最小限の家

   


最小限の家にテラスが出来た。実はこれは自分が作ったのではない。何時までも進まないので、見るに見かねて作ってくれた。これ以上ほっておくと、あちこちが傷んでくるので、やらなければダメだとなった。田んぼも一段落して、丁度いいタイミングだったので、テラスをやってもらうことにした。テラスは家が出来てから作る気でいたのだが、廻りが傾斜地で壁板を打つのもままならないという、状況に到った。つまり、危なくて、はしごをかけて仕事が出来ない。重い板を持って、3メートルも登って、フラフラしながら、壁板を打つようなことは、素人には出来ない。専門家ならそんなことは端からしない。怪我をする前に、周辺を平らにするための、テラスを先行させる事にした。足場を作ろうという訳だ。所が傾斜地にテラスを作るというのは、土台の事から考えると、とても複雑で、手に負えない。最小限の家は、平ら地に作らなくてはならない。

穂田さんが一気に進めてくれた。なかなかの美しい家になって来た。これがちょっと美しすぎる家なのだ。始まりは檜の板にある。檜はそこにあった。それを伐採し。製材し。乾燥し。3年も寝かせた。その間積んである材木を見てイメージを展開した。結構ワイルドな、小屋を思い描いていた。大草原の小さな家のような、継ぎ足し、継ぎ足しの、荒削りのいえだ。大体に、かんな掛けをすると言う事を考えて居なかった。本ザネ加工を湯河原の方にお願いした。これが帰ってきて、あまりにも美しい材に生まれ変わって戻ってきた。これ程のものとなるとは、思わなかった。材に申し訳なくて、繊細に作らざる得なくなった。釘一本打つのも何か材を傷めている様で、失敗が出来ない。流木をおっつけたような、「浜のとまや」のようなわけには、行かなくなった。家作りも材に反応すると言う事があるようだ。

残りは、窓やら扉という、建具だ。だいぶあれこれ試行錯誤したけれど、大体の形は見えてきた。窓は以前から、跳ね上げ式にしたいと思っている。窓からきられた景色はまさに絵の様だ。家の角度の決め方。風景を切り取る形まで、考え抜いた窓だ。舟原の絶景になるように、切り取った。いい風が通り抜ける。日が落ちると、夏でも寒くなるほどの、いい風が抜ける。窓が完成しなければ、風邪を引きそうで、寝てみる訳にもいかない。一箇所は明り取りで、アクリル板をはめた。もう一箇所は壁画を描く予定でいるが、材料の調達待ちだ。丁度はめ込めるパネルで絵を描いて、入れ込みにしたい。窓は縦長がひとつ。横長がひとつある。横長の方はステンドグラスにする予定。バンス礼拝堂のような、ステンドグラス。光が映る位置が大切。縦長の方はガラス入りの、繊細な窓に挑戦したいと思っているが。羽目殺しならできそうなのでやって見たい。

そして、扉。扉は私にとってはとても重要なイメージだ。両開きにする。1460×2170の開口部だ。730で左右に振り分ける。下の方は、縦張りの3枚の板の張り合わせ。上部は横張りで隙間あり。上部は出来れば、枝のようなものを寝かせて、隙間を作りたい。少なくとも、檜の皮を剥いたときの光るよな感じが出ればいい。大きい扉はいいのだが。重いと取り付け部分が心配なので、くぐって入るぐらいにした方がいいだろう。最初のイメージでは、舟の廃材を張り合わせたような、隙間だらけのはずだったが、今は材料の繊細さに推されて、それなりのきれいさのある扉になりそうだ。最初は塗料は塗らない予定であった。腐るに任せるのが感じがいいと。しかし、それではこの材に申し訳がない。そこで、キシラデコールを塗る。水土社の岩越さんが聞いたら、激怒しそうだが。わからないうちに塗ってしまう。

 - 最小限の家づくり