稲の種取りについて

   

種取りの予定の田んぼ、左半分が一本植。1本植の方がくっきりと緑が残っている。4本植えは実りが早い。たぶん1本植の根にまだ活力があるのではないか。何故こういう違いが起こるかが稲作の面白いところだ。これを見ても1本植の方が良い稲作になるのかと思える。左側から100株を種として残すつもりだ。種取りは当然だが、1本植でないとできない。

稲作では種取りを毎年してきた。今年もするつもりだ。しかし種取りと言っても今までのやり方はいい加減なのものだったとことを痛感している。昨年は種籾の更新をした。サトジマンなのに背丈が110センチ以上になるので、不安が生じた。倒伏した一つの原因ではないか思われた。出穂の時期や分げつ数にも乱れがあるのを感じた。サトジマンは良い品種である。この品種を長く作り続けたいと考えている。有機農業で作りやすく、畝取りができる。その上おいしくなる特性がある。味は好みだから、私の好みの味の品種と考えた方が良いのかもしれないが。ある程度のさっぱり感が好きなのだ。昨年種取りは種取り用の田んぼで、心してやらなければだめという事が分かった。サトジマンは90㎝の品種と言われているが、それは間違いだと今は考えている。慣行農法でのサトジマンは90㎝という事だ。

稲は遺伝的変化が起こりやすい作物のようだ。背の高くなる株。分げつしない株。小さい穂の株。粒張りのそろわない株。出穂が早まる株など様々である。種取りは普通の株で行いたいと思う。分げつしない株の種を種取りしてしまえば、分げつしない株が一気に増えることになる。8キロの種もみを使う。おおよそ100株の稲から採ることになる。100株のうち1株に分げつしない株があれば、1%の稲は分げつをしない株になりかねない。これは大打撃だ。現在分げつが10以下の株は0.1%ぐらいか。分げつの事だけではない。1穂が100粒を超えないような株も困る。普通120粒ぐらいになっている。これは幼穂形成期に根の活力が最高の状態になっている事も作用している。幼穂には120粒は超えるお米になる資質がある。ところが幼保が形成するころに十分に根の活力がないと、あるいは肥料がないと、80粒ぐらいまでで後は退化してしまう。この退化してしまう傾向や分げつしない事が肥料の問題だけなら良いのだが、稲の遺伝的な性格であって、それが種籾に含まれることも困る。

1本苗でも25分げつし、120粒の大きな穂を20以上つけてくれる株を選抜する。それでいて、味もそこそこであれば願ったりかなったりだ。病気に強いという事も重要だから、病気が出たような株は用心深く種籾から外さなければならない。粒張りが良いという事も必要である。100粒重量がどの位になるかも測定の必要がある。今年は、種取り用の田んぼで種を取る。1本植である。確かに分げつの少ない株もある。これが一つでも混ざれば大変なことになる。手刈り、手で脱穀して、種もみ分だけ別扱いしてみたい。

来年は田んぼ全体を1本植を中心にしてみたい。かなり地力が出てきたようで、1本植でも25分げつが取れるようになってきた。1本植の方がいくらか背丈が低くなる。出穂も数日遅くなる。色が浅くなるのも遅い。3~5日間ぐらい差があるように見える。1本植の方の方が下葉枯れも少なく見える。出穂のばらつきにも、植え付け本数の影響が出るようだ。その意味では水口には多く植えるというのは一理ある。1本植の方が種取りがしやすい。2本植えてあれば、どちらかの株に遺伝的な偏りがあるが、見た目で分からなくなっている場合がある。当然種取りするなら1本植でなければならない。何年も種取りを継続していたので、品種特性が揺らいだのはここにも原因があったのだと思う。他の品種からも距離がある場所が良い。苗床だった場所もダメだ。よその田んぼの苗も作っているので、他の品種が混ざる可能性がある。

今年は意識して10番田んぼでは半分は1本植にしている。そこから良い株を100株選ぼう。それで何キロのお米になるかを計れば、一粒の種から、何グラムのお米になるのかが正確に確認できる。これを毎年確認すれば、その年のお米の出来が良く見えることになる。ではどういう100株を選ぶべきかと言えば、25分げつ以上の株。背丈の普通の株。止葉の大きく葉巾があり、葉の厚みのある株。穂の120粒の株。無効分げつのない株。病気のない株。出来れば出穂の遅い株。欲張れば切りがないが、種籾はそれだけ力を入れて、選抜した方が当然良い稲作が継続しやすくなる。しかし、気お付けなくてはならないのは、良いもの良いものと選抜するのも危ういことになる。特殊な素晴らしさより、普通に可能性を安定して発揮している株を選びたい。

 

 

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