石垣島の水資源問題

   



 石垣島の暮らすということは水の問題と暮らしが直結している事を感じている。石垣島には現在5万人が暮らしている。住民登録をしていないで生活している人もかなりいると思われる。訪れる観光客は年間50万人を超えている。観光客は住民の5倍水を使うと言われている。

 もし将来、観光客が365万人になれば、一日あたり1万人になる。観光客だけで5万人分の水が必要になる計算になる。石垣島で使われる水の量は2倍に膨らむことになる。水の量が島で暮らせる人の限界になると考えておく必要があるのだろう。

 石垣島に割り込ませて貰って有り難く暮らしている分際で、御託を並べるのは島の方々には不愉快なことなのだろう。しかし、水の問題は日本全国どこの島でも重要である。お隣の竹富島ではすでに水が不足して、石垣島から海底に水道管を通して運んでいる状態だそうだ。この水が無ければ、竹富島では観光は回らなくなる。

 石垣島の目指している方角は、観光で経済を回すという事だろう。この点では70%ぐらいの住民は一致しているのだと思う。私もそれ以外にないと思っている。観光客を受け入れて経済を回し暮らす石垣島。水の問題は充分に考えておく必要がある。

 これからの時代の観光客が求める石垣島はどんな島なのだろうか。 美しい亜熱帯の島と海。やはり自然の魅力を求めてのことだろう。自然の中に滞在すること自体を楽しむ観光客。私自体がそういう観光客であった。そして、引っ越してきたくなった。迷惑にならないように、石垣島のためになるようにのぼたん農園で頑張りたい。

 時代錯誤のようだが、石垣島では前勢岳中腹でゴルフリゾートが計画されている。そこで使う大量の水は地下水を汲み上げて使うとされている。果たしてそれほど大量の地下水があるのだろうか。汲み上げすぎれば塩水が混ざるようになるはずだ。そうした前例はすでに近隣地区で前例がある。

 石垣島は毎年節水が呼びかけられている。つまり、今の水の供給量に余裕がない状況なのだろう。そうであるとすれば、石垣島の将来が観光にあるとすれば、水資源の確保にかかっていると考えて間違いないだろう。石垣島の水の資源がどれほどあり、今後どのように確保が出来るのか。その基本的条件を調査する必要がある。

 現状でその調査があるのか調べてみたのだが、私の能力では見当たらなかった。もし調査が行われていてその資料があるのかも知れない。ご存知の方がおられたら教えて頂きたい。

 石垣島の面積は222.5 km² 。似たような大きさで人口も同じくらいの島は宮古島だけだ。宮古島は平らな島で山もないので、水に関しては石垣島よりもはるかに厳しい状況にある。その為に水資源に関する調査もかなり丁寧に行われている。その結果島の地下水を溜める地下ダムが作られている。

 日本全体を見ても人口密度が1平方キロ200人を超える島は沖縄以外ではない。石垣島は年間降水量2106mm。 宮古島2021mm。大きな経済の方向としては宮古も石垣も観光立島を目指している。どちらの島も似たような条件なのだから、宮古で起こる不安は、将来の石垣島でも起こると考えていいだろう。

 水は自然が生み出す貴重な資源だ。金よりダイヤより大切な資源だ。雨が山に降り注ぎ、染み込む。そこから地中に蓄えられる。水は地中で育まれ、ミネラルをたくさん含んだ地下水が再び地上に湧き出る。水が利用されるまでに、何十年もかかることもある。豊かな森には地下水を貯える力がある。

 石垣島ではそれほど長く地中に水が蓄えられてはいないと思われる。中央部にある於茂登岳周辺にはジャングル地帯はあるが、その開発が急速に進んでいる。自衛隊基地が森を切り開いて構築されている。これで石垣島の水資源はどれだけの影響を受けるのだろうか心配される。島の貯水能力が減少することは間違いが無い。しかし於茂登岳の森を水源の森では無いと市長が答弁していた。何故なのだろうか。

 於茂登岳の木を切ることは水資源に将来必ず影響してくるとみなければならないことだ。十分な調査がないままに森林が伐採されることは石垣島の未来にとって許されないことだろう。自衛隊基地はない方が安全だと思うが、それ以上に建設場所が悪すぎる。石垣島の水源地帯を切り開いたのだ。考えなくこうした暴挙が続いている。

 島の水環境に一番影響を与えているのが、牧草地ではないかと思っている。森林に比べて牧草地は水を貯える能力が大きく失われる。もし島の森林がすべて牧草地になれば、石垣島の水資源の量は激減してしまうはずだ。そのことは同時に海の豊かさも失われることになる。牧草地は年々広がっている。

 石垣牛は石垣島の大切な産業である。しかし、どこまでそれを広げることが可能なのかも計算しておく必要がある。放牧牛が環境を汚染しないための面積は1ヘクタールに2頭と言われている。のぼたん農園で4頭ぐらいになる。

 豊かな水は森林と山を保つことで、新たなエネルギーを使うことなく再び生まれてくる。森林と山を守ることで豊かな恵みをもたらしてくれる。森林が豊かな海を作るという事が言われる。山が草地化されて行くにしてもその限界はある。 

 豊かな山を作るという事もある。放置された山が豊かな場所という事でもない。十分に豊かさを維持する方向付けを人間がしなければならない。石垣島の豊かな山の実例は西表島になるのだろうか。深い森が水をたたえている。石垣島の山の方が浅い感じがする。

 たとえばアメリカハマグルマは於茂登だけの山頂にまであるという。どうすれば調和のとれた豊かな森林が作れるのか、方向付けをするのは人間の役割だろう。石垣島に里山をつくる。必要な山の管理をしなければ、西表島のような自然の原生林という訳には行かないだろう。

 草地以外の農地も、水資源の管理を考えた農業にしなければならない。一番の問題とされるパインやサトウキビの畑からの赤土の流出である。赤土の流出を制限する条例まで沖縄県にはあるにもかかわらず、大雨のたびに海は黄土色に染まる。同じ農地でも、水田は水を蓄える農業だ。

 パインの栽培方法が赤土の流出をより大きくするような方法なのだ。すべてのパイン畑には沈殿池を義務付ける必要がある。それほど困難なことではない。それはサトウキビでも同じ事になる。沈殿池を作ることは地下水を増やすことにもなる。

 畑の配置を考慮するサトウキビやパインは海岸沿いには作らない。そして海沿いには水田を配置する。水田ダムを作る。海に直接水が流れ込まないように、水田が沈殿池になる。流れてきた赤土は稲作に弊害はない。水田に一度水が入るような水路の形態に変えてゆく必要がある。

 石垣島の土壌は腐食がなく、水が浸透しにくい土壌である。土壌に腐植を増やして、浸透性をよくすることで土壌の保水力が上がる。表土を強い陽射しに晒すことで、土壌の劣化が進む。その意味でも水田は畑よりも望ましいものである。

 石垣島の水資源の、基本調査から始めなければならない。島の観光開発はあくまで水資源を見て許容範囲を決めておかなければならない。水と空気はただというような古い開発思考では島は滅びることになる。石垣島の現状はSDGSからほど遠いい。

 まだ間に合う。田んぼも石垣島には残っている。亜熱帯の気候は一度森を切り開ければ強い光にさらされて乾いて行く。土壌が砂漠化して、保水力が失われる。今ならばまだ緑豊かな島に戻ることは出来る。これからの10年が島の未来を決めることになるだろう。

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