北朝鮮の権力闘争
北朝鮮ではかなり深刻な内部対立が起きているのではないか。そうでなければ後見人と言われた、ナンバー2を処刑するなどということはあり得ない。独裁国家というものが、どれほど、危険で醜悪なものかを見せつけられる。日本の方角がああした方向に進むことだけは避けなければならない。これから北朝鮮で起こることを、そして今までの流れを正確に見て、歴史の反面教師にしなければならない。金正恩のおかれた状況は、かなり危ういところまで来ているのではないか。一番の要は中国との関係のはずである。中国の複雑な外交戦略の中で、支持を得て、生き延びてきたのが北朝鮮である。その要である中国との関係を危機にさらしてまで、張氏の粛清を行わざるえなかった事情が、北朝鮮内部に起きている。経済の問題だと考える。日本の一部にある、北朝鮮の経済困窮説が、そうでもないらしいと私は見てきた。そもそもの北朝鮮の成り立ちと、中国との経済関係を考えてそう推測する。
あれほど軍事偏重で進めば、北朝鮮の経済は崩壊し、国民の疲弊は深刻であろう。と考えたいという気持ちが、日本の北朝鮮判断に反映している。北朝鮮は、韓国とは違い、戦前から鉱物資源が豊かな工業志向国である。明治政府はこの資源を求めたとも考えられる。面積は九州の3倍くらいで、人口は2倍程度の小さな国である。そこに中国の開発援助的支援がある。中国としては、北朝鮮を利用できる衛星国と考えているのだろう。日本の企業が労賃の安い国へ開発援助金を伴い、進出するのと同じことである。中国の経済発展に伴い安い労働力を求めて、北朝鮮に進出する。そこに処刑された張氏の存在がある。この利権に関しての対立が、北朝鮮内部に起きてきたと想像する。当然中国との合弁事情を進めていた、グループ全体が、危機的状況にあるのだろう。現在、金正恩としては自分の権力が及ばない経済領域を手中に収めようとしたのだろう。しかし、経済的論理は北朝鮮の国家的思想を越えて、資本主義的に動き始めていたはずだ。
資本主義的な発想はすでに抑えようもなく、北朝鮮の中国派の行動原理になっているはずだ。中国も結局はそうして、市場経済に巻き込まれて進んだ。共産主義思想が、拝金思想に敗れてゆく姿である。共産主義の考え方が悪いのではなく、人間というものの欲が、理念より勝ってしまう姿に見える。しかも、独裁者はもっとも欲深い姿をさらす。張氏に対する人格批判の悪口は、まさにジョンウン自身に返ってゆくように見えないだろうか。張氏が北朝鮮経済を中国との、関係を基に広げてゆけば、自ずと、国内の従来の権益を保持する保守層とぶつかるはずだ。ジョンウンがそれを掌握できていないため、過去勢力の圧力に屈して、処刑を選択したのではないだろうか。それは経済としては明らかに後退を招くことだから、今後の国家運営はより困難さを増したはずである。その結果、より精神主義が強調される国になる。その強盛大国の背景として、核ミサイル実験がおこなわれるだろう。
北朝鮮に暮らす人間は洗脳されているだろう。朝鮮戦争以来、窮屈な洗脳教育のなかで成長し、ゆがんだ人格を育てている可能性が高いと考える必要がある。張氏のような海外留学組と、国内勢力との意識の違いもあるはずである。北朝鮮は簡単には崩壊しないだろうし、当分その歪みを膨らませてゆくことになるだろう。情報が大きなカギになる。現政権に期待が持てなくなり、また身の危険を感じる人の、国外脱出は当面広がるはずだ。当然、その為の軍事的監視も強化されているはずだ。中国の覇権主義的傾向が、調整役であり、経済権益の窓口を失った。北朝鮮とぶつかることがないのか。中国は経済優先で動くはずだ。北朝鮮が安い労働力の提供先である間は、見返りのある支援を続ける。このバランスを北朝鮮政府が崩すことがないか。核ミサイルは、中国にも向けられている。中韓関係を含めて、来年に正念場が来る。