アメリカ一国主義と日本の政策転換

   



 トランプ氏が再選されて、円安が進行した。年末には160円まで下がると言われている。ネットであれこれトランプ氏の経済政策のことが書かれている。一つは関税を高くして、輸入品に競争力を無くそうと言うことのようだ。その関税を財源に、大幅な減税を行うという。

 「対中国関税60%」と「それ以外の全輸入品に対する一律10%関税」、及び移民政策として「合法・不法を問わない移民流入の抑制」が挙げられる。どれもアメリカの経済に良い面と、悪い面がある。移民の強制送還はトランプ氏でも簡単には実現できない政策になる。

 アメリカでは大統領、上院議会、下院議会、すべてが共和党になった。トランプの選挙中の発言はそのまま実行され動き来出すと考えた方が良い。

 トランプ氏の政策は全てインフレを誘発する。減税策は消費需要を刺激する。関税は輸入物価の上昇に繋がる。中国製品はあらゆる分野に広がっているだろうから、価格が倍以上に成っても使わざる得ない企業も多いだろう。製品価格はかなり上昇する。

 移民抑制はできない可能性が高いが、もしこれを行えば、アメリカ経済を低賃金で支えてきた、移民労働力が不足することになり、賃金がかなり上昇するだろう。インフレが再燃する場合、FRBの計画している利下げサイクルは進まないことになる。

 利下げがされなければ、アメリカ経済自体の活性化が起きない可能性が出てくる。住宅投資や設備投資の回復が遅れる。関税引き上げは相手国の報復措置がどうなるかによって、アメリカ経済への影響は変るだろうが、輸出減少、移民抑制は人口成長率の鈍化を通じて国内景気を悪化させる可能性はかなりありそうだ。

 株価はトランプ減税期待からプラスの影響を見込実すでに上昇している。インフレ再燃と財政収支の悪化から、長期金利が上昇する可能性はかなり高い。その結果日米金利差の拡大を通じてドル高円安がこのまま加速的に進んで行くと予想される。 
 
 一方で米国経済が、拡大されればは、輸出拡大を通じて日本経済にもプラスの波及効果をもたらすことは期待される。トランプ氏当選が予測された6日の東京市場では、ドル高円安が加速したほか、日経平均が前日比+1,005円(+2.6%)と大幅な上昇を示した。その後も株価は高めである。

 一方、トランプ氏が保護貿易政策をさらに先鋭化させて来るに違いない。日本の自動車産業を中心に、日本の輸出産業への悪い影響が起きてくる可能性が高い。特にメキシコ生産の車に大きな課税をするとしていることは、自動車産業は後退する可能性がかなり高そうな気がする。

 トランプのアメリカファーストが極端化すれば、保護貿易政策は輸入物価の上昇とこれによる消費減少、移民抑制は接客業や建設業における人手不足の深刻化を招くだろう。アメリカ孤立主義はアメリカにとって、良い結果にならないと思う。

 特に対中国の関税60%など、自由貿易国として異常な対応である。これは中国に経済で負けるという恐怖から出てきた政策ではないだろうか。アメリカは長らく世界一出来たために、経済で自分より強い国が表れることに耐えがたいのだろう。

 中国は確かにアメリカに関税を60%もかけられたらば、苦しいことは間違いがないが、中国はアメリカ同盟国に対して、経済分野での切り崩しを図るはずだ。日本などのアメリカ同盟国も、トランプ関税の同じ被害者になる。トランプに対して、中国と連携して対応する可能性が無いとは言えない。

 日本にとっても対中国関係で良い方向が見つかる可能性がある。両者の対立のガンになっている、尖閣諸島問題も棚上げして、外交交渉に乗り出せるかも知れない。 日本はアメリカよりも経済的には中国の方が規模が大きいし、将来の可能性という意味では、中国の潜在力に期待した方がいい。

 特にトランプ政権は、同盟国に対して軍事費の増加を要求してくるだろう。対中国への軍事的圧力を高めろと要求するはずだ。そして在日米軍の経済的負担増も要求するはずだ。しかし、アメリカのそんな一方的な要求に対して、受け入れてばかりいられないはずだ。

 むしろ中国との関係の模索がアメリカの一国主義を抑制させる効果があるのではないだろうか。長い将来を考えれば、日本は東アジアの一因として中国と手を取って進むことが一番である。現状では習近平の独裁がその障害になっているが、それもいつまで続くのかは分らないことだ。

 中国人には有能な人が多い。習近平の問題点を当然理解している。ただ、中国の膨大な人口と、他民族と、他宗教の、複雑化した国家を一つにして、経済を立て直すためには、一定の強権を持った政治が必要だった。そうでなければ中国は世界中から浸食を受ける国のままだったのだ。

 日本だって増長して満州国の建国までしてしまったのだ。そうした中国国家の最悪の状況から、世界一の経済大国を目前とする国を一気に作り上げたのだ。政治的な問題点が無いはずがない。これからこの人権無視の独裁政権が、どこまで民主主義的な社会主義国家に変るかだ。

 対アメリカ一辺倒から日本が抜け出す機会が来たのだ。アメリカが米軍負担の増加を求めるだろうから、まずそれを断り、日本から出て行って貰って構わないと主張すべきだ。アメリカの属国ではないと言うことを、まずトランプに理解させなければならない。

 それが当たり前の独立国家の姿勢だ。日本はアメリカを抜きに東アジアの諸国とアジア版EUを作る必要がある。それは軍事的なものではない。通貨や経済を統一するような経済圏である。それは中国が中心になるものだろう。現状では確かに不可能に見えるほど困難であるが、将来の方角として東アジア共同体を目指す。

 日本の経済は厳しいことになる。手取り増もいいが、経済の好循環が生まれなければならない。手取りが増えても使わないで貯金するのでは始まらない。まず社会に明るい展望を持てなければ成らない。貯金より投資を誘導する政府がまともとは思えない。
 先ずは普通に働いて、不労所得になど依存せず生きていける国である事、安定した社会をを具体化する。それは食糧自給から始まる。日本の不安定の一番は食料をアメリカに依存している点にある。アメリカに依存しているのは国防けではないのだ。
 まず食糧自給を実現する。生産性が低いという意味ではあらゆる産業がそうなってしまったのだが、日本農業ほど生産性が低い分野はない。この生産性を改善すること。国が関与して、機械化農業を推進する。一方で自給農業の自由化を行う事だろう。食糧自給が7割を超えなければ、独立国家とは言えない。
 自給農業の推進のために、機械の貸し出しや、農地制度の見直し。そして地方社会での自給的な暮らし方が可能な社会インフラの整備をしなければならない。トランプ氏の登場は日本の社会がアメリカの属国からの自立の良い機会にしなければならない。

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