神奈川県有機農業推進計画
神奈川県にも有機農業推進計画がある。あることはあるが、うまく推進が進んでいるは思えない。少なくとも私が有機農業を行っている小田原地域では、停滞している。当然老齢化している。有機農業を考える前に、神奈川県の農業をどのように推進できるのかが見えないことに原因がある。このままではさらに老齢化が進み、充実した農業が減少し、耕作放棄地が増加し、農地が減少し、農業従事者が減少し、衰退して行くに違いない。その衰退を食い止めるための唯一の方策は、自給農業への転換である。自給農業とは第2種兼業農家とも違うものである。農業生産物の販売を行わない農業者である。これは従来の農業者の概念から外れる。現状では農地の利用も出来ない一般の市民である。これを市民農園ではなく、自給農民ととらえ、神奈川県の農業の推進計画の柱にする必要がある。
神奈川県と言う地域は、現在政府の目指している大規模農業には不向きな地域である。1農家3から4haの農地の確保は不可能である。TPP交渉に向けて、政府は様々な農業振興策を取るだろう。そうした方策はすべて国際競争力のある農業へ向けてである。小さくても地産地消の効率性のある農業と言う神奈川県農業の特徴は、競争力を失うことになる。北海道のような地域や、東北の米作地帯が大型農業に向いているだろう。国際競争力のある地域を育てる政府の方針に従い、補助金をもらいながら、大型機械農業を、安い外国人労働者を投入しておかなわれる。そのような時代を考えておく必要がある。その農業政策も成功するとは思えないが、補助金だけは出されることになる。小麦を有機農業で作っているが、二宮で行う製粉代程度で輸入小麦は売られている。転作奨励金をもらっている有機小麦はさして変わらない格安価格で売られている。神奈川県の補助金のない小麦では到底太刀打ちが出来ない。しかし、地場の小麦粉を使ったパンやうどんという製品になれば、競争力が生まれる。まして自分で作りたいという気持ちは、多くの人にある。
神奈川県の農業は都市近郊であるという地域の特性を生かして、自給農業を考える以外、成立しない可能性が高まる。農地を守ることが都市近郊の農業の重要な役割である。好ましい住環境と調和した農業と言うことであれば、有機農業の推進である。環境保全と地産地消を理念として、神奈川の農業を再編成する。1、農業地区割を農業者住宅の考えを含めて、抜本的見直しをする。2、農地法を実情に合わせ改正する。転用の期待感を無くす。3、自給農業特区を作る。4、農業者の規定を変える。5、農業委員会制度の見直しを行う。6、農業者里親制度を作る。7、各市町村ごとの自給率の達成目標を立てる。8、一地域一農産物の地域特産品制度をつくる。9、地域の農産物が優先的に学校給食で使われるようにする。10、すべての農地に所有者、耕作者、農業方法の表示を行う。11、地域ごと、作物ごとの、有機農業技術の冊子を作る。
自給農業は、価格競争のない農産物である。家族が食べるものを作ることは、地域に根差して暮らすということになる。農の会で20年を越えて試みてきた活動は、それなりの成果を上げてきている。田んぼ、大豆、小麦、お茶、果樹、と延べ500名に及ぶ参加者が居る。最近の傾向は、自給的農業をやりながら、東京まで通勤すると言う人が居ることである。新しい地域形成にも役立つことだ。自給農業地域では、第3者機関が耕作放棄地を買い取り、農地1反に30坪の家の建築は認める。自給地域が合理的に形成されるように、その農業の義務的行為を条件として付ける。農地管理には地域の里親さんが、十分に協力するとともに、厳しい指導を行う。条件を逸脱した時には農地の返還をしなければならない。いずれにしても推進計画を立てる前に、現状の正確な把握である。そしてその背景にある潮流の把握である。