農ガール、農ライフ

   



 「農ガール、農ライフ」垣谷美雨著を読んだ。羽田空港で待ち合わせ時間に、ブックストアーで飛行機の中で読むために買った。買いたいような本が見当たらなくて、農という字があるので買った。むやみに買った本としては当たりの方だと思う。石垣までひとっ飛びだった。

 飛行機の中は退屈するので本があると助かる。この本は羽田から読み始めて、調度石垣に着いた頃読み終わった。なかなか本の作り方が上手で、一気に読ませてくれる本だった。読みやすいようにあれこれ仕組まれた本という印象である。

 農業や新規就農に関する事を面白おかしく書いた本だ。今農業は日に日に状況が変わっているから、もうこういう状態はどこにもないと思う。10年は前の話なのだろう。新規就農者が農地を借りられない。特に女性には貸さないなど、小田原にはない。石垣島でも女性だから貸さないというようなことはないと思う。

 新規就農する場所によるが、石垣島だってあと5年もすれば状況は変わるだろう。実は新規就農で一番大事なのはどこで始めれば成立するかである。それには触れられていない。日本では昔のお百姓さんという形の普通の農家は必ずなくなる。かやぶき屋根の家がなくなって行くのと同じことだ。維持が出来なければなくなるほかない。

 経営できない産業はなくなる。なくならない農業は企業的農業と自給的農業である。特殊な形態の農家は伝統産業的に存在するのかも知れない。普通の農家は極めて存在しにくいのだ。それは統計的数値が明確に示している。石垣島の未来予測でも、農地の減少が示されている。それでいいというのが行政の考えである。

 主人公は未婚の女性である。現実には是非来て欲しいと考える地域がほとんどのはずだ。だって、大きな農家の息子さんが嫁探しをしているなど、日本全国普通にある事だ。未婚女性が地域に来れば、地域の人と結婚して家族を作る可能性は高い。農業希望の未婚女性が排除されるのは希有な事例だろう。まあお話だから、おもしろく書いたと言うことに違いない。

 もちろん働ける子供の居る家族ならさらに歓迎される。子供が減少して、小学校や中学校が閉校になる危機なのだ。今の現状は農業希望者は決して排除されていないと言うことだけは、体験者として書いておきたい。ひつこいようだが一昔前の話だ。

 農の会に新しく参加した女性が、農業委員会に農家資格の申請の相談のために行った。すると後日、農業委員会におられた方が家まで来たそうだ。何か調べるのかと思えば、農地を世話をして上げる。農家になれる方法があると見えたそうだ。家まで来てくれて親切だと思ったら大違いだった。

 実はその農業委員の方は、その女性と婚活だったのだ。家に来てくれれば好きな農業をさせて上げるという話だ。もちろん有機農業も良いだろう。その女性は見た目が飛び抜けてすばらしいというわけではないのだが、どこに行っても忽ち男性に気に入られ、結婚して欲しいということになる不思議な人なのだ。

 そして、結婚して、離婚して、又結婚して、離婚してと言うことを繰り返してきた人だ。詳しくは知らないのであくまで話を盛っていると考えてもらった方が良い。今はすばらしいひと結婚して安定している。子供も生まれしあわせに農業をしている。

 この本の舞台はなんとなく小川町くらいの関東の近郊のような感じだ。小田原と置き換えても良いのかも知れない。農業大学校に通うことになるようだが、学校の指導が有機農業らしい。これは私には驚きだった。そんなところがあるのか。まさかだー。

 もしそういうことがあるとすれば、小川町辺りかとつい思い出された。神奈川県では有機農業は指導してくれない。指導できる人が居ない。有機農業は有機農業が出来る土壌でなければ難しい。有機農業向きの土壌の存在する農業大学校は極めて少ないだろう。それでもなんとなく、公的機関が有機農業を指導するように変わってきているのかも知れないと感じる。

 農家の婚活パーティーに出る話も、話としておもしろいが主人公のような女性が出るというのは無理がある。止むえず出るような設定がないと。あちこち無理がある話だが、お話だからそれでも良いのだろう。婚活パーティーはテレビでも時々やるくらいだから、話としてはおもしろい。まして、哀れな嫁の来てのない農家の親父をさらしものにして笑いがとれる話だ。

 婚活ドタバタ劇は結構人間くさくておもしろい。ただ、農家側の男性のひとりとして読ませてもらうと、どうも納得がいかない。それほど農家の親父はだめ親父かとため息が出る。そうかも知れないが、それほどではない。この悪いイメージが実際の所蔓延しているのかと言う実感。

 今の時代に農業を続けている人間は実は相当に優秀である。優秀でなければすでに止めざる得ない状況が続いてきている。もう長年耐え抜いた強者だ。能力が高いから、止めない工夫をして継続している。ただ、仕事一筋と言うことはあるのだろうから、女性には縁がないのが普通だ。素晴らしい独身男性が農業者にはいる。

 ブロガーも登場する。元大手新聞記者の女性ブロガーである。そういえばブログを利用して、結婚詐欺をしていた人が居た。それを思い出した。私も毎日ブログを書いているが、73歳になるので、婚活の必要はない。16年毎日書いているだけで、これが他の事に繋がる実感はまるでない。ブログを書くことはブログの中で完結している。

 何故ブログで収入を得ることができるのかと言うことが不思議なのだが、この人は商品の紹介を上手くブログに滑り込ませるらしい。この人がこういうのだから、買おうかと成る。この人のブログで商品を紹介して貰えると、売り上げが伸びる。こういうブログがあると言うことなのだろう。

 今ではブログではなく、インスタとか、フェースブック、ユーチューブと言うようなものなのか。まあ、よく分からない世界だ。インターネットは日進月歩の分野なのだから、10年以上ブログを続けていると言うこと自体が、ポンコツなのだろう。

 そして顛末の行く先は、農ガールが経営を成功させる。ブロガーの学生時代からの友人の御陰で、めでたしめでたしと言う筋書きである。1番おもしろいのが経営なのだから、もっと様々な成功事例を載せて貰いたいきがする。農家が成り立つのはそれは様々なことになる。

 2つとして同じような成功事例はない。いつも特殊解なのだ。新規就農者が成功する一般解はない。だからどれほど突飛な成功でも良いのだ。あれこれの特殊解を書いて貰いたかった。それぞれに感動の物語がある。婚活以上に興味が湧くはずだ。

 まあ、羽田から気がついたら、石垣島である。退屈せずに過ごすことが出来た。それ以上のことはないのだから、文句を言ったら罰が当たる。充分に楽しく読ませていただいた。農ガールも大変なことだ。相談してくれたら、もっと良いアドバイスが出来たのにと、残念だ。

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