こたつ机を作る

   


やっていることが、全部趣味だと言われたら、まったくその通りである。描いている絵を「良い御趣味ですね。」とか言われるのは日常のこと。収入に繋がるものを仕事とすれば、苦行の代表のような千日回峰行だって良い御趣味と言えばその通りである。仕事以外は見向きもしない時代の風潮だろう。その中でも特段これが趣味と言う訳にもいかないのだが、木工は気分の上では趣味中の趣味と言っても良い。趣味らしく技術があるとか、道具を揃えているとかいうこともないのだけれど、やりたいという気持ちは、いつでもある。しかもやっていてつらいということが全くない。この辺が趣味らしい所なのだろう。悩むようなことがない。工夫をしてもっと良くしてやろうぐらいだ。しかし、趣味と言うのはよほど時間がなくては取りかかれないものでもある。趣味的気分が強いだけに、却って始められない。それでも年に1つ位はどうしても始めてしまう。

この暑い時期に、何故炬燵を作ることになったかと言えば、猫のせいだろう。猫が炬燵の中が好きで一年中もぐっている。それで炬燵が一年中置かれている。見るだけで暑苦しい。こたつの下にだけ畳があった。その畳を私のベットにしようと猫から取ってしまった。30年前東京で買った、安売りで1万円のベットがきしむようになったのだ。まだ使えるのでそれを直した。その時、畳式にした訳だ。そこで、猫の炬燵も再建することになった。ニトリに見に行くと、ちゃんと炬燵もこの時期売っていた。こたつ式テーブルと言うことである。天板の下にテーブルがある。夏は座り机そのものである。ニトリには790円の水彩額を買いに行った。前に一つ買って使えるので、後4つ買うつもりで出かけた。マットまで4つ窓に切ってある。あれを画材屋さんでお願いしたら、マットだけでその値段ではないか。ついでにこたつを見てきた。天板にはケヤキのすごいやつが行きどころがなく何枚も寝かせてある。しめしめである。

机は10台は作った。現在も4つは使っている。欅が好きなのだ。欅に触っていると安心する。マザ・ツリーと言うものがあるらしい。自分の守護神のような木だそうだ。その木のかけらを持っていると、何かが良いらしい。迷信は嫌いだから、かけらに頼ったことはないが、子供のころから欅の大木を見ると抱きついていた。すごい安心感に包まれたあの感じは、リアルに思い起こせる。以前、セキタ材木の前を通ったら、欅の輪切りの板の直径130センチ厚さ7センチが10枚ほど、山積みされていた。片づけようと言うので置いてあるらしい。売ってくれるかと聞いてみたら、互いに大喜びして売ってもらえた。40年以上寝かしてあるものと言うから、今は50年は寝かしたことになる、すぐに使える。まだ5枚ほどある。少なくとも後5年は楽しめるわけだ。

ちょうどいい大きさに切って、磨いて、椿油を塗った。それだけである。時間にして5時間くらいか。残念なことにその位しか時間が取れない。木が良いからそれだけで充分見事だ。写真はできたらすぐ、りんちゃんが来てしかめっ面をして、炬燵をどうしたんだと怒っているところだ。この色艶が良い。欅は何も塗装しないでこういう色になる。50年の年月の力である。塗るのは米ぬか油やひまし油でもいいが、椿油が特に好きだ。本当は椅子なども作りたい。小樽の海猫屋とかいうレトロなレストランで見た椅子が忘れ難い。ああいう大胆な作りで、座り心地の良い、欅のいすを作りたい。きっと座っていると、安心この上ないだろう。椅子は難しいから、ベンチぐらいならいけるかもしれない。自給なのだから、家具くらいは自分で作らねばと考えている。今年は我慢して、又来年の楽しみにしておこう。

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