TPPを抜けられるか。
野田首相はTPP交渉に参加することを世界に約束をした。参議院での答弁では、交渉には参加すると言ったが、TPPに参加するとは言って居ない。日本にとって大きく不利益なものがあるなら、日本は参加はしない。こういうことを発言をしている。しかし、アメリカの発表では、野田首相があらゆる内容をテーブルに乗せる約束したとしている。正式には、取り消しを要求しないのだから、そう約束したと見える。一応言わなかったことにしてもらったようだが、大変な事態になった。もうTPPから降りることは、相当の理由がなければできない。降りるとすれば、世界からつまはじきにされる覚悟が必要な所まで、進んでしまった。今後参加交渉を進めれば進めるほど、アメリカの厳しい要求にさらされる。アメリカは怪我をした巨象である。檻の中に居る時はそれで良いが、外に出て暴れ出したら大変なことになる。
以前から何度か書いているが、アメリカと経済連携を進めている韓国社会の実態をよく見てみることだ。韓国の世界企業は確かに躍進をしている。企業を各分野1社にした。自動車は現代一つに統合した。電気会社はサムスン一つに統合した。そうして、国際競争力をつけた。これは日本の農業に言われていることに似ている。確かに効率は上がり、一見素晴らしい。しかし、韓国国内の格差は今や大変なことになり始めている。当然のことで、効率が良くなるということは、数の減少した大企業にとって有能でない人間が要らなくなる。いらない人間の行き場が無くなっている。それは、資源のない、小さな条件の悪い国がアメリカと対等に戦う、必然である。熾烈な進学競争。就職競争。今や韓国では、アメリカでのキャリアを競う国に成っている。すさましい競争社会が一足先きに生まれている。それは北朝鮮と対峙する国として、止むえない選択なのかもしれない。韓国という文化の深い、儒教の国がアメリカ化を成り始めている。日本はそれで良いのかということを考えるべきだ。
自由競争の考え方は、思想としては間違いではない。ただし、農業は基礎条件が違う競争である。その土地に根差した、自然条件が絶対的な前提になる、食糧生産の自由競争がどんな姿なのか、公平な競争とはどのようなものかを考える必要がある。日本国内でも、山間部と平野部では、生産効率が違う。山間部を環境維持という名目で、補助をしている。全くの制約のない競争を行うことになれば、作物によって勝つ国は決まっている。自然条件もその国の持つ、石油のような資源と同じである。食糧生産の自由競争とは何を意味するのか、国際的な論議が必要である。本来食糧の自由競争はハンデ戦のようなものだ。そうでなければオッズが決まらない。そのひとつが関税である。食糧生産では関税と自由競争とは矛盾しない。希少金属を中国が独占し、先端技術で中国だけが有利な競争になった場合でも、アメリカは自由競争を言うだろうか。
TPP交渉をいつでも抜ける覚悟で。早急にアセアン+3を進めるべきだ。韓国や、中国も、アメリカに対抗する意味で、交渉のテーブルに着く可能性はある。先日は、日本との協定を進める方向を表明している。そうしてアメリカをけん制をする。日本にはアジアの日本と言う、正当な看板がある。アジアの安定こそ日本の安定である。アジアが不安定になるという理由なら、TPP交渉を抜ける正当な理由が出来る。特に食糧生産と言うことでは、これからの世界は中国、インドを抜きに考えられない。食糧は後5年すれば、足りなくなってゆく。石油や希少金属と近い感覚が生まれる。その時こそ、食糧の独占を許してはならない。日本は、農業をしっかりと維持しておくべきだ。国際競争力よりも、日本としての充分の努力を行う。質の高い農業者の育成。やりたい者が充分に展開できる環境の整備。これ以上の農地や農業者の減少は、食い止めなければならない。