ソビエト崩壊後30年で起きたウクライナ侵攻

ロシアが無謀な戦争を始めた原因は、ロシア人一般が世界情勢に対してあまりに視野が狭いということにある。プーチンがあまりに長く政権を支配したために、社会のなかに情報のゆがみを生んだのだろう。プーチンはソ連崩壊後のロシア経済を立て直した。生活をすくってくれたという国民全体に崇拝するような空気がうまれた。
長いソビエト連邦の思想統制の歴史から来る、未成熟の民主主義の結果ではないか。ロシア人の大半がウクライナで行っている残虐行為を想像できないでいる。ウクライナの兄弟を救済するために、ロシア軍はウクライナに向かった。そして歓迎されていると、信じている人の方が多いのだ。
プーチンの出現によって貧困の克服が行われた。1990年代後半の実質GDPはソ連崩壊直前の水準の6割程度まで落ち込んだ。一 人当たり名目GDPも一時2千米ドルを下回り、かつての東欧を支配したソビエト連邦としての超大国としての力を失速させた。
原因は市場経済への転換が遅れたためである。効率の悪い経済体制が続いたのだ。そこにプーチンと連携した「オリガルヒ」 と呼ばれるような富豪になる人々が、ロシア経済を立て直して行く。プーチンによって、一部に富が集められ強権的な経済運営が行われた。
プーチン政権の下で、実質経済成長率は5年平均で5%近くにまで達した。2005年にはソ連崩壊時の実質GDPの水準を 回復、その後に世界金融危機を経験しながらも「繁栄の10年」を謳歌した。 それがプーチン独裁への道でもあった。
しかし直近の10年間は年平均成長率が1%程度に落ち込み、為替レートの減価 もあって米ドル建ての一人当たりGDPが目減りするなど、ロシア景気は失速が明らかとなる。原油価格の低迷に加えて、欧米からの経済制裁がロシア経済の成長を止めた。
ロシアの経済は原油価格の低迷に加えて、2014年のクリミ ア危機以降は欧米から経済制裁を受けており、経済は苦境にあえいでいる。 そのために貿易と金融の両面で「東方シフト」を強めている。同じく西側から経済制裁を受ける中国との経済連携が生じてい る。
ロシア中銀の外貨準備には、金や人民元が占める割合が上昇している。2014年のクリミア危機に端を発した欧米からの経済制裁より前からこうした動きは あったが、経済制裁がさらに拍車をかけたといえる。中国とだけ接近する危険が生じていた。
ロシアの人々にしてみれば、ロシア経済の停滞は西側の不当な経済制裁にあると考えて当然ということになる。ロシア国民全体に広がった、西側諸国の不当な圧迫が、ウクライナにNATO加盟を望むような裏切り者のゼレンスキー大統領が登場し、露系住民を弾圧していると信じる根拠が生まれた。
このロシア国内の西側諸国への敵愾心を、ウクライナもEUもアメリカも読み違えていた。クリミアや親ロシア派の地域に対して、武力では無く平和交渉による民主主義的な解決を計るべきだったのだ。武力による解決を目指した失敗が今回のロシアのウクライナ侵攻を許すことになった。
翻って日本のことを考えれば、中国をにらんでの、琉球列島のミサイル基地の建設も同じことである。中国に対しての武力的対決が何も生み出さないどころか、むしろ中国の矛先を日本に向けるだけのことになる。ロシアが武力侵攻したことだけを見て、だから軍事力を強化しなければと言うことは逆効果なのだ。
日米安保条約も同様である。アメリカに依存しすぎることは中国を仮想敵国にすることになり、平和交渉を行えなくしている。アメリカ依存を止めて、むしろ原爆を持たない弱い国連合を作るべきだ。軍事力の無い国も手を携えれば決して弱いものでなくなる。
プーチンは常々、日本に北方4島を返すわけにはいかないと言うことを主張していた。返せばそこに自衛隊基地が作られ、アメリカ軍が駐屯し、ロシアを東西から攻撃すると考えていた。結局の所、領土欲の奥には軍事バランスが存在する。独裁者は常に不安を抱えている。
中国の習近平も同じである。貧困を解決して独裁者になった。その信頼を維持するためには、経済成長が必要である。それが停滞したときには目を外部に向けようとするだろう。同胞の台湾を救済できないのは、アメリカの圧力であり、日本であると。
自分の安全を考えて、台湾有事を考えているのだ。独裁者としての基盤を強化するためには、台湾をこのままにはしておけないと思い続けている。そして、その無謀な夢は、ある日悪夢が現実となる日が来る。その前に平和的な解決を目指すことだけが戦争にならない道だ。
日本はまず尖閣を国際裁判所にその所有を決める裁判を提案することだ。戦争の口実をまず立つことが、日本の安全保障である。石原慎太郎が、わざわざ東京都知事の時に、アメリカで尖閣諸島を東京都が購入すると記者会見をした理由を考えるべきだ。
中国と事を起すためだ。その軍国主義的態勢を作ろうとしていたのだ。日本にもそういう軍国主義者がいくらでもいる。安倍晋太郎はその一人だ。石垣の中山市長もその一人だ。ミサイル先制攻撃をしたいと本気で思っているような人間が、日本にもいるのだ。
日本でもプーチンを生み出す可能性はある。
日本でもプーチンを生み出す可能性はある。