木板を作る
玄関に掛けた木板 タングドラム3号 お寺の玄関には長方形の木版という鳴らし物がある。そこには脚下照顧と書かれている。何処に立っているか考えてみなさいという事なのだろう。ケヤキの板の絵馬の形をしていて50センチくらいある。厚さは5センチくらいあるだろうか。行脚のものがお寺に来たぞという覚悟を鳴らすわけだ。
円形の大きなケヤキで5センチほどの厚さ、65センチの直径である。まとめて購入したものの中にあったものである。購入というより、材木屋さんで廃棄する山を買ったものだ。20年ほど前のことだ。たぶん大きなお盆を作ろうとして、割れが入って止めた物の様な気がする。良く乾いていなければ、良い音はしない。ケヤキだからこのくらいの太さの木は珍しいという事ではない。手に入れた時にすでに20年は経っていると言っていたので、現在切られてから40年以上経っている。2枚あって一枚は丸テーブルにしている。役に立っているわけではないので、もう一枚作ってもいい。タングドラムではかなり大きい方のものではないだろうか。大きい木の場合音がどのように違うのか興味があって作てみた。そしてどうせなら、脚下照顧と書いて玄関にかけて置こうという事になった。丸い穴が4つあるが、下の3つの穴は音の調整の穴である。木の裏側は削り込んで音を調整してある。
板の厚さが右に行って薄くなる木板 タングドラム4号
片流れに薄くなっている杢のある板である。左の厚いところが20ミリで、右の薄い方が5ミリほどである。磨くとなかなか見事な杢になるが、この場合どうだろうか。今のところそのままにしてある。箱を下につけるのもあるが、このまま板として吊るすようにするのもいい。持つ位置でずいぶん違う音色になる。ボックスにした場合、音がどう変わるのかはまだよく分かっていない。
杢の有る栓?板で作った木版 タングドラム5号
この板は杢と上部の形が面白い。上部の変わった縁や穴を生かして、ベロの形を作った。これは四角い箱にした。ただ板が柔いからどの程度の音になるのか。先日味噌づくりの時に持って行ったら、音が山に木霊して心地よかった。木魚のような柔らかいボコッというような音の良さもあるのだから、調整次第だろう。下にボックスをつけてみたら、音の響きが複雑化して、なかなかのものができた。上部の穴の所から音が反響しながら出てくるので、音の中に違う音が含まれるようになった。これは特に低い音の場合効果的なようだ。
曲げのある香炉台による木板 タングドラム6号
これは紫檀というふれこみの香炉台である。紫檀という樹木は硬いはずだが、この紫檀はそう硬くはない。紫檀でなかったのかもしれない。しかし紫檀はかなり幅のある樹木らしいので、違うとまでは言えない。これは斜めに竪琴のように膝にのせて構えると、案外いい形で敲くことができる。音の響く角度があるので、上手く支える。
打面の木板はパドック、箱はケヤキのタングドラム7号 私なりの完成形である。周辺のケヤキは25ミリもあるので全体が重すぎる。あるので使ったのだが、次はもう少し薄い板にしたい。合板でも箱はいいのではないかと考えている。
実はこのように木板にはまっているのは、中学生が勉強を始める前に机の整理を下のと同じだ。絵を描くには少し準備体操が必要だ。絵はどうしても描きたいときに描く。水彩画を描くにはよほどのことだと思っている。木という素材を使った絵を描くような気分もある。気持ちがどこか楽だ。学生のころ一緒に絵を描いていた坪田さんはベン・ニコルソンにはまっていた。ポロックとニコルソンを併せたような、面白い抽象を描いていた。デザインセンスが良くて、一緒にポスターの仕事をしたときも、デザインは坪田さんで私が色の担当だった。作品の共同制作をしたこともあった。2メートル四方もある大作だった。共同制作というものを試してみたのだ。この部屋にも、色見本を作った時のものが、飾ってある。下地の白と透明色の関係をピースにしている。なぜかあの頃の形が、板に作る舌の形に表れてくる。今度パドックの大きな板を手に入れたので、今いろいろアイデアを練っているところだ。