの作業分散になる。

 7月1日に収穫したとして、再生して次の収穫は120日後であれば4ヶ月後の11月1日。ここからは気温が下がるので、たぶん5ヶ月とみて、4月1日となる。3回目が8月1日。4回目が12月1日。5回目が5月1日。6回目が9月1日。

一年中、毎月どこかの田んぼで稲刈りがあると言う状態になる。この状態は、自給農業には絶好の農法になる。のぼたん農園には10枚田んぼがあり、毎月一番適切な田んぼの稲刈りをしてゆく。稲刈りが毎月あると言うことはコロガシが毎月あることになる。水牛の代掻きもやろうと思えば、毎月どこかで出来る。

 のぼたん農園は自給の体験農場である。のぼたん農園に来てもらい、田んぼの自給体験をしてもらうのが大きな目標である。今はその最初の年で、始めて田んぼをやる人達が1年目の体験をしている。徐々に外部から体験に来てもらえるようにしたい。

 確かに自分の食べるお米を食べるために、のぼたん農園の活動に参加しているのだが、しばらくの間は自分が食べると言うことよりも、活動を伝えて広げてゆくと言うことが、一番の目的になる。一度でも参加して貰った人にはお米を差し上げて食べてもらいたい。

 1週間のぼたん農園で体験すれば、稲作の一年の流れを体験することが可能になる。10の田んぼで生育の段階が異なる稲を見ることが出来る。そして、体験参加者はのぼたん農園の新米を食べることが出来る。体験参加者は作業をきちっとこなしてもらう代わりに参加料は実費にする。

 宿泊は近くの方が格安で宿泊させてくれると言うことになった。食事は自分で自炊できるようにしておけば、ほとんどの人に無理なく自給体験が可能になるのではないだろうか。のぼたん農園で自給を体験して、今度は石垣島で自給農業を始めて貰えれば、最高である。

 のぼたん農園は利益を出すための事業ではない。地代が払えてまわって行きさえすれば、自給農業の体験農場は目的が達成される。現在の参加者10グループはのぼたん農園で自給しながら、参加者の手助けをして自給農業を伝える。参加者はそのお礼に作業を手伝って行く。

 機械小屋を準備中である。この小屋を石垣島で有機農業をやる人の協働作業場にしたいと考えている。籾すりをしたい人、精米をしたい人。小さな農業をする人の、小さなライスセンターである。販売も徐々に模索してゆきたいと考えている。

 のぼたん農園参加者は毎月新米を食べることになり、保存という心配がなくなる。石垣島では、気温湿度が極めて高く保存がかなり難しい。常に新しいお米を食べるという方法であれば、保存の不安が軽減される。小さな籾保存庫があれば充分だろう。

 ひこばえ農法で一人で自給するのであれば、あくまで計算上のことだが、10㎡ぐらいの小さな田んぼを4枚を耕作して、毎月稲刈りをするというのが一番省力的と言うことになる。40㎡で毎月5㎏のお米が収穫可能になる。これだけ小さければ、水も随分少なくて済む。

 これが毎月10㎏お米を買うという家なら、20㎡の田んぼが4枚あれば良い。80㎡である。自給農業は小さければ小さいほどよい。しかもそれが、共同の田んぼであれば労力は一人農業の半分でということになる。200㎡の田んぼを4枚10家族で行えば、随分楽な自給農業になる。

 のぼたん農園では10米の田んぼがあるから、ここで25家族分の自給が出来ることになる。あるいは10家族が自給して、後は希望者に販売するというのも良いだろう。そうすればそれが運営費になる。やれる人が働き、必要な人が食べる。この究極の目標に近づけるかも知れない。

 田んぼのまわりの湿り気のある畦の畑には、大豆畑が100㎡あれば良い。大豆が出来れば、味噌醤油が自給できる。100坪の自給のためにはまだ150㎡がある。これが果樹とお茶と野菜の畑と言うことになる。今後は畑の整備と言うことになる。

 この150㎡を出来れば10家族でまとめれば、1500㎡の果樹園と常備野菜畑に出来る。玉ねぎ、ジャガイモ、里芋、サツマイモ、カボチャ、大豆の裏作には麦が良い。防風林にはお茶が良いだろう。溜め池のミズオオバコや水ワラビも野菜になる。

 もしひこばえ農法が石垣島で実現すれば、石垣島が自給農業の島として世界にアピールが出来る。1家族100坪一日1時間の自給農業が実現できる。これは台風の来る石垣島では食料の安定供給と言うことにも成る。自給の島石垣島の新しい魅力に出来るかも知れない。

 このことを想像するとわくわくしてくる。ちむどんどんしてくる。なんとしても成功させるつもりだ。新しい冒険の方角が定まってきた。サリブ農法である。もうひとつがアカウキクサによる水草緑肥農法である。この2つの農法を完成させることが、のぼたん農園の冒険目標になる。

 スマトラ島では2年すると代掻きをしていると言うことだ。たぶん雑草の問題が起こるのではないか。除草剤を使わないのだから、雑草対策も考えてゆかなければならない。田んぼの土壌がどのように変化するかを見極めながら、良い土壌に育ててゆくように考えなければならない。

 現在、5枚の田んぼでひこばえ農法を比較しながら観察している。様々なやり方をしている。0番と1番田んぼは三週間して3から5㎝で切り戻した。0番はほぼ水を入れ続けている。1番は一週間だけ乾かした。2番田んぼは一週間で深く刈り戻した。そして、水は二週間程度乾かし気味にした。

 3番田んぼは稲刈り一週間後に深く切り戻して、二週間乾かした。4番田んぼは水を張り続けている。ここでは一部手前を稲刈りの時に高刈りにして、稲刈り後一週間で深く刈り戻した。まだ経過観察で、興味津々で観察している。

 この間アカウキクサは目立たなくなった。水を入れたならば、又戻るのだろうか。アカウキクサの生育条件はなかなか難しい。水草緑肥も上手く繁殖させるためには様々な工夫が必要なようだ。まだ冒険は始まったばかりだ。目標の五年間はまだ4年半ある。

 - 楽観農園