感染列島と空気清浄機
最近テレビのコマーシャルで気に成る空気清浄機がある。インフルエンザウイルスまで、殺すことが出来ると言う、製品だ。「そうだ白血球だ!」と閃く博士。「白血球の変わりに、空気中にプラズマを漂わす」と納得の美人助手。プラズマクラスターと言う仕組み。プラスとマイナスのイオンで10分間で99%の除菌を行う。同時に花粉も、化学物質過敏所の人にはアレルゲン物質も除去。なにやらイメージとしては優れものに見えてくる。今話題の映画「感染列島」では、コマーシャルが除菌スプレーとセットで流れている。いつの間にか、抗菌グッツが当たり前のものになった。オモチャや、布団までもが宣伝されている。多くの人が惑わされていることだろう。抗菌でなければ、空気清浄機がなければ、暮らせないとしたら、もう世も末と言う事だ。「細菌やウイルスの恐怖」が必要以上に、コマーシャルされている。その背景にあるのは、モノを売りたいと言う商魂である。感染列島が盛んに放映され、その背景にほくそ笑んでいる、製薬会社やその関連企業が居ることを、見ておく必要がある。
細菌やウイルスを薬品で攻撃すれば、生き残れるように変異する。それはまさにイタチゴッコで、耐性菌や新種のウイルスの出現が、より深刻になっているのが、現実である。新型インフルエンザの流行で何千万人の人が死ぬ。いまのままでは事実になってしまう。タミフルが効かない。こんな困惑が広がっているが、タミフルが効かないからと言って、インフルエンザでの死亡率が高まると言う事はない。インフルエンザで死ぬ人も居るが、死なない人も居る。これは仕方がないことで、薬での対応には限界がある。むしろ、丈夫で、つまり、免疫力が高い人間が、耐え切るという事だ。免疫力を高める手法には、細菌やウイルスと頻繁に接触する必要がある。ワクチンでつける免疫力は一時のものだ。鳥インフルエンザで死んだわずかな事例でも、若い人ばかりだ。原始以来、野生の人間は自然界で、細菌やウイルスに感染しながら、免疫力をつけて、生き延びてきたのだ。ところが、人間はひ弱になり、細菌やウイルスにひとたまりもなくなってきている。そこで、空気清浄機や抗菌スプレーと言う事になる。対処療法の間違い。
鳥インフルエンザの変異を見て行くと、人間が野生動物を家畜にする。と言う事から変異は始まる。自然化の中で沈静化していたウイルスの、爆発を起こしてしまう。野生の生き物を飼うと言う事は、ペットであろうが、家畜であろうが、リスクがある。しかも、鳥のように世代交代の早い動物は、取り込んだ細菌やウイルスの変異も早い。さらに、これを一箇所に100万羽などと言う数で飼えば、その感染の連鎖も、自然界では起こらない速度で実現される。それを防ぐために、自然界から遮断した、つまり、細菌やウイルスから遮断することになる。大規模養鶏は人工的な閉じた空間で行う以外方法もない。ここに一度、ウイルスが紛れ込めば、あらゆる変異が起こるリスクは、一気に高いものになる。結論から言えば、大型畜産を止めると言う以外。新型ウイルスの登場は防げないと、確信する。
細菌やウイルスと戦っては成らない。戦えばからならず人間は敗れる。彼らは人間の歴史より、数万倍も長く生き抜いてきた。人間など、彼らの歴史の一こまに過ぎない。人間は諦めるしかない。どこかでこの残念な現実を、認識することだ。妥協して、折り合いをつける。本当に残念ながら、他に道はない。人間はどの道、必ず死ぬことになっている。それでも、やれることは充分にある。それでいいと思うしかない。日本人は自然との折り合いの美しさを知る民族だった。自然を敵とせず。手入れをしながら、里地里山という自然の周辺で生かされてきた。欧米流の自然を凌駕する生き方が、挫折を始めている。今こそ、日本人の生き方を思い出すときだと思う。