原子力規制委員会の人選

   

福島原発事故の原因のひとつに、安全神話があった。事故は起きないという前提で考えていたために、事故時の対策が不十分であったというのは、推進派も原発廃止論者も異論はないだろう。原発を推進する経産省の中に、安全性を確保する組織があるのでは、充分な安全性の規制が出来ない。こういう反省に基づいて「一の行政組織が原子力利用の推進及び規制の両方の機能を担うことにより生ずる問題を解消するため、原子力利用における事故の発生を常に想定し、その防止に最善かつ最大の努力をしなければならないという認識に立って、確立された国際的な基準を踏まえて原子力利用における安全の確保を図るため」設置法にある。今その人選が進んでいる。野田政府としては、原発推進という動きである。そこで注目されていたのが、どの程度中立的からむしろ反原発の思想を持つ人を選べるかである。

今あげられている委員長候補の田中俊一氏は、2007年から内閣府原子力委員長代理である。事故後の2011年度に、原子力の広報や宣伝を担う日本原子力文化振興財団などから原稿執筆などの謝礼として約29万円を受け取っていたことがわかっている。つまり事故後も原子力推進機関の仕事をしている人である。委員候補では過去3年間で、島崎邦彦氏が日本原子力文化振興財団などから計29万1千円、中村佳代子氏が日本原子力文化振興財団と放射線影響協会から計20万1千円、更田(ふけた)豊志氏が日本原子力発電などから講義・テキスト作成の報酬として計66万2千円を得ていた。 野田内閣は過去3年間に電力会社など原子力関連企業・団体から年間50万円程度以上の報酬を得た人を候補から外す基準を設定。野田内閣が自己申告をふまえた調査結果としてまとめたもので、人選基準には抵触はしない、とされている。

田中俊一氏はそもそもどういう人なのだろう。「21世紀社会の様々な課題と不確実性に柔軟に対応し、人類社会と地球環境が希求する技術を生み出す創意に満ちた原子力科学の研究開発活動が行われる政策を企画し、推進します。」このように、原子力委員会のホームページに書かれている。こういう人が、原子力の規制を出来るだろうか。国民は安心して、原子力発電所の規制を任せられるだろうか。これでは原子力を推進するためのひとだろう。この国はしばらく駄目だ。原発を進めるということが、本気であればあるほど、安全を考えるので無ければならないのは、充分体験していることだ。国民が信頼し安心できる規制委員会を作ることが、普通の神経ではないだろうか。規制委員会の多数派を原子力村のメンバーで構成して作るのでは、今までと同じで何も変わらない。まだ安全神話から目が覚めていないとしか思えない。

やはり、国民から目覚め、選挙で原子力を推進する政党を敗北させることだ。本来であれば国民投票を行うべきだ。しかし、こんな政府の調子では逃げ回るだけだ。政府は選挙をするにしても、出来るだけ原発以外の争点の選挙にしようとするだろう。今の日本の置かれた状況は、大きな岐路である。「経済優先の敗北か、貧しくとも安心の暮らしか。」確かに経済は苦しくなる。それは、当然起こるべき世界情勢である。日本だけが逃れることも出来ない。戦後の日本人と日本経済が特殊であったと考えた方がいい。政府は全く状況の変化に対応できていない。企業は企業利益を優先し、日本の未来に対して責任を持とうとしない。そう言う政治思想のゆがみが、この原子力規制委員会の人事に現われている。不当なことをしたら政権は交代する。こういう現実を政治に表現しなければならない。あらゆる方法で抗議はしなければならない。

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