ハザ掛け乾燥

   

ハザ掛けでお米は乾燥している。今その盛りである。地方地方で色々のやり方があるが、私たちは竹竿と竹の足で干し場を作っている。一段掛けである。ハザ掛けの姿はとても美しい。風景を作る。そして目立つ。残念ながら私たちのハザ掛けは、明らかに下手だ。私など、25年もやっているのに、上手にならない。簡単に見えるが案外難しい。昔台風ですべてのハザ掛けが飛ばされたことがあった。その時隣の田んぼのおじさんが、「お前の所のハザ掛けは、夕方には飛ばされちまった。俺んちのハザ掛けは夜中の2時まで飛ばされなかったんだ。」と誇らしげに言われた。大した違いはないと言えないところがいい。ハザ掛けの姿は農家の技術の見せ場だ。高さがそろっている。まっすぐである。間隔もとれている。そして足が並んで揃っている。そもそも切りだした竹が太さも長さもそろっている。真竹ではなく、孟宗竹の細い竿が良いと言われている。

小田原ではこのハザがけ乾燥法だけは、続けている農家が多い。農業が近代化され、大体のお米がコンバインで刈り取られ、その日の内に乾燥機で乾燥されるようになった。景色としての秋のハザ掛けが立ち並ぶ姿は、稲作地帯ではすでになくなった。自家用米だけがハザ掛けで干されている事が多い。それくらい、天日干しは味が違う。毎年出る話で本当には思えないが、逆さに成って干されてから、茎や葉に残っている成分が、お米の方に下がって行く。農家ではそう言う事に成っている。天日干しが美味しいのは、自分で魚を干してみれば、すぐわかることで、水分が抜けて行くと言うことは、ただ乾燥すると言うのでなく熟成作用のようなものがある、と考えた方がいい。日光で変化する成分もあるかもしれない。いずれ天日で1週間ほどゆっくりと乾かされると、お米がおいしく変化して行く。稲刈り時期の玄米の水分含有量はおおよそ、20%前後である。25%の部分もあれば、すでに15%の所もある。穂の根元の方が水分が多い。

見た目でいえば、穂の軸付け根の方にいくらか緑が残っている位が刈り頃である。多分普通の農家のかたより、刈り時が遅い。根に力がある内はできる限り田んぼで稲を育てる。水管理も稲刈りが出来るぎりぎりまで間断潅水する。土にもよるが1週間前ぐらいまで、入れておきたい。このやり方では稲が倒れる田んぼが多いいので、土にもよるが、固め方も重要になる。枯れるまでお米を田んぼに置いておくという感じ。早刈りの方がおいしいと言う人もいるが、味比べは何度もしたがそんなことはない。乾燥のしすぎで味が落ちる。水分量は17%位が味的には良い。そこまで置いて、刈りとってすぐハ―ベスターで脱穀したこともある。農協では15%以下のお米と言う事に成っている。これは倉庫での保存の為には、その位が良いということらしい。味から言えば過乾燥だと思う。味は明らかに落ちる。17%位でも保存できるのは、籾保存である。半年以上置くお米は籾保存している。こうしておけば劣化は明らかに違う。あの籾と言うものは実によく出来ている、一粒ごとの完璧なパッケージである。

今年のハザ掛けは5日間で16,5%まで落ちた。3か所を計って平均した数値である。途中で3時間ほど強い雨が降ったが、水分が戻るようなことはなかった。雨で水分が戻ることはないと言われているが、今回は確認できた。いつもは1週間が基本だが、これでは水分が抜けない年も多い。今年は昼の気温も高いし、空気も乾燥していた。良い風も吹いた。ハザ掛けには最高の天候だった。残念だったのが、イノシシにやられたことだ。ハザ掛けを高くしなかったことがいけなかった。飛びついて落とされた。50束ほどやられた。がっかりである。まだ、欠ノ上田んぼは籾すりはしていないので、出来は分からないが後半良くなかった。理由は土がまだ出来ていないという事だと思う。舟原は逆で、後半良く成っていった。舟原の方はほぼ無肥料であるが、土が良くなってきている感じがある。田んぼが良く成るには、最低5年はかかる。

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