稲の生育ステージと水管理
稲の生育の段階には、大きく分けて3段階ある。1、「栄養成長期」、種が蒔かれてから、いちばん分ゲツが多くなる時期まで。2、次が「生殖成長期」で穂のもとができてから出穂・開花までの時期である。3、そして最後が「登熟期」受粉した花がお米になるまでである。この生育の段階で、水管理を変えて行く。種が蒔かれて発芽をする頃は水はまだ少なくて良い。徐々に川辺に水が増してきて、気温も上昇する。湿度や気温に反応して発芽し、生育を始める。水辺は徐々に水かさを増して、稲は葉の数草たけを延ばし、分げつを増やしてゆく。問題は栄養成長に入るタイミングである。小さな穂を形成するように、水を止め、土壌がひび割れるほど乾かす中干しの技術。稲の生育にどういう意味があるのだろうか。穂が茎から出て出穂、開花。この時期以降が一番水が必要とされている。そして登熟期に入る頃、川の水かさも深い時期になるだろう。
幼穂形成期前に、水を落とすと言う、中干しの技術の意味が理解できない。生殖成長に切り替える刺激を与える。あるいは土壌を乾かすことで窒素分を発現させる。土壌を乾かし断根して根の生育の形を変化させる。ひび割れることで酸素が補給される。土壌の改善になる。とか色々の根拠が言われるが、今一つ理解できないので行わない。
そして花が咲き徐々に実が登熟して行く。この時期は徐々に川の水位が下がり始め、間断潅水状態に入る。登熟期の間断潅水が、水管理の中でも重要なやり取りになる。土が水で飽和状態ではあるが、水は引いた状態、この時間を徐々に増やしてゆく。登熟期後半に入れば、土が乾きある程度ひび割れ白くなることがあっても構わない。水を入れておく時間も徐々に短くして、走り水潅水を行う。この時期台風や長雨にも備えなければならない。倒伏を避けるためである。台風の来襲を見ながら田んぼを固めて行く事もしなければならない。穂が重くなるに従い田面てを固めて行く。雨が多くなる時期でもあるので、雨によって固められない場合も多いので、予測をしながら水を切って行く。現在は、登熟前期だからまだ完全には水は切れない。9月に入れば徐々に乾かす所まで進められる。登熟期の水の減らしかたは、いかに根を健全な状態で長く保つかが目的である。水が停滞することで嫌気的な状態になり、根が早く枯れて行くことを止めることである。
酸素を十分に含んだ水が根の周辺で動いている状態を保つことが望ましい。間断潅水と言うことだが、この水の入れ方は、どの段階でも望ましいやり方ではある。しかし、舟原田んぼのような粘土分のない土壌では、又棚田の為の水漏れが多くて安定しない田んぼでは、容易に間断潅水に入ることが出来ない。そこで、土壌が安定するまでの登熟期前半までの段階は、深水管理を基本として管理を行う。それは稲の生育の問題もあるが、ヒエの抑草の目的が大きい。今年はヒエの種が完全になくなったのか、一本も出ることが無かった。ヒエの種が無くなったのであれば、前半土が露出することを恐れず、分げつを取る浅水管理も取り入れることが出来るかもしれない。又、試みとして行う、冬季湛水、又は早期湛水を行う場合は、初期のアミミドロの発生を抑える方法として、初期の浅水と、早めの中干しの組み合わせも考えておく必要があるだろう。
繰り返すほど田んぼごとの個性が見えてくる。3枚に分かれた田んぼですら、土壌の性格が異なる。田んぼが面白いのは、他所の話が通用しないからである。舟原田んぼのやり方も、他では通用しないということ。来年度の課題として、緑肥を止める。その代わり藁の田んぼにおける堆肥化を行い、腐植を増やす。腐植量を増やすためには、できる限り多くの堆肥づくりを行い田んぼに戻してゆく。省力化の為にも田んぼで堆肥を作りたい。そして、どの段階で湛水を始めるのかを見極めることが必要になる。3月からにするか。2月からにするか。春水田んぼである。秋に田んぼは一度耕運して置く。場合によってはもう一度。耕す事に邪魔にならないように藁堆肥を作る場所を考える。