台湾の未来と日本

台湾の未来は、日本の未来と大きく関連している。台湾の民主主義政権が維持されることが、日本の安全保障に一番大きなことになる。本来台湾が歴史的にどこに所属していたかとか、台湾は台湾にそもそも暮らしていた人の国だとか。そういう問題とは別の問題だと考えている。台湾がどうあれば幸せになれるかである。
日本は台湾を日本の一部として居た時代がある。台湾という地域開発を日本国内と同様に行った。植民地としての統治だから、日本語教育のような台湾の文化を破壊するようなひどいことも行われた。だが、台湾のインフラ整備は本気で行い、台湾の近代化の基板を作ることになった側面もある。
その中でも民主主義を育てたことは良いことだった。今台湾が親日的であるのは、台湾を統治のために人生をかけた日本人が沢山居たと言うことでもある。韓国は日本よりも文化的に上位の国という意識の国だったために、日本の統治は上手くゆかなかった。
台湾というかつて日本の植民地であった地域に、毛沢東の赤軍に敗れた、蒋介石軍が逃げ込んだのだ。そして、台湾でひどい弾圧を行い、独裁国家を作り上げる。日本人が去り、本省人が現われる。それは解放だと思ったら、とんでもない日本どころではない弾圧が始まったのだ。
その最悪の事態を台湾の人々は根気強く、跳ね返して行く。そして李登輝元総統という、素晴らしい指導者を得て、民主主義国家を作り上げる。民主主義教育が行われる結果、台湾は台湾人の国であるという、当たり前の事が醸成される。台湾は中国の独裁政治を嫌っているのだ。中国が自由で民主主義になれば、関係は変ってくるはずだ。
台湾に興味を持ったことは、最初は台湾の小説を読んだことだった。実に奥深い精神世界が展開されている小説にであった。魯迅の小説を思い出した。台湾の複雑な歴史のなかで、精神の亀裂が生じ、深まる世界観を見た。独特の哲学がある小説に触れて、次々に台湾の現代小説を読んでみた。この国はちょっと違うと言うことが分かった。
そのことは台湾に行ってみてさらに理解ができた。台湾の美術館に行って、台湾の人達が描いた絵を見て、同じような複雑な世界観を感じた。日本の絵画が失ったものだ。絵に描く人間がいたのだ。日本で言えば、野見山暁二氏のものに近いと思えた。そうした絵を若い人達が描いているのにびっくりした。
日本の絵が、上手な方角に傾いているのは上質な文化が衰退したために、単純に上手という価値観に傾斜しているのだ。美術史を見ると何時の時代も、社会が混乱し価値観が崩壊すると、リアル絵画が登場する。ルネッサンスにおいて、リアル絵画が登場したのは、中世の安定した価値観の喪失である。単純に言えば、イコンからミケランジェロである。
芸術性の高さから言えば、ルネッサンス以前の絵画の方に、精神世界を感じる。芸術の深さは上手さに置き換えられる。何が良いかが見えなくなり、そっくりであるというところから、出直さざる得なかったのだ。それは、どこの国でも同様なことが起こった。ロシアイコンから、レーピンになる。
江戸時代の人がヨーロッパの絵をみて、陰影を汚れていると感じたという。しかし、明治になると文化的価値観が混乱する。すると、リアル絵画が現われる。それを繰り返して、今またリアル絵画登場している。社会が文化的な価値観を定められない結果である。
中国の絵画も同様である。上海の美術大学に交流事業で行ったが、やはりリアル絵画が並んでいた。中国の美術史の中にも、リアル絵画の時代はある。冒頭の北宋の絵画である。リカル絵画の行き着いた先のような、独特の世界観がある。北総の時代は、安定しない時代だったらしい。
話がずれてしまったが、中国の文化レベルの低さと、台湾の文化レベルの高さの違いに驚いたのだ。その高い文化の国である台湾を、中国という民主主義を否定する文化レベルの低い独裁国家が、軍事力を用いて支配するような事は、不幸なことだ。絶対にあってはならない。
経済では台湾と韓国は高度成長を成功させ、日本と同等以上の経済状態を作り出した。その方法は民主主義国ではあるが、中国流の国家資本主義的手法を取り入れたところにあるのだろう。日本はアメリカ方式の自由競争の経済方式で成功したために、次の国家資本主義競争に乗り遅れたと思われる。
日本の外交は当面は台湾韓国との3国の関係を強くすることが重要だと思う。先ずは経済関係を強化する。互いの経済が競うことでまた補い合うという、良い関係を構築することだ。3国の経済を高める、3国資本主義の模索。それが成功すれば、中国の脅威にも対抗できる。
台湾は来春総統選挙がある。香港政府と中国政府が香港の民主化運動を徹底的に弾圧した。そして約束だった一国2制度が失われた。多くの台湾人が『台湾が香港の二の舞になるのはゴメンだ』として、前回の総統選挙では、中国に厳しい態度を取る蔡英文総統に投票したのだ。
この4年間の蔡英文氏の巧みな政治は評価されるべきだ。台湾は李登輝元総統の類い希な、政治力によって独立国家として成立した。その系譜を受け継ぐ蔡英文氏の政治力も困難な中、良く国家を維持して、経済成長を果たしている。台湾国民が与党・民進党の頼清徳候補を選択するとすれば、それは中国の独裁政治が原因している。
中国とできる限り対立を深めることなく、台湾の独立性を高めてゆく手法である。コロナ対策を見ても、その政策と実行力は素晴らしいものがあった。女性の総統が実に有能であるということも素晴らしいが、コロナ対策を政策実行したオードリー・タン氏はトランスジェンダー であることを公表している。
台湾の精神の自由がそうしたところにもよく現われている。日本は台湾から学ばなければならない。日本の仮想敵国中国政策は余りに幼稚である。軍事力で中国に対抗使用など無謀である。単にアメリカの指示に従うのでは、日本はアメリカの先兵となり、大きな痛手を被る。
岸田内閣は憲法違反の琉球弧にミサイル基地を配置している。あまりに一辺倒で単純すぎる。日本は平和憲法の国である。国際問題は平和的な手段で解決するよう、憲法で政府は求められている。何一つそうした努力をせずに、軍事的手段に走るのは、知恵が足りない人間のやることだ。中国に対抗するには経済である。
日本が行うべき軍事的整備はあくまで、専守防衛の能力を高めることである。イスラエルの鉄壁と思われた、ミサイル防御の壁は、テロ組織ハマスに破られたのだ。日本がどのように中国に対抗したところで、彼我の差は大きすぎる。出来るのは、台湾、韓国、日本での共同防衛である。
その抑止力を持って、中国と平和交渉を粘り強くして行く以外にない。中国は経済の国である。独裁政権が維持されているのは、経済が好調だからだ。不動産不況などと言っても、生活の向上の方は、日本よりまだまだまだ良い。生活が豊かになっている間は、独裁政権は安泰なのだ。
3国経済連を作り、中国の経済と上手く関係を持つことだ。韓国は一国で中国に深入りしたが、中国の強引な外交政策で、困難も多かった。中国は海外の企業の進出を求めているのだから、三つの国で、調整と連携を取りながら、中国との経済関係を強めて行くことではないだろうか。