農業の6次産業化
農業の6次産業化は小田原でも良く言われていることである。どういう事かと言えば、米作りをする。採れたお米を米粉にする。そして米粉パンにして直売する。セブンイレブンが田んぼをやると言うイメージだろうか。農家と言うか、農業法人と言うか、異業種から参入した企業等がそうした6次産業を行えば、日本の農業が活性化するという考え方である。どうなっているのか不安になる国会では、こうした参入企業に資金提供する「6次産業化ファンド法案」が成立した。法人への出資を政府もできることにしたものである。官民ファンド「農林漁業成長産業化支援機構」は10月をめどに設立予定で、機構の設置法案が今国会に提出されていた。国が300億円、民間が20億円程度を拠出する株式会社として設立し、将来的にはファンドの規模を2000億円程度に拡大する計画らしい。良さそうな話ではあるが、極めて危なかしい気がする。
政府や農水省が、あるいは推薦をする地方自治体が、優秀な6次産業の新規事業に対して正しい目を持っているならば、これも良い方法かと思う、今までの農政の流れを考えると、おかしな出資をするのではないかと不安の方が大きい。コンサルや、投資の専門家が入ってチェックをするらしいが、農業と言うものを経済だけで見て、果たして大丈夫であろうかという不安も出て来る。今後の出資の実態を監視して行く必要がある。最近までの農業政策の流れは、普通の農業に企業の進出を期待してきたが、一向に進まない。補助金の申請などは、巧みであるので補助金がもらえる間は、一応企業はかかわっている。しかし、補助金が切れてもやれるかと言えば、それで終りの所も多いいと聞いている。成功した事例は、農水省の事例一覧でも一部の特殊事例と読める。結局は、その分補助金のない普通の農家を、追いやることになるだけで、全体の生産量が伸びていないことを見れば結果が分かる。
企業が資本を出すには、当然有利な運用を考える。農業において、純粋に出資を考えるなら、労働力の安く、広大な農地があり、気候に恵まれた場所で行う農業に投資するだろう。あえて日本国内の不利条件を越えて、資本に出資を促そうというためには、外国資本であっても出資したくなるような条件が日本の農業に存在しなければならない。農業分野だけでは、どうしても魅力の創出が不可能な為に出てきたものが、農業6次産業化案だと思われる。農の会でも生産者は野菜や卵や豚肉の販売をしてきた。直売をすることで、顔の見える関係を作り上げ、流通コストを省いて農業経営が可能な道を探ってきた。あちこちの市に出るようなこともやってきた。お米を作り、味噌を作り、五平餅を作り販売した。ある意味最小単位の6次産業の道を探ってきたのだろう。だから、その可能性と限界を法律を作った人たちよりは理解していると思う。
国が出す資金が補助金でなく出資であるという所が、新しい発想であるが、リスクを国も持つという事は無理ではないだろうか。国や農協が貸し倒れるという事例は、数限りなくある。出資と言うのは、あらゆる業種と利益率、安定度、を比べても有利と言う事でなければ、本当のファンドではない。そう言えば詐欺商法に和牛ファンドと言うのがあった。農業にそうした有利性があるとは到底思えない。農業が有利な点があり継続されてきたのは、資産管理である。農地の転用の可能性。駐車場やアパート経営。農業の赤字は、税金対策に利用する。そして農地の値上がり期待。地域においての資産家の立場の維持。純粋に農業を専業として成立するためには、農地の個人所有を止める他ない。生産したいものが生産する。それが企業であろうと、自給農業であろうと同じことである。資産の継承の為に農地を死守するようなことが無くなれば、変わってくる。