アトリエ

   

今まで3つのアトリエを作った。
最初は東京にいた頃。ビルの6階の北と西に窓のある、広さは4メートルの5メートルの四角のような部屋だった。事務所だったところを使えることになって改造した。ここで10年位絵を描いた。今から思うと、絵を描いたというより、絵をでっち上げていた。と言うような気がする。アトリエの中で全てを行っていた。

次に作ったのが、山北のアトリエ。天井までが5メートルを越え、南側の殆どが窓。と言う開放的なものだった。5メートルかける7メートルぐらいある大きな物だった。ここは13年使った。私なりに理想のアトリエを設計し、ルーベンスのアトリエを参考に作った。しかし、このアトリエを作ってから、外で描くようになり、それほどは使わなかったのが、残念だし、アトリエには申し訳なかった。

今描いているのが3つ目のアトリエで、2間の4間で、西以外はどの壁にも窓がある構造です。私にとってアトリエは明るいほど、有難い。野外のような部屋で、しかも外部からは閉ざされている安心があるような場所がいい。窓の無い西側に向かって描いている。ここのいいのは窓からの景色が、自分にあっていることだ。

野外のようで、閉じていると言う意味では、ワンボックスカーの中が長い間アトリエだった。家にいる時さえわざわざ、車の中で描いていたぐらいだ。以前の車はマツダのボンゴフレンディーで、天井が開き2階から外が見えるものだった。この中で、中判全紙の絵を描くのが、ちょうど具合いが良かった。この車で、日本中を描いて歩いた。

窓はすっかりカーテンにして、運転席の窓さえ閉じられるようにした。これと言う場所に車を置いて、道のふちに車をぴったりと寄せて、そちら側に人が入れないようにして、スライドドアを開いて置く。こうして描いていると、中で絵を描いているなど全く解らない。中には暖房も入れて、雪景色や、雨の風景など、普通写生では描きにくい物がいくらでも描けた。しかも、ドアを明けたり閉めたりで、野外制作と、アトリエ制作が、自由に行き来できるところが、絶妙だ。

それが、車で描きに歩くことが少なくなって来た。いつの間にか、住んでいる周辺でのみ描くようになり、とりたてて遠くまで描きに行きたい気持ちが無くなった。先ずは、車で行って、車で制作をしているのは変わらないが、外に行って描いてきても、アトリエでもう一度描きたくなる。以前なら、もう一度その場に車で行って描きたくなった物だが、家で再度描いてみる事が多くなった。アトリエでの制作に惹かれるものが出て来た。

それもあって、アトリエを改造した。このアトリエを作ってくれたのは、本田さんと言う大工さんと穂田さんです。そして、手伝ってくれたのがAさんとBさん。穂田さんのことは書いて置きたい事が沢山あるので、改めて書きますが。中心に働いてくれたのが、路上生活をされている2人の方です。この2人には心惹かれるものがあり、アトリエを作ってくれたことが、大変うれしかった。実に本気でアトリエを作ってくれた。心を込めて作ってくれた。

それで、私もこのアトリエで、精魂込めて絵を描こうと思う。

 - 水彩画