甘利氏の役割

   

フジテレビのニュースの見出しには驚いた。「甘利氏涙の退任のあいさつ」である。「やせ我慢の美学」という見出しもある。もう日本の報道はだめなのかもしれない。甘利氏こそ疑惑の総合商社である。具体的なことは何も知らないが、献金している業界を見ると、この人が主にやってきたのは、口利きであろうと考えざる得ない。この人に献金をしている様々な業界がある。企業献金は見返りがあるからするのだ。安倍氏がこの甘利氏を重用してきたという事に何かしらの意図を感じる。そして大臣を辞任した甘利氏をまるで持ち上げようというのが自民党の対応である。これから、UR機構の口利きの実態が追及されるというのに、自民党も勘が鈍っている。都市再生機構では、12回甘利氏の秘書と面談し、というか接待をして、2億数千万円を甘利氏に献金した建設会社に払っている。誰がどうごまかそうが、実態は大臣という職を利用した口利き業務である。甘利氏がここでやり玉に挙がった理由は安倍氏への注意信号というか脅しである。

誰かが安倍氏に勝手なことをするなと、脅しているのだ。いつでも公開できる脅しの材料を準備しているのだ。このタイミングで出てきた理由は安倍氏の行動にあると考えるのが普通であろう。一番はロシアへの接近だと思われる。安倍氏にしてみれば、北方4島の返還をこの機会に実現し、国民の支持を取り付け、憲法改定に向うという筋書きであろう。ところが安倍氏がこの機会ととらえた、ロシアの経済的苦境はアメリカとEU諸国の経済制裁を原因としている。日本がそれを利用して漁夫の利を得るというのは許されないという事だろう。それがプーチン氏の訪日中止であった。経済で追い詰められたロシアではプーチン人気が沸騰している。強気のところが評価されているようだから、とても4島の返還にはならないはずだ。来日を前にしたラブロフ外相は日本は戦争に負けたという事実を認めるところから始めなければならないなどと発言している。強気発言の背景にある物こそ苦しい経済事情と思われる。足元を見るなという事だろう。

北方4島などロシアに上げればいいと思っている。領土というものは大したものではない。領土が日本の主権だとは思わない。日本が日本であるのは、日本人が日本人であるという事だ。日本語をしゃべり、日本の里地里山で育まれた手入れの思想の集団である。その肝心な日本人の方が危うくなりかかっている。日本人の心を失い拝金主義者の増加である。甘利氏はまさに拝金主義者の代表の様な人物と考えていた。そこが口利き屋として重宝されているのだ。ここまで甘利氏を悪く言わざる得ないのは、報道も、自民党も、甘利氏を秘書の犠牲になった清廉潔白な人物に仕立て上げようとしているからだ。もう一つはTPP交渉の汚さである。今でも安倍氏は農家のためになるかのようなバカな発言をしている。これはまさにアメリカと、日本出身の世界企業のための条約である。

甘利氏は日本経済の指揮をとってきたと自負していると涙の退任の挨拶をしたそうだ。その涙は、飛ばい3本の矢をいかにも飛ぶように発言したことに向けるべきだ。3本の矢は飛ばないまま新3本の矢である。どうしても、日本の産業構造の転換ができないのだ。新しい分野を切り開くような産業が登場できないのだ。この指揮を取るべき存在ではなかったのか。もちろん簡単にできるようなことではないし、たぶん無理なことなのだろう。甘利氏の能力不足で出来なかったとも思わない。世界経済の中で先進国となった日本が、経済をどうできるのかである。特別の資源がある訳でもない。普通に行く以外ないのだと覚悟をしている。高度成長期の途上国時代とは違うのは当然である。アベノミックスという幻影経済の踊り手に過ぎなかったのだ。

 

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